スポーツの世界で何十年も破られなかった記録が塗り替えられたり、歴史に名を刻むような稀に見る名演奏に出会ったりすることがあります。
そんな過去にも未来にも例を見ないほど並外れた状況を、
「空前絶後」(くうぜんぜつご)と言います。
意味・教訓
「空前絶後」とは、過去に例がなく、将来にも起こり得ないと思われるほど極めて珍しいことを指す言葉です。
「空前」はそれより前に例がないこと、「絶後」はそれより後にも起こらないことを意味し、その事柄の唯一無二な価値や、桁外れなスケールを強調する際に使われます。
- 空前(くうぜん):
「空」は空っぽ、すなわち無いこと。以前には一度もなかったという意。 - 絶後(ぜつご):
「絶」は途絶えること。以後、二度と現れないだろうという意。
語源・由来
「空前絶後」の語源は、中国の宋代の記録に見られます。
北宋の趙迥という人物が、それまでの歴史になかったほど優れた絵画を「空前」と評したことが始まりとされています。
その後、対になる言葉として「絶後」が加わり、過去から未来に至る長い時間軸の中で、これ以上のものは存在しないという最大級の賛辞として定着しました。
もともとは芸術作品の評価に使われていた言葉ですが、現代では個人の才能や歴史的な大事件など、幅広い事柄に用いられています。
使い方・例文
「空前絶後」は、単に「珍しい」というレベルを超え、二度と再現できないような奇跡的な出来事や、圧倒的な記録を表現する際に使われます。
例文
- 昨日の運動会で見せた彼の活躍は、まさに空前絶後と言えるものだった。
- この小さな町で、空前絶後の大規模な祭りが開催された。
- 彼は空前絶後の才能を持つ不世出の天才として、今も語り継がれている。
- 創業以来、空前絶後の大ヒット商品が誕生し、社内は歓喜に包まれた。
文学作品での使用例
『吾輩は猫である』(夏目漱石)
寒月という登場人物が、ヴァイオリンの弦をわざと切るという風変わりな行動を自ら語るシーンで、その珍妙さを強調してこの言葉が使われています。
「……実は空前絶後の珍報であると思うて、わざわざ御報知に参ったのでございます」
類義語・関連語
「空前絶後」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 前代未聞(ぜんだいみもん):
これまでに一度も聞いたことがないほど珍しいこと。 - 未曾有(みぞう):
未だかつて一度も起こったことがないこと。 - 曠古(こうこ):
歴史上、例を見ないほど珍しいこと。 - 唯一無二(ゆいいつむに):
この世に二つとない、かけがえのないこと。
対義語
「空前絶後」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 日常茶飯事(にちじょうさはんじ):
毎日の食事のように、ごくありふれていて珍しくないこと。 - 平々凡々(へいへいぼんぼん):
極めて平凡で、これといった特徴や優れた点がないさま。 - 月並み(つきなみ):
新鮮味がなく、どこにでもあるような平凡な様子。
英語表現
「空前絶後」を英語で表現する場合、以下の定型句が適しています。
unprecedented and unrepeatable
「前例がなく、再現不可能である」という意味で、過去と未来の両方を否定するニュアンスを正確に伝えます。
- 例文:
His achievement was unprecedented and unrepeatable.
彼の功績は、まさに空前絶後のものだった。
the first and the last
「最初で最後」という意味の慣用句です。二度と現れない唯一の存在であることを強調します。
- 例文:
This legendary concert will be the first and the last of its kind.
この伝説的なコンサートは、空前絶後のものになるだろう。
まとめ
「空前絶後」は、過去から未来までの長い時間軸において唯一無二であることを示す、極めて重みのある言葉です。
現代では誇張表現として使われることもありますが、本来は一生に一度出会えるかどうかの奇跡に対する、心からの畏敬と賛嘆を表します。
言葉の真意を理解し、ここぞという真の偉業に対して慎重に言葉を選ぶことで、その感動はより深く、品格あるものとして心に刻まれることでしょう。





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