未曾有

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故事成語 仏教用語
未曾有
(みぞう)
異形:未曽有

3文字の言葉」から始まる言葉

大地震やパンデミックなど、想像を超える出来事が起きたとき、ニュースで必ずと言っていいほど耳にする
「未曾有」(みぞう)。

「これまでにない大変なこと」というニュアンスで使われますが、この言葉、自信を持って正しく読めますか? 実は過去に、国会答弁で麻生太郎元首相が「みぞゆう」と読み間違えて大きく報道されたことがあるほど、誤読の多い言葉の筆頭格です。

本来はどのような意味を持ち、なぜこれほど読み間違えられやすいのか。その正体と正しい使い方を解説します。

意味

「未曾有」とは、今までに一度も起こったことがないことを意味します。
歴史上、類を見ないほど珍しい出来事や、極めて大きな事件・災害などを指して使われます。

漢文としての構造

この言葉は、漢文の書き下し文(訓読)に直すと、意味がそのまま理解できます。

  • (いま)だ
  • (かつ)て
  • (あ)らず

つまり、「今までかつて、あったことがない」という文章が、そのまま熟語として定着したものです。

語源・由来

「未曾有」は、もともと仏教由来の言葉です。

古代インドのサンスクリット語で「驚くべきこと」「不思議なこと」を意味する「アッブタ(adbhuta)」という言葉を漢訳したものです。
仏教の経典を内容や形式で分類した「十二部経(じゅうにぶきょう)」の一つに「未曾有法(みぞうほう)」というジャンルがあり、これは「仏の功徳や、仏界の奇跡を称える内容」を指していました。

つまり、元々は「素晴らしい奇跡」や「感動的な出来事」を指すポジティブな意味で使われていたのです。
しかし、日本に定着する過程で「奇跡的に珍しい」という意味から転じ、現代では「(悪い意味で)ありえないことが起きた」という、ネガティブな事態に対して使われることが一般的になりました。

使い方・例文

現代においては、単に「珍しい」というだけでなく、「社会全体を揺るがすような一大事」「過去の常識が通用しない事態」を表現する際に好んで使われます。

例文

災害・事件(現代で最も多い用法)

  • 日本列島は、観測史上最大級という「未曾有」の豪雨に見舞われた。
  • 世界経済は今、リーマンショックを超える「未曾有」の危機に直面している。
  • その事故は、「未曾有」の環境破壊を引き起こした。

称賛(本来の意味に近い用法)

  • 彼はデビュー戦で世界新記録を出すという、「未曾有」の快挙を成し遂げた。
  • この発見は、科学史における「未曾有」の出来事と言えるだろう。

※ただし、ポジティブな意味で使う場合は文脈に注意が必要です。
「未曾有」=「災害」というイメージを持つ人も多いため、お祝いの席などでは「空前絶後」などの言葉を選んだほうが無難でしょう。

誤用・注意点

「みぞうう」や「みぞゆう」という読み間違い

もっとも注意すべきなのが読み方です。
現代における標準的な読み方は「みぞう」ですが、以下のような間違いが非常に多く見られます。

  • :みぞゆう
    • 「有」を「有無(うむ)」の「う」ではなく、「所有(しょゆう)」の「ゆう」と読んでしまう間違い。
  • :みぞうう
    • 一部の古い辞書などでは「みぞうう」と記載されていることもありますが、現代の放送用語や一般的な場面では「みぞう」と読むのが正解とされています。

【なぜ「みぞう」と読むのか?】
仏教用語は、古い時代の中国の発音である「呉音(ごおん)」で読むのが通例です。

  • :呉音で「ゾ」
  • :呉音で「ウ」
    これをつなげて「ゾ+ウ=ゾウ」となるため、「みぞう」と読みます。

「未曾有」と「前代未聞」の使い分け

似た言葉に「前代未聞(ぜんだいみもん)」がありますが、ニュアンスが少し異なります。

  • 未曾有:規模が大きく、歴史的な重みがある。(例:大災害、大恐慌)
  • 前代未聞:「聞いたことがない」という点に焦点があり、呆れるような悪い出来事や不祥事に使いやすい。(例:前代未聞の不祥事、珍事)

類義語・関連語

「未曾有」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 空前絶後(くうぜんぜつご):
    過去に例がなく、将来も二度とないだろうと思われること。
  • 前代未聞(ぜんだいみもん):
    これまでの時代に聞いたことがないような珍しいこと。
  • 青天の霹靂(せいてんのへきれき):
    晴れた空に突然雷が鳴るように、予期せぬ出来事が起こること。
  • 想定外(そうていがい):
    事前に予想していた範囲を超えること。
  • 古今未曾有(ここんみぞう):
    昔から今まで、一度もなかったこと。「未曾有」をさらに強めた表現。

対義語

「未曾有」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 日常茶飯事(にちじょうさはんじ):
    お茶を飲んだりご飯を食べたりするように、ありふれたこと。
  • 古今独歩(ここんどっぽ):
    (対義語というより比較対象として)昔から今に至るまで比べるものがないこと。
  • ありふれた
    どこにでもあって珍しくないこと。

英語表現

「未曾有」を英語で表現する場合、その事態のニュアンスに合わせて単語を選びます。

unprecedented

  • 意味:「前例のない」「空前の」
  • 解説:もっとも一般的な訳語です。災害から成功まで幅広く使えます。
  • 例文:
    We are facing an unprecedented crisis.
    (我々は未曾有の危機に直面している。)

unparalleled

  • 意味:「並ぶものがない」「比類なき」
  • 解説:他と比較できないほど凄い、というニュアンスで使われます。
  • 例文:
    An event of unparalleled magnitude.
    未曾有の規模の出来事。)

「曾」の豆知識

「未曾有」の真ん中にある「曾」(ぞ)という漢字。「曽」の旧字体ですが、この文字は「かつて」という意味以外に、「重なる」という意味も持っています。

「曾祖父(そうそふ)」や「曾孫(ひまご)」という言葉に使われるのは、「父の父」「孫の孫」と代が重なっているからです。

ちなみに、「層(そう)」や「贈(ぞう)」、「増(ぞう)」など、音読みで「そう/ぞう」と読む漢字の多くに、パーツとしてこの「曾」が含まれています。
「曾が含まれる字は『ゾウ』と読むことが多い」と覚えておけば、「みぞう」という読み方も自然と頭に入るはずです。

まとめ

「未曾有」とは、「いまだ(未)、かつて(曾)、あらず(有)」という漢文がそのまま言葉になったもので、「歴史上初めて起こるような大事件」を指します。

本来は「仏の奇跡」を表す言葉でしたが、現代では「未曾有の大災害」のようにネガティブな文脈で使われることが一般的です。

読み方は「みぞゆう」ではなく「みぞう」
ここぞという場面でスマートに使えるよう、正しい読みと意味を心に留めておきましょう。

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