渇して井を穿つ

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ことわざ 慣用句
渇して井を穿つ
(かっしていをうがつ)

9文字の言葉か・が」から始まる言葉

夏休みが残り数日になってから山積みの宿題に絶望したり、冬の寒さが本格的になってからようやく厚手のコートを買いに走ったり。
物事が起きてしまい、必要に迫られてから慌てて準備を始める。
そのような後手後手の状況を、
「渇して井を穿つ」(かっしていをうがつ)と言います。

意味・教訓

「渇して井を穿つ」とは、事態が切迫してから慌てて準備を始めること、または手遅れで間に合わないことを指します。

  • 渇して(かして):喉が渇いてから。
  • 井を穿つ(いをうがつ):井戸を掘る。

喉が渇ききってから井戸を掘り始めても、水が出るまでには時間がかかり、結局は間に合いません。
平時の備えを怠り、窮地に陥ってから対策を講じる愚かさを戒める教訓として用いられます。

語源・由来

「渇して井を穿つ」の由来は、中国の戦国時代の思想書『荀子』(じゅんし)にある一節とされています。

ある時、他国の侵略を受けてから慌てて軍備を整えようとした王に対し、臣下が厳しい忠告を授けました。
「喉が渇いてから井戸を掘り、戦が始まってから武器を鋳造するようでは、いかに優れた王でも手遅れである」と説いたのです。

この「喉が渇いてから井戸を掘る」という比喩が、準備の遅れを象徴する言葉として日本にも伝わりました。
なお、同じ出典には「戦を見て矢を矧ぐ(たたかいをみてやをはぐ)」という言葉も並んで記されており、セットで語られることも多くあります。

使い方・例文

「渇して井を穿つ」は、単なる忙しさではなく、計画性の欠如や見通しの甘さを指摘する場面で使われます。
失敗した本人による反省の弁や、周囲からの厳しい指摘として用いられるのが一般的です。

例文

  1. 定期テストの前夜に徹夜で詰め込むのは、まさに「渇して井を穿つ」であり、本当の実力にはならない。
  2. 災害が起きてから避難用品を買い出しに行くようでは、「渇して井を穿つ」で手遅れになる恐れがある。
  3. プロジェクトの期限直前になって増員を要請するのは、「渇して井を穿つ」と言わざるを得ない。
  4. 健康診断の結果が悪くなってから慌てて運動を始めるのは、「渇して井を穿つ」だが、やらないよりはましだろう。

誤用・注意点

「渇して井を穿つ」は、準備が間に合っていないことを批判的に捉える表現です。
そのため、不測の事態に対して迅速に対応している人に対し、「素早い対応ですね」というポジティブな意味で使うのは誤りです。

また、「井を穿つ」の「穿つ」を「うがった見方(物事の本質を捉える)」と同じ意味で混同しないよう注意が必要です。
この言葉においては、単に「穴を掘る」という物理的な動作を意味しています。

類義語・関連語

「渇して井を穿つ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 泥棒を捕らえて縄をなう(どろぼうをとらえてなわをなう):
    泥棒を捕まえてから、縛るための縄を編み始めること。準備の遅さを揶揄する言葉。
  • 戦を見て矢を矧ぐ(たたかいをみてやをはぐ):
    戦いが始まってから慌てて矢を作ること。出典を同じくする言葉。
  • 祭りの後に踊り出す(まつりのあとにおどりだす):
    時期を逃してから行動を起こしても無意味であることのたとえ。
  • 後の祭り(あとのまつり):
    手遅れであること。後悔しても始まらない状況。

対義語

「渇して井を穿つ」とは対照的に、事前の準備の重要性を説く言葉です。

  • 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):
    日頃から準備を整えておけば、万一のことがあっても心配ないということ。
  • 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):
    失敗する前に、あらかじめ万全の対策を立てておくことのたとえ。
  • 治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず):
    平和な時でも、常に非常事態への備えを怠らないこと。

英語表現

「渇して井を穿つ」を英語で表現する場合、以下の定型句が適しています。

It is too late to dig a well when you are thirsty.

  • 意味:「喉が渇いてから井戸を掘るのは遅すぎる」
  • 解説:日本語と全く同じ発想の英語のことわざです。
  • 例文:
    Start studying now. It is too late to dig a well when you are thirsty.
    (今すぐ勉強を始めなさい。喉が渇いてから井戸を掘っても遅いのだから。)

To lock the stable door after the horse has bolted.

  • 意味:「馬が逃げ出してから厩舎(きゅうしゃ)に鍵をかける」
  • 解説:被害が出てから対策をしても無駄であることを指す、英語圏で非常に有名な比喩です。
  • 例文:
    Installing a security camera after the theft is like locking the stable door after the horse has bolted.
    (盗難に遭った後に防犯カメラを付けるのは、馬が逃げた後に鍵をかけるようなものだ。)

言葉の背景:泥縄との使い分け

「渇して井を穿つ」は、同じ意味の「泥棒を捕らえて縄をなう(泥縄)」と比較すると、より硬い表現です。

「泥縄」が日常的な失敗や、どこか抜けた印象のある滑稽な状況に使われるのに対し、「渇して井を穿つ」はより深刻な危機管理や、人生の教訓としての重みを持っています。
ビジネスの重要な局面や、教育的な指導の場では、この言葉を用いることで、より厳粛に「事前の備え」の重要性を伝えることができるでしょう。

まとめ

必要な時に必要なものがないという状況は、誰にとっても避けたいものです。
「渇して井を穿つ」という言葉は、私たちの慢心や怠惰を戒め、平穏な時にこそ未来を見据える大切さを思い出させてくれます。

後悔は先に立たずと言いますが、この言葉を意識することで、日常の小さな準備が大きな安心に繋がっていくことでしょう。

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