日常会話で使われる「漢字3文字」の熟語にも、中国の歴史や物語に由来する「故事成語」が存在します。
2文字や4文字の言葉に比べると数は多くありませんが、「破天荒」や「登竜門」のように、現代でも頻繁に使われる重要な言葉が含まれています。
ここでは、語彙力を高める「漢字3文字の故事成語」を網羅し、その意味と背景にある物語を簡潔に解説します。
人物・性格・あり方を表す言葉
人の性質や能力、置かれた立場などを端的に表す言葉です。現代では一般的な名詞として使われている言葉も、実は深い思想や逸話に基づいています。
麒麟児(きりんじ)
幼い頃から天才的な才能を発揮し、将来が期待される少年。
中国の伝説上の聖獣「麒麟(きりん)」は、優れた王の治世に現れるとされることから、神童や優れた才能を持つ子供を指すようになった言葉。
『南史』などで、優れた子供を「麒麟」と称賛する記述が見られます。
好々爺(こうこうや)
善人で、何を言っても逆らわず、ニコニコしているお年寄り。
唐の末期、司空図(しくうと)という詩人が、客から何を言われても否定せず、常に「よしよし(好々)」と答えていた逸話に由来。
鉄面皮(てつめんぴ)
恥知らずで厚かましいこと。面の皮が鉄のように厚いこと。
王光遠(おうこうえん)という男は、出世のために権力者にへつらい、鞭で打たれても平気な顔をしていたため、人々から「顔の皮の厚さは鉄のようだ」と罵られた故事(『北夢瑣言』)。
門外漢(もんがいかん)
その分野について専門知識を持たない人。部外者。
宋の詩人・蘇軾(そしょく)が、ある時「自分は門外の漢(男)だ」と自嘲して詩に詠んだことなどに由来。本来は専門外の人を指す言葉。
素封家(そほうか)
大金持ち。資産家。
『史記』貨殖列伝より。「素封」とは、官位や領地(封ぜられた土地)を持たないが、それらを持つ封君と同じくらいの富を持っていること。
主人公(しゅじんこう)
物語の中心人物。本来は「本来の自分」「自己の主」という意味。
中国の瑞巌(ずいがん)和尚が、毎日自分自身に向かって「主人公、主人公」と呼びかけ、「はい、はい」と答えて、自分を見失わないよう戒めていたという禅の逸話(『無門関』)。
大丈夫(だいじょうぶ)
危なげがないこと。本来は「立派な男子」という意味。
『孟子』にある「富貴も淫する能はず…此を之れ大丈夫と謂ふ」という一節から。
どんな誘惑や脅威にも屈しない立派な男(丈夫)を指す言葉が、転じて「非常に強い」「間違いがない」という意味に変化しました。
状況・成果・関係性を表す言葉
驚くべき成果や、特殊な場所、状況を表す言葉です。
破天荒(はてんこう)
今まで誰も成し得なかったことを初めて行うこと。「未曾有」と同義。
唐の時代、荊州(けいしゅう)からは官吏登用試験(科挙)の合格者が一度も出ず「天荒(未開の地)」と呼ばれていたが、劉蛻(りゅうぜい)が初めて合格し、「天荒を破った」と称えられた故事。
※「豪快で乱暴な様子」として使うのは誤用。
登竜門(とうりゅうもん)
立身出世のための難しい関門。そこを突破すれば成功が約束される機会。
黄河の上流にある急流「竜門」を登りきった鯉は、竜になるという伝説(『後漢書』)に由来。
※「登竜」とも言うが、現代では3文字で定着しています。
桃源郷(とうげんきょう)
俗世間を離れた平和で美しい別世界。ユートピア。
陶淵明の『桃花源記』に描かれた、戦乱を避けた人々が先祖代々平和に暮らす、桃林の奥の不思議な村の物語。
五里霧(ごりむ)
物事の事情が分からず、方針や見込みが立たないこと。「五里霧中」の略。
後漢の張楷(ちょうかい)は、仙術を使って「五里四方」にわたる深い霧を発生させ、姿をくらますことができたという『後漢書』の故事。
風馬牛(ふうばぎゅう)
自分とは何の関係もないこと。無関心な態度。「風馬牛を決め込む」などと使う。
斉の国と楚の国は遠く離れており、放し飼いの「馬」や「牛」が発情して走り回っても、互いの領土には届かない(干渉しない)ということから、無関係のたとえとなった言葉(『春秋左氏伝』)。
不夜城(ふやじょう)
灯りがこうこうとついていて、夜も昼のように明るく賑やかな場所。
古代中国(漢)の東海岸にあった、太陽が沈まないとされた伝説の城、または夜通し灯りをつけて遊興に耽った貴族の屋敷などに由来。
度外視(どがいし)
全く問題にしないこと。無視すること。
後漢の光武帝が、天下統一の際、残っていた二大敵対勢力について「あの二人は、今のところ度(法や関心)の外に置いておこう(捨てておこう)」と言い放った故事(『後漢書』)。
無尽蔵(むじんぞう)
いくら取ってもなくならないこと。
宋の蘇軾が『赤壁賦』の中で、自然の美しさ(清風や明月)を「造物者の無尽蔵(造物主がくれた尽きることのない宝)」と表現したことに由来。元は仏教用語。








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