三字熟語には、人の性格や才能、日ごろのふるまいを短く言い表す言葉が数多くあります。
立派な人物をほめる言葉から、気質や暮らしぶりのくせを言う言葉、愚かさやずる賢さをけなす悪口まで、79語を6つの節に分けてまとめました。
立派さ・粋・勇ましさを表す三字熟語
堂々とした立派さや、粋な立ち居振る舞い、勇ましさ、姿や人柄の美しさをほめて言う三字熟語です。
- 偉丈夫(いじょうふ):
体が大きくてたくましく、人格もすぐれた男性。
古代中国で一人前の男子を指した「丈夫」に、すぐれている意の「偉」を冠した語。 - 美丈夫(びじょうふ):
見た目が美しく、体格にも恵まれた立派な男子。
古代中国で一人前の立派な男を指した「丈夫」に「美」を加えた語。 - 女丈夫(じょじょうふ):
気性がしっかりしていて、男性に負けない頼もしい女性。
一人前の立派な男を指す「丈夫」に「女」を付けた語。 - 大丈夫(だいじょうふ):
「だいじょうぶ」とは別の読みで、りっぱな男子を指す言葉。
「だいじょうぶ」と読めば、危なげがなく安心していられるさまの意。 - 益荒男(ますらお):
勇気があり、強くたくましい立派な男性。
上代には、朝廷に仕える官吏を多くこう呼んだ。 - 手弱女(たおやめ):
姿や性質がしなやかで優しい、上品な女性。
「たわや」は「撓」に「や」が付いた形で、「手弱」は当て字。 - 男伊達(おとこだて):
弱い者を助け強い者をくじく、侠気に満ちた振る舞いや気風。
旗本奴や町奴に代表される江戸初期のかぶき者の気風から、のちに侠客を指す語にもなった。 - 伊達衆(だてしゅう):
だてを好む人、粋好みの人たち。また、強い者をおさえ弱い者を助ける侠客の仲間も指す。 - 伊達女(だておんな):
洗練された格好で人目を引く、いきな女性。
伊達には、はでな身なりのほか、好みがしゃれて考え方がさばけている意もある。 - 伊達男(だておとこ):
人目を引く、しゃれた身なりの男性。また、侠気のある男。
伊達は、目立つようにする意の「立つ」の連用形からともいう。 - 士君子(しくんし):
学問と人格をともに備えた、徳の高い人物。
君子と同じ意味で、『礼記』にも用例がある。 - 硬骨漢(こうこつかん):
意志が強く、権力にも屈せず、自分の主張を簡単には曲げない男性。
硬骨は硬い骨の意から出た語で、「鯁骨」とも書く。 - 小町娘(こまちむすめ):
小野小町になぞらえるほど、美人と評判の高い娘。
単に小町ともいい、多く「日本橋小町」のように土地の名を上につけて呼ぶ。 - 姉御肌(あねごはだ):
思い切りがよくさっぱりしていて、後輩や周りの面倒をよく見る、頼りがいのある女性の気質。 - 好々爺(こうこうや):
性格が円満で善意にあふれた、気のいいおじいさん。
「好」を重ねて善良さを強め、老人を指す「爺」を付けた語。 - 二枚目(にまいめ):
顔立ちの整った美男子。
歌舞伎で、看板の二番目に名が書かれた美男の役柄から生まれた呼び名。
才知・見識・技量を表す三字熟語
知恵や才能、見識の深さ、腕前の確かさを表す三字熟語です。
なかには、学問のひけらかしや見識の狭さをからかったり、中途半端な多芸をけなしたりする言葉も含まれます。
人に向かって使うときは気をつけてください。
- 麒麟児(きりんじ):
知恵や才能に優れ、将来が非常に期待される若者。
すぐれた王が現れるときに姿を見せるとされる伝説の獣「麒麟」にたとえた語。 - 風雲児(ふううんじ):
社会が大きく変わる時期にチャンスをつかみ、一躍有名になる人物。
「風雲」は、竜が風と雲に乗って天に昇るように、英雄が世に出る好機をいう。 - 立役者(たてやくしゃ):
中心的な役割を果たして、物事を成功に導いた人。
歌舞伎で主役となる善人の男の役「立役」から。 - 千里眼(せんりがん):
遠方の出来事や将来の動き、物事の本質を鋭く見抜く力。また、その力を持つ人。
