安本丹

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慣用句 三字熟語
安本丹
(あんぽんたん)

6文字の言葉」から始まる言葉
三字熟語 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

出かける直前、手に持っているスマートフォンを必死に探し回ったり、左右で全く違う色の靴下を履いたまま駅まで歩いてしまったり。
誰にでも、自分の抜けた行動に思わず呆れてしまう瞬間があるものです。
そんな、どこか憎めない愚かな振る舞いや、思慮の足りない人物を指して、
「安本丹」(あんぽんたん)と言います。

意味・教訓

「安本丹」とは、愚かな人や間抜けな振る舞いをあざけったり、親しみを込めてからかったりする言葉です。

知能の欠如を厳しく指弾する言葉というよりは、判断を誤ったり、大事なところで「間」が抜けていたりと、どこか愛嬌のある失敗を揶揄するニュアンスで使われます。
現代では、友人や家族といった親しい間柄で、相手のちょっとしたミスを笑い飛ばす際によく用いられます。

語源・由来

「安本丹」の由来は、江戸時代に実在した薬の名称をもじった造語であるという説が最も有力です。

当時、「反魂丹(はんごんたん)」や「万金丹(まんきんたん)」など、語尾に「丹」が付く練り薬が広く流通していました。
江戸の庶民が、効き目のない安物の薬を「安くて本物ではない丹」、すなわち「安本丹」と呼んで皮肉ったのが始まりとされています。
それが転じて、中身のない人間や役に立たない人物を指す言葉へと定着しました。

また、魚のアンコウの「のろまで愚鈍なイメージ」に薬風の語尾を付けたという説や、オランダ語で「分別のない」を意味する「オンフェルスタント(onverstand)」が変化したという説もあります。

使い方・例文

「安本丹」は、深刻な場面ではなく、日常の些細な失敗やとんちんかんな言動に対して使われます。

相手を本気で侮辱するのではなく、ユーモアを交えて「おバカさんだね」と指摘するような文脈が適しています。
また、自分自身の不注意を自嘲気味に表現する際にも非常に使い勝手の良い言葉です。

例文

  • 醤油とソースを間違えて料理にかけるなんて、私は本当に安本丹だ。
  • 傘を差しているのに「傘がない」と騒ぐ彼は、相変わらずの安本丹ぶりを発揮している。

文学作品での使用例

江戸から明治にかけての文学作品では、当時の小粋な罵倒表現としてこの言葉が散見されます。

『坊っちゃん』(夏目漱石)
血気盛んで正義感の強い主人公の「坊っちゃん」が、自分を陥れようとする教頭や、周囲の煮え切らない人々に対して言い放つ場面で登場します。

「あいつも、あの野郎も、みんな安本丹だ。」

類義語・関連語

「安本丹」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 阿呆(あほう):
    愚かなこと。また、そのさま。
  • 頓馬(とんま):
    間が抜けていること。また、その人。
  • おたんこなす
    間抜けな人をあざけって言う言葉。
  • うつけ者(うつけもの):
    ぼんやりした人。また、常識外れの行動をする人。

対義語

「安本丹」とは対照的な意味を持つ言葉は、知性や判断力に優れていることを表します。

  • 知恵者(ちえしゃ):
    知恵の優れた人。機転が利く人。
  • 利口(りこう):
    頭が良く、判断が適切であること。
  • 賢者(けんじゃ):
    賢い人。道理に通じている人。

英語表現

「安本丹」を英語で表現する場合、日常的な「おばかさん」というニュアンスに合わせた単語を選びます。

simpleton

「「まぬけ」「おめでたい人」」
判断力が未熟で、単純すぎるために失敗をしてしまう人というニュアンスです。

  • 例文:
    He is a bit of a simpleton, but everyone likes him.
    (彼は少し安本丹だが、みんなに好かれている。)

dummy

「「おばかさん」「まぬけ」」
日常会話で非常によく使われる、親しい相手への軽いからかいの表現です。

  • 例文:
    Don’t be such a dummy; your glasses are on your head!
    (そんな安本丹なこと言わないで、眼鏡は頭の上にあるよ!)

豆知識:語尾の「丹」の秘密

言葉の最後にある「丹」という文字には、もともと「不老不死の薬」という意味がありました。
江戸時代の人々にとって、「丹」がつく言葉は非常に馴染み深く、言葉遊びの格好の材料だったのです。

例えば、顔がすぐ赤くなる人を「赤面丹(せきめんたん)」と呼ぶなど、性格や特徴を薬の名前に見立てて呼ぶのが当時の流行でした。
「安本丹」も、そうした江戸っ子たちの軽妙なユーモアから生まれた「架空の薬の名前」だったわけです。
そう考えると、誰かを「安本丹」と呼ぶ響きには、どこか江戸の風情が漂っています。

まとめ

「安本丹」は、単なる悪口ではなく、人間の不完全さを笑い飛ばすような温かみのある言葉です。
自分の小さなミスを「安本丹だった」と認められる余裕は、日々のストレスを和らげる薬になるかもしれません。

歴史あるこの言葉を、時には自分を許し、時には親しい人を笑顔にするための潤滑油として使ってみてはいかがでしょうか。

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