意味
「実事求是(じつじきゅうぜ)」とは、事実に基づいて真実や真理を追求するという意味です。
空想や主観に頼るのではなく、あくまでも客観的な事実(証拠・データ・史料)を出発点として、そこから正しい結論を導き出そうとする実証的な態度を指します。
- 実事(じつじ):実際の事柄。事実。
- 求是(きゅうぜ):真理や正しさを極めること。
元々は中国の古典研究における厳格な態度を指す言葉でしたが、現在では科学的な思考法や、ビジネスにおけるファクトベース(事実に基づく)の判断など、より広い分野で使われています。
語源・由来
「実事求是」の語源は、中国の歴史書『漢書』河間献王伝(かかんけんおうでん)にあります。
前漢の景帝の子で、河間王に封じられた劉徳という人物がいました。
死後に「献」とおくり名され、河間献王と呼ばれます。
劉徳は民間から良い書物を手に入れると、きれいに書き写した写本を持ち主に渡して原本を手元に残し、さらに金や絹を与えました。
そのため各地から古い書物を献上する人が集まり、朝廷に並ぶほどの蔵書を持つようになりました。
この劉徳の姿勢を、『漢書』は次のように記しています。
修學好古,實事求是
(学問を修めて古いものを好み、実際の事柄に即して正しさを求めた)
この「実事求是」の四字が、事実を重んじる学問や研究の姿勢を表す言葉として使われるようになりました。
使い方・例文
「実事求是」は、学問、研究、ビジネス、あるいは人生の指針として、客観性を重んじる場面で使われます。
「憶測で物を言うな」「現実を直視せよ」という戒めとして用いられることもあります。
例文
- 失敗の原因は希望的観測だった。次は実事求是でデータを分析しよう。
- 噂に流されず自分の目で確かめる。それが私の考える実事求是だ。
- 彼は実事求是を貫き、実験結果を都合よく解釈したりはしない。
類義語・関連語
「実事求是」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 格物致知(かくぶつちち):
物事の道理や本質を深く追求し、知識を極めること。 - 論より証拠(ろんよりしょうこ):
議論するよりも、証拠(事実)を示したほうが物事ははっきりするということ。実証性を重んじる点で共通します。 - 虚心坦懐(きょしんたんかい):
先入観やわだかまりを持たず、ありのまま素直に物事を受け入れる心構え。事実を正しく見るための前提となる態度です。
対義語
「実事求是」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 机上の空論(きじょうのくうろん):
頭の中だけで考えた、実際には役に立たない理論や計画。事実に基づかない思考の典型です。 - 荒唐無稽(こうとうむけい):
言動に根拠がなく、でたらめであること。「事実に基づかない」という点で対義的です。 - 独断(どくだん):
他人の意見を聞いたり実情を顧みたりせず、自分ひとりの考えで決めること。
英語表現
「実事求是」を英語で表現する場合、以下のような言い回しが適しています。
Seeking truth from facts
直訳は「事実から真実を求める」で、「実事求是」の直訳として使われる定型表現。
We must always adhere to the principle of seeking truth from facts.
(我々は常に、事実に基づいて真実を求めるという原則を固守しなければならない。)
実事求是は清代の考証学の標語になった
『漢書』のこの一節には、唐代の学者である顔師古が注釈を付けています。
顔師古はこの句に、次のように注しています。
務得事實,每求真是也
(努めて事実をつかみ、常に本当の正しさを求めるのである)
この解釈は後の時代に引き継がれ、清代には古典の文献を実証的に読み解く考証学という学問が盛んになり、実事求是はその基本姿勢を表す言葉として重んじられました。










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