意味
「虫酸が走る(むしずがはしる)」とは、吐き気をもよおすほど、何かをひどく嫌うという意味です。
「虫酸」は「虫唾」とも書きます。
また、ひどくおなかがすいて、虫酸が口に上がってくる様子を指すこともあります。
語源・由来
この言葉の「虫酸」は、胸がむかむかしたときに、胃から口の中へ逆流してくる酸っぱい液のことです。
その液が口までこみ上げてきて吐き気がする状態を、我慢できないほどの嫌悪のたとえにしています。
使い方・例文
- 弱い者をばかにして笑う彼の声を聞くたびに、虫酸が走る。
- うわべだけのお世辞を並べる人を見ると、虫酸が走る思いがする。
- 朝から何も食べずに歩き回り、空腹で虫酸が走るほどだった。
『痴人の愛』で主人公が怒りを爆発させる場面
谷崎潤一郎の小説『痴人の愛』で、ナオミが熊谷という青年を「まアちゃん」と親しげに呼ぶのに、語り手の譲治が耐えられなくなる場面です。
ナオミと熊谷の仲を疑っている譲治には、その呼び名を聞くこと自体がたまらなく不快でした。
「まアちゃんなんて云うのはお止し! 熊谷と云う名があるんだから!」
我慢に我慢をしていた私は、そこでとうとう爆発しました。
私は彼女が「まアちゃん」と呼ぶのを聞くと、むしずが走るほどイヤだったのです。
類義語・関連語
どれも、強い嫌悪や不快を表す言葉です。
- 反吐が出る(へどがでる):
吐き気がするほど不愉快なさま。 - 胸糞が悪い(むなくそがわるい):
ひどく不愉快で腹立たしいさま。くだけた言い方。 - 虫が好かない(むしがすかない):
はっきりした理由もなく、なんとなく気に入らないこと。虫酸が走るほどの激しい嫌悪までは言わない。
「ず」は唾か酸か
「むしず」の「ず」が何を表すかには、二つの見方があります。
一つは、つばを表す古い言葉「つ(唾)」が濁って「ず」になったとみるもので、「虫唾」という書き方はこれに沿っています。
もう一つは「ず」を酸っぱいの「酸(す)」とみる説で、「虫酸」の書き方はこちらに合います。
昔の仮名遣いでも、「唾」とみれば「むしづ」、「酸」とみれば「むしず」と書くことになり、書き方が分かれています。

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