熟慮断行

ことわざ
熟慮断行(じゅくりょだんこう)

9文字の言葉し・じ」から始まる言葉
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何かを決めるとき、「もっとよく考えてからにしよう」と慎重になりすぎて動けなくなったり、逆によく考えずに飛び出して後悔したりした経験はありませんか。

熟慮断行(じゅくりょだんこう)」は、その両方のバランスを取り、物事を成功に導くための大切な姿勢を示す四字熟語です。
決断と実行の指針となるこの言葉は、深い意味と実践的な教訓を含んでいます。

「熟慮断行」の意味・教訓

熟慮断行とは、「十分に考え抜いた上で、ためらわずに思い切って実行すること」を意味します。

大切なのは、「熟慮(じっくり考えること)」と「断行(きっぱりと行うこと)」がセットになっている点です。

ただ慎重に考えるだけでは、せっかくの好機を逃してしまいます。かといって、考えが浅いまま行動に移すのは無謀であり、失敗の原因になりかねません。

この言葉は、深い思考に基づいた確信があるからこそ、障害や反対があっても臆せず実行に移すべきだという、力強い決意のあり方を示しています。

「熟慮断行」の語源 – 構成要素

「熟慮断行」は、特定の古典を出典とする故事成語ではなく、「熟慮」と「断行」という二つの言葉(漢語)を組み合わせて作られた四字熟語です。

  • 断行(だんこう):決断し、思い切って実行すること。
  • 熟慮(じゅくりょ):念には念を入れ、十分に考え抜くこと。

使用される場面と例文

「熟慮断行」は、個人の人生における重大な決断から、ビジネスや政治の世界での大きな方針決定まで、覚悟を持った行動が求められる場面で広く使われます。

単なる「実行」ではなく、困難を乗り越えてでもやり遂げるという強いニュアンスを含みます。

例文

  • 新事業の開始には多くの反対意見があったが、社長は「熟慮断行」の末、プロジェクトの開始を宣言した。
  • チームリーダーとして、メンバーの意見を幅広く聞いた上で、最終方針は「熟慮断行」する覚悟が求められる。
  • 転職という人生の大きな岐路に立ち、彼は数ヶ月にわたる「熟慮断行」の末、新しい道へ進むことを決めた。

類義語・言い換え表現

「熟慮断行」に近い意味を持つ言葉はいくつかありますが、「思考の深さ」と「実行の強さ」のどちらに重点を置くかでニュアンスが異なります。

  • 深謀遠慮(しんぼうえんりょ):
    将来のことまで深く考え、遠くまで見通した計画を立てること。
    ※「熟慮」の部分と共通しますが、「断行(実行)」のニュアンスは「熟慮断行」ほど強くありません。
  • 当機立断(とうきりつだん):
    その機会(チャンス)に臨んで、すばやく決断すること。
    ※「断行(決断)」の部分と共通しますが、「熟慮(じっくり考える)」よりも「時機を逃さない決断の速さ」に重点が置かれます。

対義語

「熟慮断行」の正反対、つまり「よく考えずに行動する」ことや「考えてばかりで行動しない」ことを示す言葉が対義語にあたります。

  • 軽挙妄動(けいきょもうどう):
    物事を深く考えず、軽はずみで無責任な行動をとること。「熟慮」が決定的に欠けている状態です。
  • 優柔不断(ゆうじゅうふだん):
    ぐずぐずして、物事の決断がなかなかできないこと。「熟慮」はしていても、「断行」ができない状態です。
  • 浅慮軽率(せんりょけいそつ):
    考えが浅く、軽はずみであること。「熟慮」の対極にある状態です。

英語での類似表現

「熟慮断行」の「よく考え、すばやく実行する」というニュアンスは、英語では以下のように表現されます。

Deliberate in counsel, prompt in action.

  • 意味:「相談(計画)は慎重に、行動は迅速に」
  • 解説:「熟慮」と「断行」の精神を的確に表す格言として、リーダーシップやビジネスの文脈でよく用いられます。

「熟慮断行」に関する豆知識 – バランスの重要性

「熟慮断行」という言葉が現代で特に重視されるのは、経営やリーダーシップの分野においてです。

  • 熟慮がなければ「無謀」
    リーダーが十分な分析や検討(熟慮)をせずに方針を決めれば(断行)、それは「無謀」な賭けとなり、組織を危険にさらします。
  • 断行がなければ「机上の空論」
    逆に、どれほど素晴らしい計画を練り上げても(熟慮)、実行に移さなければ(断行)、それは「机上の空論」に過ぎず、何も生み出しません。特に変化の速い現代では、考えているうちに状況が変わり、好機を逃すこともあります(これを「熟慮断行」の反対として「熟慮断送(じゅくりょだんそう)」と呼ぶ人もいます。「断送」は機会を断ち送ってしまうという意味の造語です)。

「熟慮断行」は、この両極端を避け、思考と行動を結びつけるための重要な原則とされています。

まとめ – 熟慮断行から学ぶ知恵

「熟慮断行」は、十分に考え抜き、確信を持ったら迷わず実行に移すことの大切さを教えてくれます。

情報が溢れ、選択肢が多すぎる現代では、つい「熟慮」ばかりに時間がかかり、行動に移せないことも少なくありません。しかし、行動しなければ何も変わりません。

大切なのは、自分の中で「ここまで考え抜いた」という基準を設け、一度決めたら、結果を恐れず前に進む「断行」の勇気を持つことです。十分に考えた末の決断であれば、たとえ困難に直面しても、それを乗り越える力になるはずですね。

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