人混みの中でも、あるいは静かな式典の場でも、ふと視線を奪われる人物がいます。
整った顔立ちだけでなく、背筋の伸びた堂々たる体躯から、知性と力強さがにじみ出ているような男性。
そんな容姿も体格も優れた立派な男性を、
「美丈夫」(びじょうふ)と言います。
意味・教訓
「美丈夫」とは、顔立ちが美しく、なおかつ体格も立派でたくましい男性のことを指す言葉です。
単に「イケメン」というような顔の造形のみを褒める言葉ではなく、男らしさや威厳を感じさせる骨格、立ち居振る舞いの美しさまでを含んだ、非常に高い賛辞として使われます。
- 美(び):見た目が麗しいこと。
- 丈(じょう):背が高い、または一人前であること。
- 夫(ふ):成人した男性。
語源・由来
「美丈夫」という言葉は、古代中国の単位である「丈」に由来しています。
「丈夫」という言葉は、もともと「一丈の高さがある男」を意味していました。
「丈」は周の時代には約170~180センチメートルに相当し、当時の成人男性としては非常に恵まれた体格を指す基準だったのです。
そこに「美」が加わることで、外見の美しさと、一丈の高さに見合う堂々たる風格を兼ね備えた人物を指すようになりました。
日本では中世以降の軍記物語などで、優れた武将の容姿を形容する言葉として定着していきました。
使い方・例文
「美丈夫」は、現代では小説や歴史の解説、あるいは特別な式典などの改まった場面で使われることが多い言葉です。
日常会話で使う場合は、単なる「格好いい」よりも一歩踏み込んで、その人の持つオーラや体格の良さを強調したい時に適しています。
例文
- 成人式で袴をまとった彼は、見違えるような美丈夫だった。
- 舞台の中央に現れた主役の役者は、誰もが見惚れるほどの美丈夫だ。
- 彼は若くして道場主を務めるだけあって、文武両道を地で行く美丈夫である。
文学作品・メディアでの使用例
『燃えよ剣』(司馬遼太郎)
新選組副長、土方歳三の容姿を描写する際によく用いられます。
物語の中で、土方はその峻烈な性格とともに、誰もが振り返るほどの抜きん出た容姿を持つ人物として描かれています。
歳三は、多摩の農家出身とは思えぬほどの、色の白い、引き締まった顔立ちの美丈夫であった。
誤用・注意点
「美丈夫」は、あくまで「男性」に対して使われる言葉です。
「美」という漢字が含まれていますが、女性の美しさを形容する際に使うのは誤りですので注意しましょう。
また、現代で「丈夫」と言うと「体が頑丈である」「壊れにくい」という意味が一般的ですが、この言葉の文脈では「成人した立派な男」という意味が生きていることを理解しておくと、ニュアンスがより正確に伝わります。
類義語・関連語
「美丈夫」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 眉目秀麗(びもくしゅうれい):
顔立ちが大変整っており、美しいこと。
「美丈夫」が体格も含めたニュアンスを持つのに対し、こちらは顔そのものの美しさに焦点が当たります。 - 益荒男(ますらお):
強く堂々とした、立派な男性。
外見の美しさよりも、精神的な強さや武勇に重きを置いた表現です。 - 英俊(えいしゅん):
才知が優れ、容姿も立派なこと。
内面的な賢明さが強調される言葉です。
対義語
「美丈夫」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 醜男(しおとこ):
容姿が醜い男性のこと。 - 不細工(ぶさいく):
形が整っていないこと、または容姿が見苦しいこと。
英語表現
「美丈夫」を英語で表現する場合、単に「Handsome」とするよりも、体格の良さを補足する言葉を添えるのが適切です。
A handsome and well-built man
「ハンサムで、がっしりとした体格の男性」という意味です。
体格の良さ(丈)を表現する際によく使われるフレーズです。
- 例文:
- He grew up to be a handsome and well-built man.
彼は成長して、立派な美丈夫になった。
豆知識:お酒の銘柄としての「美丈夫」
言葉の響きの美しさから、高知県の濱川商店が造る日本酒の銘柄としても広く知られています。
このお酒のコンセプトも言葉の意味に近く、「凛としていて、キレが良く、しなやかで美しい」という、まさに理想的な男性像を思わせる味わいを目指して醸されています。
お酒好きな方との会話では、単なる容姿の形容だけでなく、こうした銘柄の話を添えると知識の幅が広がりますね。
まとめ
顔立ちが整い、かつ体格も立派な男性を指す「美丈夫」という言葉。
そこには、古来より人々が理想としてきた「強さと美しさの共存」という願いが込められています。
現代のカジュアルな褒め言葉も素敵ですが、ここぞという時にこの言葉を使えるようになると、表現に奥深い気品が加わることでしょう。




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