『魏書』で、部下の行いを見張った楊逸を人々が「千里眼がある」と評した故事が由来とされる。 - 玄人跣(くろうとはだし):
素人でありながら、専門家も驚くほど技芸や学問にすぐれていること。
玄人もはだしで逃げ出すほど、という意から。 - 数寄者(すきしゃ):
風流を好む人。特に、茶の湯をたしなむ人。
本来は「好き者」の意。明治以降は、名物の茶道具を集める政財界の茶人をとくにこう呼ぶ。 - 好事家(こうずか):
風流な事柄や、珍しい物事を好んで熱中する人。
「好事」は「こうず」と読み、「こうじ」と読めばよいことの意にもなる。 - 出来物(できぶつ):
人柄や能力がよくできた、すぐれた人物。
「できもの」と読めば、ふつうは吹き出物のこと。 - 名人肌(めいじんはだ):
名人と呼ばれる人に特有の気質。頑固だったり、損得に無頓着だったりする傾向。
「名人気質」とも言う。 - 天才肌(てんさいはだ):
天才かと思うほど人並み外れた能力を持っていること。また、その人。天才であるかのように振る舞う人、という意味もある。 - 藤四郎(とうしろ):
「しろうと」の音を逆さにして人の名前のように言った、素人を指す隠語。
同じ字面の「藤四郎」は、瀬戸焼の祖とされる鎌倉時代の陶工の略称でもある。 - 螻蛄才(けらざい):
螻蛄には飛ぶ・登る・潜る・掘る・走るの五つの力があるものの、どれも中途半端。そこから、多芸多才でありながら、一つも極めていないこと。 - 螻蛄芸(けらげい):
螻蛄才と同じで、多芸多才でありながらどれも極めていない様子。
螻蛄は飛ぶ・登る・潜る・掘る・走るの五つをこなしながら、どれも物にならないとされることから。 - 村夫子(そんぷうし):
田舎の学者や先生。転じて、見識の狭い学者をあざける呼び方。
陸游の詩「春日雑興」に用例がある。 - 衒学者(げんがくしゃ):
学問や知識をひけらかし、鼻にかける人。
衒学は英語 pedantry の訳語で、ペダントリーともいう。 - 詭弁家(きべんか):
道理に合わないことを、もっともらしい理屈で正しいように言いくるめる者。
「ソフィスト」と言い換えることもある。 - 酢豆腐(すどうふ):
知ったかぶりで生意気な人。
腐った豆腐を知ったかぶりで「酢豆腐」と言ってしまう落語の演目が由来。
気質・ふるまいのくせを表す三字熟語
性格や日ごろのふるまいのくせを言い表す三字熟語です。
お世辞のうまさやうぬぼれ、ひねくれた態度などをけなす言葉も含まれるので、人に向けて使うときは注意してください。
- 天邪鬼(あまのじゃく):
何かにつけて人に逆らう、素直でないひねくれ者。
もとは昔話に出てくる、人の口まねをして意図に逆らう想像上の悪者。 - 石地蔵(いしじぞう):
無口な人や、色恋に反応を示さない人のたとえ。
もとは石に刻んだ地蔵菩薩の像を指す語。 - 泣上戸(なきじょうご):
酒に酔うと泣きだすくせのある人。また、そのくせ。
上戸は本来、酒が好きでよく飲める人のこと。「笑い上戸」のように、酔ったときのくせを表す語の下にも付く。 - 若年寄(わかどしより):
年が若いのに、言動が年寄りじみている人。
江戸幕府で老中に次ぐ職名でもあった。 - 風来坊(ふうらいぼう):
どこからともなくふらりとやって来て、一つ所に落ち着かない者。身元の知れない人にもいう。 - 剽軽者(ひょうきんもの):
気軽で、よくおどける人。
剽軽の「きん」は「軽」の唐音で、「ひょうけい」と読めば身軽なさまや軽はずみなさまの意。 - 上手者(じょうずもの):
お世辞が巧みで、如才なく立ち回る人物。 - 雷親父(かみなりおやじ):
何かにつけて大声でどなりつける、口やかましいおやじ。 - 不束者(ふつつかもの):
気がきかず、行き届かないところのある人。また、無骨な人。 - 我利勉(がりべん):
周りと協調せず、成績のことだけを気にして勉強ばかりする人を、軽んじて言う言葉。
「がり勉」とも書き、「我利勉」は当て字。 - 助兵衛(すけべえ):
