意味
「破天荒(はてんこう)」とは、それまで誰も越えられなかった壁を、初めて打ち破るという意味です。
「破天荒の快挙」「破天荒な記録」のように、ほかの言葉を修飾する形でも使います。
- 破(は):打ち破ること。
- 天荒(てんこう):未開の荒れ地。転じて、これまで誰も成し遂げていない状態。
語源・由来
「破天荒」の語源は、中国の五代十国時代から宋代にかけて成立した説話集『北夢瑣言』と、唐代の科挙にまつわる逸話を集めた『唐摭言』に記された故事に由来します。
唐の時代、荊州(けいしゅう)という地方からは、官吏登用試験である「科挙(かきょ)」の合格者が長年一人も出ておらず、人々はその状況を未開の荒れ地に例えて「天荒」と呼んでいました。
しかし、ついに劉蛻(りゅうぜい)という人物が初めて合格を果たします。
人々はこれを「天荒を破った」と称賛し、地方長官も彼に報奨金を与えて大いに祝いました。
この歴史的快挙から、前人未到の偉業を成し遂げることを意味するようになりました。
使い方・例文
「破天荒」は、過去に例を見ない新しい試みや、歴史を塗り替えるような快挙を成し遂げた場面で使われます。
- その若きアスリートは、デビュー戦で破天荒な大記録を打ち立てた。
- 誰も思いつかなかった破天荒なアイデアが、地域の課題を解決に導いた。
- 彼女が長年の慣例を覆して社長に就任したのは、わが社における破天荒な出来事だ。
誤用・注意点
「破天荒」は本来、「前人未到の偉業」を称える言葉です。
文化庁「国語に関する世論調査」(令和2年度)では、「だれも成し得なかったことをすること」と答えた人が23.3パーセント、「豪快で大胆な様子」と答えた人が65.4パーセントでした。
本来の意味で受け取る人は2割強にとどまります。
「彼は飲み会で破天荒に暴れる」といった使い方は本来の用法から外れており、相手に教養を疑われる可能性があるため注意が必要です。
あくまで「初めての輝かしい功績」に対して使用しましょう。
類義語・関連語
「破天荒」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 前人未到(ぜんじんみとう):
今までに誰も足を踏み入れたり、成し遂げたりしていないこと。 - 空前絶後(くうぜんぜつご):
過去に例がなく、将来にも起こりそうにないほど珍しく素晴らしいこと。 - 前代未聞(ぜんだいみもん):
これまでに一度も聞いたことがないような珍しいこと。 - 未曾有(みぞう):
今までに一度も起こったことがないこと。
対義語
「破天荒」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下のようなものがあります。
英語表現
「破天荒」を英語で表現する場合、以下のような定型表現が使われます。
unprecedented
意味:かつてない、前例のない。
This is an unprecedented achievement in medical history.
(これは医学の歴史において、破天荒な快挙である。)
groundbreaking
意味:画期的な、草分け的な。
未開の地を切り開くニュアンスを含みます。
The scientist presented a groundbreaking theory at the conference.
(その科学者は会議で、破天荒な理論を発表した。)
現代におけるニュアンスの変化
メディアの普及等により、「破天荒」という言葉のニュアンスは時代と共に大きく変化しました。
本来は科挙という超難関試験を突破した知的な偉業を称える言葉でしたが、テレビ番組などで「常識破りで無茶な行動をする芸人・キャラクター」を「破天荒」と呼ぶようになった影響で、本来の知的でポジティブな意味合いが薄れ、「豪快」「粗暴」といったイメージが定着してしまいました。
言葉は生き物であり意味が変化していくのは自然なことですが、「前人未到の偉業」という本来のルーツを知っておくことで、いざという場面で敬意を込めた粋な使い方ができるでしょう。















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