意味
「乳臭児(にゅうしゅうじ)」とは、年が若く、まだ一人前とはいえない者をばかにして呼ぶ言葉のことです。
「乳臭」は乳のにおい、「児」は子どもを表します。
もとは口もとに乳のにおいが残る幼い子どもを指し、そこから未熟な若者をあざける呼び名として使われるようになりました。
語源・由来
この言葉は、故事成語「口なお乳臭し(くちなおちちくさし)」の別の形にあたります。
中国の歴史書『漢書』の高帝紀(= 漢の初代皇帝・劉邦の記録)に、劉邦が魏の国と戦う前に、相手の大将の名前を尋ねる場面があります。
大将が柏直という人物だと聞いた劉邦が、次のように答えた一節が由来です。
是口尚乳臭,不能當韓信。
(この男は口がまだ乳くさい。韓信にはかなわない。)
韓信は劉邦の側の大将です。
日本ではこの一節が「口なお乳臭し」という故事成語になりました。
使い方・例文
- 二十歳そこそこで社長になった彼は、取引先から乳臭児と陰口をたたかれた。
- 「あんな乳臭児に何が分かる」と、老人は若い記者の質問を鼻で笑った。
- 監督は入団したばかりの選手を乳臭児扱いせず、開幕から試合に使い続けた。
使うときの注意
この言葉は、年が若いこと、経験が浅いことを理由に、相手を一人前ではないと見下す呼び名です。
年齢は本人が変えられないものなので、面と向かって使うと、相手の力量ではなく若さそのものをけなすことになり、深く傷つけます。
使うのは、小説や歴史の文章で人物が相手を見下している場面を読み解くときなどにとどめるのが無難です。
若い人の未熟さを伝えたいときは、「まだ経験が浅い」「これから力をつける段階だ」のように、経験の量に絞った言い方にすると角が立ちにくくなります。
類義語・関連語
いずれも、若くて経験の足りない人を未熟だとみなす言葉です。
- 青二才(あおにさい):
年が若く経験の乏しい男を見下していう呼び名。 - 黄口児(こうこうじ):
ひな鳥の黄色いくちばしにたとえて、未熟な若者をいう語。 - くちばしが黄色い(くちばしがきいろい):
年が若く、経験が足りないことをいう慣用句。
英語表現
wet behind the ears
経験が浅く、判断もまだ未熟なさま。
He is still wet behind the ears, so don’t expect too much from him.
(彼はまだ乳くさい若造だから、あまり期待しすぎるな。)
「乳臭児」の故事で劉邦が比べた三組の将
劉邦は柏直のほかに、騎兵を率いる将と歩兵を率いる将の名前も尋ねています。
騎兵の将は馮敬で、劉邦は「秦の将軍・馮無擇の子で、優れてはいるが灌嬰にはかなわない」と答えました。
歩兵の将の項它については、曹參にはかなわない、とだけ述べています。
灌嬰と曹參はどちらも劉邦の側の将です。
三人とも自軍の将と比べたうえで、劉邦は「吾無患矣(= 心配はない)」と話を結びました。
このとき「口がまだ乳くさい」と言われたのは柏直だけで、馮敬は優れた人物と認められています。


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