意味
「被害妄想(ひがいもうそう)」とは、だれかが自分に害を加えようとしている、または害を加えたと、事実がないのに固く信じてしまう妄想のことです。
精神医学の用語で、統合失調症をはじめ、さまざまな精神疾患にみられる症状の一つです。
悪口やうわさを言いふらされている、見張られている、あとをつけられている、といった内容で現れることがあります。
語源・由来
この言葉は、「被害」と「妄想」を組み合わせた語です。
精神医学でいう「妄想」は、根拠がないのに強く確信していて、事実を示して説得されても考えを改められない思いをいいます。
妄想は内容によって呼び分けられ、自分を実際よりはるかに偉いと思いこむ「誇大妄想」などと並んで、害を受けるという内容のものを「被害妄想」と呼びます。
ほぼ同じ意味で「迫害妄想」という言い方もあります。
使い方・例文
- 医師は、見張られていると訴える症状を被害妄想の一つとして説明した。
- その小説は、隣人に命をねらわれていると信じこむ男の被害妄想を描いている。
- 「私は被害妄想が強いのかもしれない」と、彼は友人に悩みを打ち明けた。
使うときの注意
日常の会話では、相手が物事を悪く受け取りすぎていると言いたいときに、「それは被害妄想だ」と使われることがあります。
しかし「被害妄想」は、統合失調症などの精神疾患の症状を指す言葉です。
相手の訴えにこの言葉を向けると、中身を確かめないまま、その訴えを病気の症状として片づけることになります。
また、病気の症状を表す語を、人をおとしめるために使うことになり、実際にその病気とともに生きている人を傷つけます。
医学の説明をする場面や、小説などの作品に出てくる用例を読む場面では、そのまま使って問題ありません。
相手の受け取り方に意見を言いたいときは、「考えすぎではないかな」「悪いほうに受け取っているかもしれない」「思い込みではないか確かめてみよう」のように言い換えると、病気の症状を表す言葉を持ち出さずに伝えられます。
類義語・関連語
他人から害を受けると思いこむ心の動きを表す語です。
- 迫害妄想(はくがいもうそう):
他人から迫害されていると信じこむ妄想。「被害妄想」とほぼ同じ意味の精神医学の用語。 - 疑心暗鬼(ぎしんあんき):
疑う心があると、何でもないことまで恐ろしく思えたり疑わしく見えたりすること。
「被害妄想」と「疑心暗鬼」の違い
どちらも、何でもないことを自分への脅かしと受け取る点が共通しています。
「被害妄想」は精神疾患の症状を指す医学の用語で、「疑心暗鬼」は疑いの気持ちから生まれる思い違いを言い、だれにでも起こる心の動きとして使います。
| 語句 | どんな言葉か | 起こるもと |
|---|---|---|
| 被害妄想 (ひがいもうそう) | 精神疾患の症状を指す医学の用語 | 精神疾患 |
| 疑心暗鬼 (ぎしんあんき) | だれにでも起こる思い違い | 疑いの気持ち |
英語表現
persecution complex
迫害されていると思いこむ心の状態。
He seems to have a persecution complex about his coworkers.
(彼は同僚に対して被害妄想を抱いているようだ。)
delusion of persecution
迫害を受けているという、精神医学でいう妄想。
The doctor explained that a delusion of persecution is a common symptom.
(医師は、迫害妄想はよくみられる症状だと説明した。)
「被害妄想」の「妄想」は古くは「もうぞう」と読んだ
「妄想」は、もとは仏教の言葉で、とらわれの心によって、真実でないものを真実だと誤って考えることを言いました。
その後、ありえないことをみだりに想像する意味でも使われるようになり、さらに精神医学の用語にもなりました。
読みは古くは「もうぞう」でした。
芥川龍之介の小説『河童』(1927年)では、「被害妄想」に「ひがいもうぞう」と読みが振られています。

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