色事を好む性質。また、そのような人。
くだけた俗語で、改まった場には向かない。「助平」とも書き、「好き」が変化した「すけ」に「兵衛」を付けた形とみられる。 - 鍋奉行(なべぶぎょう):
鍋料理の具の入れ方や食べる順序について、あれこれ世話を焼きたがる人。 - 一匹狼(いっぴきおおかみ):
組織や集団の力に頼らず、自分の力だけで行動する人物。
群れで暮らすオオカミが、群れを離れて一頭で生きる姿になぞらえた語。 - 内弁慶(うちべんけい):
家の中ではいばっているのに、外へ出ると意気地がなくなること。また、そういう人。
後に「外地蔵」と続けて内弁慶の外地蔵とも言う。 - 木石漢(ぼくせきかん):
人情や男女の情を理解しない男性。
木石は本来、木と石のことで、そこから情を解さないもののたとえになった。 - 増上慢(ぞうじょうまん):
もとは仏教の言葉で、悟っていないのに悟ったと思い上がること。転じて、自分を過信してうぬぼれること。また、そういう人。
好み・暮らしぶりの癖を表す三字熟語
食べ物の好みや金銭感覚、日々の暮らしぶりに表れる癖を言い表す三字熟語です。
けちや知ったかぶり、成り上がりをけなす言葉も含まれるので、人に向けて使うときは注意してください。
- 健啖家(けんたんか):
食欲が旺盛で、たくさん食べる人。
「大食漢」と言い換えられる。健啖の「啖」は食べる意で、好き嫌いなくよく食べることをいう。 - 吝嗇家(りんしょくか):
お金や物を出し惜しみする、けちな人物。
吝嗇は物惜しみをすることで、「けち」と読ませて書くこともある。 - 寒苦鳥(かんくちょう):
ヒマラヤにすむという想像上の鳥。
夜は寒さを嘆いて鳴くのに、朝日が昇ると暖かさで寒さを忘れ、巣を作らないことから、仏教で、なまけて悟りを求めない人のたとえ。 - 出来星(できぼし):
急に出世したり大金持ちになったりすること。また、その人。成り上がりをやや皮肉る言い方。
愚かさ・未熟さをからかう三字熟語
愚かさや未熟さをからかったり、ののしったりする三字熟語です。
人に向かって使うと、失礼になったり侮辱になったりするので気をつけてください。
- 昼行灯(ひるあんどん):
昼間に行灯をともしても目立たないことから、ぼんやりした人や役に立たない人をあざける言葉。 - 野呂間(のろま):
動作や頭の働きがにぶいことや、そういう人をののしる言葉。
江戸の人形遣い野呂松勘兵衛が使った、顔の青黒い愚鈍な風貌の道化人形「野呂間人形」に由来するといわれる。 - 与太郎(よたろう):
落語で間抜けな役に使われる名前から転じて、役に立たない愚か者。うそ、でたらめ、またそれを言う人の意もある。 - 唐変木(とうへんぼく):
気がきかず物分かりの悪い人を、ののしって言う言葉。 - 安本丹(あんぽんたん):
愚かな人や間抜けな振る舞いを、あざけって言う言葉。
一説に、「あほたら」を「万金丹」などの薬の名になぞらえた語。 - 表六玉(ひょうろくだま):
まぬけな人、愚か者。
「表六」と同じ語。「兵六玉」とも書く。 - 頓痴気(とんちき):
とんまでまぬけな人を、からかったりののしったりして言う言葉。
「ちき」は接尾語で、「頓痴気」は当て字。 - 木偶坊(でくのぼう):
役に立たない者を、ののしって言う呼び名。
人形の「でく」になぞらえたもの。もとは操り人形そのものを指した。 - 埴猪口(へなちょこ):
粗末な土で作った盃になぞらえて、未熟な人や役に立たない人をあざける言葉。
「埴」は粘りけのある粘土のことで、「はに」とも読む。 - 青二才(あおにさい):
年が若く、経験が浅くて未熟な男性をあざける呼び方。
「二才」は若者を指す「新背」が変化した語とされる。 - 猪口才(ちょこざい):
小生意気で、こざかしいこと。また、そのような人。
「猪口」は当て字。ちょっとした才能があって生意気、という含みがある。 - 黄口児(こうこうじ):
年若く、経験の乏しい者をあざけっていう言葉。
