意味
「全身全霊(ぜんしんぜんれい)」とは、その人が持っているありったけの体力と気力のことです。
「全身全霊を捧げる」「全身全霊で取り組む」のように、ある物事に自分の心身のありったけを注ぎ込む場面で使われます。
この四字熟語は、以下の二つの要素から成り立っています。
- 全身(ぜんしん):体全体。持っている体力すべて。
- 全霊(ぜんれい):精神のすべて。魂のすべて。
単に「頑張る」というレベルを超え、文字通り「身も心もすべて」を投げ出して取り組む、並々ならぬ決意や熱量を表す言葉です。
語源・由来
「全身全霊」は、「体全体」を意味する「全身」と、「精神すべて」を意味する「全霊」という二つの言葉を組み合わせ、意味を強めた表現として定着しました。
ここでの「霊」は、幽霊やお化けのことではなく、「肉体に宿る精神」「魂」「優れた不思議な働き」を意味します。
つまり、目に見える「体」と、目に見えない「心」。その両方を総動員する様子を表しています。
使い方・例文
「全身全霊」は、並外れた努力や献身が必要な場面で使われます。
日常のちょっとした手伝いなどで使うと大げさになりますが、スポーツの試合、重要な仕事、創作活動、あるいは誰かへの深い愛情を示す際など、ここぞという勝負所や決意表明として好んで用いられます。
例文
- この大会が高校生活最後だ。悔いのないよう全身全霊を傾けて戦い抜こう。
- 彼はこの小説の執筆に全身全霊を注ぎ込み、書き終えると同時に倒れ込んでしまった。
- お客様の信頼に応えるため、全身全霊でサポートさせていただきます。
類義語・関連語
「全身全霊」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
いずれも「全力を尽くす」という点では共通していますが、ニュアンスに若干の違いがあります。
- 一生懸命(いっしょうけんめい):
本来は「一所懸命」。命がけで物事に取り組むこと。日常会話で最も広く使われる表現です。 - 誠心誠意(せいしんせいい):
私利私欲を捨て、相手や物事に対して真心を持って尽くすこと。「誠実さ」に重きが置かれます。 - 粉骨砕身(ふんこつさいしん):
骨を粉にし、身を砕くほどに努力すること。「全身全霊」よりも肉体的な苦労や激しさが強調されます。 - 一意専心(いちいせんしん):
他のことには目もくれず、一つのことだけに心を集中させること。 - 全力投球(ぜんりょくとうきゅう):
野球用語から転じ、あらゆる物事に持てる力のすべてを出してぶつかること。
対義語
「全身全霊」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 適当(てきとう):
本来は「ふさわしい」という意味ですが、現代では「いいかげん」「手抜き」という意味で対義語として扱われます。 - 無気力(むきりょく):
何かを行おうとする意欲や気力が欠けていること。 - 中途半端(ちゅうとはんぱ):
物事が完成していない状態、または態度が徹底していないこと。
英語表現
「全身全霊」を英語で表現する場合、心と体の両方を示すフレーズがよく使われます。
body and soul
直訳は「身も心も」で、日本語の構成と全く同じ発想の表現。
He devoted himself to the project body and soul.
(彼はそのプロジェクトに全身全霊を捧げた。)
with all one’s might
直訳は「全力を挙げて」で、”might” は「力」や「権力」を意味する。
力一杯取り組む様子を表す表現。
I will try with all my might.
(全身全霊で取り組みます。)
有島武郎と原民喜の小説の「全身全霊」
今は「捧げる」「で取り組む」と組むことの多い「全身全霊」ですが、小説では別の言葉とも結びついています。
有島武郎の『或る女』(1919年)では、主人公の葉子が母の反対を押し切って恋人の木部と結婚します。
作者はそのときの葉子を、「木部の全身全霊を爪の先想いの果てまで自分のものにしなければ」死んでも死ねない様子だった、と書いています。
(木部の体も心も、爪の先から思いの果てまで残らず自分のものにしなければ)
原民喜の『夏の花』(1947年)は、原爆が落ちた夜の広島で、河原から聞こえる若者らしい断末魔(=死ぬ間際の苦しみ)の声を「全身全霊を引裂くやうに迸り」と書きました。
(体も心も引き裂くようにほとばしり出て)
どちらの「全身全霊」も、注ぎ込む力の量ではなく、その人の体と心のすべてを一つのものとして指しています。















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