意味
「頭をもたげる(あたまをもたげる)」とは、それまで隠れていた考えや疑いが、ふと心に浮かんでくるという意味です。
もう一つ、少しずつ力をつけて表に出てくるという意味でも使い、こちらは「台頭する」と同じです。
漢字では「頭を擡げる」と書き、「頭を持ち上げる」という形もあります。
- 擡げる(もたげる):下にあるものを持ち上げる。
- 台頭(たいとう):勢いを得て進み出てくること。
語源・由来
この言葉の「擡げる」は、古い言い方の「もてあぐ」が変化した語で、持ち上げる・起こすという意味です。
「かま首を擡げる」のように、首や頭を起こす動作にも使います。
「頭をもたげる」は、頭を起こすこの動作で、心の中の思いや世の中の勢力が表に出てくることを言い表します。
使い方・例文
- 試験が近づくと、勉強が足りないのではという不安が頭をもたげる。
- 友人の話を聞くうちに、本当だろうかという疑いが頭をもたげてきた。
- 地方の小さな政党が、選挙のたびに少しずつ頭をもたげてきている。
- 若手の画家たちが頭をもたげ、展覧会の顔ぶれが変わり始めた。
娘を待つ父親の疑い
『雁』(森鴎外)では、娘のお玉と離れて暮らし始めた父親が、一週間たっても娘が訪ねてこないことに気をもみます。
その心に浮かんだ疑いを、鴎外は次のように書いています。
あいつ楽な身の上になって、親の事を忘れたのではあるまいかと云う疑が頭を擡げて来る。
すぐ後には、この疑いはごく淡いもので、娘を憎くは思えないと続きます。
物語の後のほうには、池の雁が「擡げていた頸」を垂れる場面もあり、首を起こすというもとの意味の「擡げる」も出てきます。
類義語・関連語
「表に出てくる」という二つ目の意味に近い言葉です。
- 台頭(たいとう):
勢いを増して、世の中に進み出てくること。 - 頭角を現す(とうかくをあらわす):
才能や腕前が、周りより一段と優れて目立ってくること。
英語表現
rear its ugly head
好ましくない物事が表に出てきて、問題を起こすこと。
歓迎されないものに使う句で、「頭をもたげる」の不安や疑いが浮かぶ場面に近い表現。
Old doubts began to rear their ugly heads again.
(古い疑いが、また頭をもたげ始めた。)
徒然草では「もたげよ」が昔の言い方
「擡げる」のもとになった「もてあぐ」は、鎌倉時代の終わりに吉田兼好が書いた『徒然草』にも出てきます。
何事も昔のほうが好ましく、今の言葉は品がなくなっていくと述べる段で、昔は「車もたげよ」と言ったのに、今の人は「もてあげよ」と言う、という例が挙がっています。
兼好はこれを、昔の人が残念がっていた話として書き留めています。
「もたげる」はもともと「もてあぐ」が縮まってできた語ですが、兼好のころには、縮まった「もたげよ」のほうが昔からの言い方で、「もてあげよ」が今ふうの言い方と受け取られていたことになります。


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