ランチのメニューを決められず、後ろに並ぶ人の視線に気兼ねしながら立ち尽くしてしまう。
あるいは、大きなチャンスを目の前にして、失敗への不安からどうしても一歩が踏み出せない。
このような、疑い迷って決断を下せずにぐずぐずしてしまう状態を、
「遅疑逡巡」(ちぎしゅんじゅん)と言います。
意味・教訓
「遅疑逡巡」とは、疑い迷って、なかなか物事を決断できずにためらうことを指します。
似た意味を持つ「遅疑」と「逡巡」を重ねることで、決心がつかずに立ち止まっている様子を強調した言葉です。
- 遅疑(ちぎ):疑いを抱き、決断を遅らせること。
- 逡巡(しゅんじゅん):しりごみすること。ためらうこと。
単なる「迷い」というよりも、不安や疑念に支配されて、行動に移すべき時なのに足が止まっているという、少し重苦しい停滞感を伴う際に用いられます。
語源・由来
「遅疑逡巡」を構成するそれぞれの語は、古代中国の歴史書である『史記』などに見られます。
「遅疑」は、戦国時代の策士たちの言動を記した箇所などで、策を巡らせながらも最後の一歩を決めかねる様子として描かれています。
「逡巡」は、もともとは礼儀として一歩下がる、あるいは軍隊が恐れて進軍を控えるといった意味で使われていました。
これらが組み合わさり、現代では「決断を下すべき場面で、疑いや恐れからぐずぐずと時間を浪費してしまう」というネガティブなニュアンスを含む四字熟語として定着しました。
明確な物語(エピソード)から生まれた故事成語というよりは、古典的な漢語が組み合わさって生まれた言葉と言えます。
使い方・例文
「遅疑逡巡」は、慎重になりすぎて好機を逃しそうな場面や、自分の優柔不断さを省みる場面で使われます。
個人の心の葛藤だけでなく、組織やリーダーが決断を先延ばしにしている状況を指摘する際にも適しています。
例文に見るように、日常の些細な迷いから人生を左右する大きな決断まで、幅広く活用できる表現です。
例文
- 告白しようと決めていたが、いざ本人を前にすると遅疑逡巡して言葉が出ない。
- 投資の好機だと分かっていても、損失を恐れてつい「遅疑逡巡」してしまう。
- リーダーがいつまでも遅疑逡巡していては、チーム全体の士気が下がってしまう。
- 彼は「遅疑逡巡」することなく、迷わず困っている人に手を差し伸べた。
類義語・関連語
「遅疑逡巡」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 優柔不断(ゆうじゅうふだん):
物事の決断が遅いこと。主にその人の性格や性質を指して使われます。 - 躊躇(ちゅうちょ):
決心がつかず、ためらうこと。一時的な動作や心理状態に重点が置かれます。 - 二の足を踏む(にのあしをふむ):
先へ進むのをためらうこと。一度やろうとしたものの、不安で思いとどまる様子を表します。
対義語
「遅疑逡巡」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 即断即決(そくだんそっけつ):
その場ですぐに判断し、決断を下すこと。 - 勇往邁進(ゆうおうまいしん):
恐れることなく、目標に向かってひたすら突き進むこと。 - 一刀両断(いっとうりょうだん):
物事を迷いなく、速やかに処理すること。
英語表現
「遅疑逡巡」を英語で表現する場合、以下の定型表現が状況に合致しています。
hesitate
- 意味:「ためらう」「躊躇する」
- 解説:決断や行動を前に、不安や自信のなさから一時的に止まる様子を表す最も一般的な語です。
- 例文:
Please do not hesitate to contact us.
(ためらわずにご連絡ください。)
vacillate
- 意味:「揺れ動く」「迷う」
- 解説:二つの選択肢や意見の間で心が揺れ、なかなか決まらないという「遅疑逡巡」に近い、少し堅い表現です。
- 例文:
The minister continued to vacillate over the issue.
(大臣はその問題について遅疑逡巡し続けた。)
まとめ
人生には、一歩踏み出すのが怖くなる瞬間が何度もあります。
慎重であることは欠点ではありませんが、「遅疑逡巡」しすぎると、目の前の大切な好機を逃してしまうかもしれません。
「迷う」ということは、それだけ真剣に物事に向き合っている証拠でもあります。
この言葉を思い出した時は、自分が今何に怯えているのかを客観的に見つめ直す、心の整理のきっかけになることでしょう。
言葉の響きを知ることで、自分自身の心のブレーキを少しだけ緩める新しい視点が手に入るかもしれません。




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