「黄口」はひな鳥のくちばしの黄色さから、年が若く未熟なことをいう。 - 乳臭児(にゅうしゅうじ):
乳くさい子どもという意味から転じて、年少で未熟な者をあざける呼び名。
青二才と言い換えられる語。 - 二本棒(にほんぼう):
間の抜けた人や、女性に甘い男をあざけっていう言葉。ほかに、子どもが左右の鼻からたらす鼻汁を指し、二本差しの武士をののしる語にも使う。 - 弱味噌(よわみそ):
意気地のない人、弱虫をあざける呼び名。
ずる賢さ・腹黒さ・素行の悪さを表す三字熟語
ずる賢さや腹黒さ、素行の悪さをけなす三字熟語です。
人に向かって使うと、強い侮辱になるので気をつけてください。
- 狸親父(たぬきおやじ):
年を取ってずる賢い男を、ののしっていう言葉。
人をだますといわれてきた狸の言い伝えにちなむ。 - 破落戸(ならずもの):
決まった住まいや仕事を持たず、他人の弱みにつけこんでゆすりや嫌がらせをする悪者。 - 寝業師(ねわざし):
表に出ない裏工作が巧みな人。
寝業は「寝技」とも書き、柔道などの技の名でもあるが、この語では交渉事で表に出ないかけひきを指す。 - 無頼漢(ぶらいかん):
無頼な男。ならず者やごろつき。
無頼は、決まった職に就かず無法なことをする意。 - 極道者(ごくどうもの):
悪行を重ね、だらしなく遊び暮らす者を、ののしっていう言葉。
「極道」は「獄道」とも書く。 - 遊冶郎(ゆうやろう):
酒や色事におぼれた、身持ちの悪い男。
李白の「采蓮曲」にも用例がある。遊冶は、遊びにふけって着飾ることで、「冶」は飾る意。 - 鼻下長(びかちょう):
鼻の下が長いという意味から、女性に甘くだらしないこと。また、そういう男性。 - 火事泥(かじどろ):
火事の混乱に乗じて盗みを働く、火事場泥棒。火事に限らず、ごたごたにつけこんで不正な利益を得る人にもいう。 - 狼藉者(ろうぜきもの):
乱暴を働く者。
狼藉は、狼が下草を踏み荒らして寝た跡の乱れからとする説がある。 - 不埒者(ふらちもの):
道理に外れた、ふとどきな人間。
不埒の「埒」は馬場の周りの柵のことで、転じて物事の区切りの意。 - 狼少年(おおかみしょうねん):
イソップ物語で、何度も嘘をついたために本当のことを言っても信じてもらえなかった少年の話から、同じ嘘を繰り返す人。
人物を表す三字熟語の語尾に注目|よく使われる字とその意味
人物を表す三字熟語を並べてみると、語の終わりに同じ字がくり返し使われているものが数多くあります。
どんな字がどんな意味を担っているかを知っておくと、初めて見る三字熟語でも、意味の見当をつけやすくなります。
下の表は、この記事に登場する語を、語の終わりの字ごとに分類したものです。
| 語尾 | 表す意味 | この記事の例 |
|---|---|---|
| 〜者 | そういう人 | 立役者・数寄者・不埒者 など |
| 〜漢 | 男 | 硬骨漢・無頼漢・木石漢 |
| 〜児 | 若者・男子 | 麒麟児・風雲児・黄口児 |
| 〜家 | その性向が強い人 | 好事家・健啖家・吝嗇家 |
| 〜丈夫 | 立派な男 | 偉丈夫・美丈夫・大丈夫 |
| 〜肌 | 気質・持ち味 | 姉御肌・名人肌・天才肌 |
表に挙げた字のほかにも、次のような字がよく使われます。
- 〜坊:
人のありさまを表す語に付いて、そういう人であることを表す字(木偶坊・風来坊) - 〜郎:
男を表す字で、人の名前に見立てた語にも使われる(与太郎・藤四郎・遊冶郎) - 〜才:
才能・才気を表す字(猪口才・螻蛄才)
ただし、すべての三字熟語がこの仕組みで読み解けるわけではありません。
頓痴気のように、字が当て字で字面から意味を導けない語も少なくなく、そうした語は一つひとつの由来を確かめる必要があります。




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