「頭(あたま)」は、思考や知恵の中心であり、「顔(かお)」は、その人の感情や社会的信用(面子)を表す部位として認識されています。「頭が切れる」といえば知性を示し、「顔が広い」といえば人脈を示します。
「頭が上がらない」「顔に泥を塗る」「竜頭蛇尾」など、現代でも日常的に使われる表現が豊富で、頭と顔にまつわる言葉は人間の知性や社会的立場を巧みに表現しています。
ここでは、「頭」や「顔」に関連する、主なことわざ・慣用句・四字熟語・故事成語を紹介します。
もくじ
「頭・顔」に関する ことわざ
- 頭隠して尻隠さず(あたまかくしてしりかくさず):
雉が草むらに頭だけ隠し、長い尾が丸見えになる姿にたとえた言葉で、悪事の一部を隠しても全体は隠しきれない愚かさを嘲笑う。 - 仏の顔も三度まで(ほとけのかおもさんどまで):
元は「仏の顔も三度撫ずれば腹を立つ」という言い回しで、狂言にも見える古い表現。どれほど温厚な人でも、無礼を重ねられれば最後は怒るというたとえ。 - 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
泣いて腫れた顔を蜂がさらに刺すという情景から生まれた言葉で、不幸の上にさらに不幸が重なる状況を表す。
「頭・顔」に関する慣用句
頭に関する表現
知性・思考・判断
- 頭が切れる(あたまがきれる):
刃物のような鋭さで物事を捌くという比喩で、知恵がよく働き、状況を素早く的確に処理できる様子。 - 頭が固い(あたまがかたい):
頭そのものが硬くて曲がらない様子を、考え方の融通のなさにたとえた言い方で、新しい発想を受け入れにくい頑固さ。 - 頭が柔らかい(あたまがやわらかい):
「頭が固い」の対で使われる言い方で、固定観念にとらわれず、物事を多角的な視点から捉えられる柔軟さ。 - 頭が古い(あたまがふるい):
中身の考え方が更新されていない状態を、古びた物にたとえた言い方で、時代の変化についていけていないさま。 - 頭に入れる(あたまにいれる):
知識や情報を頭という容器にしまい込むイメージの言い方で、必要なときすぐに取り出せるよう、あらかじめしっかり覚えておく様子。 - 頭をひねる(あたまをひねる):
首をかしげて考え込む所作がそのまま言葉になったもので、良い方法がないか、あれこれ工夫を巡らせる仕草。 - 頭を悩ます(あたまをなやます):
堂々巡りの考えが頭の中で渦を巻き、なかなか抜け出せなくなる様子を表す言い方で、どうしたらよいか思い悩み続けるさま。
態度・姿勢・敬意
- 頭が上がらない(あたまがあがらない):
恐縮や恩義から自然と頭を下げたくなる、その姿勢のまま上げられない状態を表す言い方で、相手と対等な立場に立てない様子。 - 頭が下がる(あたまがさがる):
尊敬の気持ちで思わずお辞儀をしてしまう仕草をそのまま言葉にしたもので、相手の行いや考え方に深く感心し敬服する心情。 - 頭が低い(あたまがひくい):
実際に体を低くかがめる謙虚な姿勢を表す言い方で、地位や実力があっても人に対してへりくだった態度をとるさま。 - 頭ごなし(あたまごなし):
相手の話をさえぎり、頭の部分からいきなり叱りつけるイメージの言葉で、言い分を聞かずに一方的に決めつけて命令する態度。
感情・状態
- 頭に来る(あたまにくる):
怒りの感情が体の内側から頭部へと一気に突き上げてくる感覚を表した言葉で、抑えきれないほど激しい怒りを覚える様子。 - 頭を冷やす(あたまをひやす):
怒りや興奮で熱くなった頭を、文字通り水などで冷ますイメージの言い方で、いったん頭を離れ、冷静さを取り戻そうとする様子。 - 頭を抱える(あたまをかかえる):
困り果てて思わず両手で頭を押さえ込む仕草がそのまま言葉になったもので、どうしてよいかわからず、ひどく思い悩む様子。 - 頭をもたげる(あたまをもたげる):
伏せていた動物が頭を持ち上げる動作にたとえた言い方で、心の奥にあった考えや疑念が、ふと表に生じてくる心の動き。
力関係・制限
- 頭を押さえる(あたまをおさえる):
台頭してくる相手の頭を物理的に押さえつけるイメージの言い方で、力をつけさせないよう上から抑え込む様子。 - 頭打ち(あたまうち):
成長していた頭が天井にぶつかって止まるイメージの言い方で、売上や記録などがそれ以上伸びず、横ばいの状態が続くことを表す言葉。
その他
- 頭角を現す(とうかくをあらわす):
唐の文人・韓愈が、若くして活躍した柳宗元をたたえた文章に見える言葉で、群れの中から頭の先だけが抜きん出るように、才能や能力が人より優れて際立ってくる様子。
顔に関する表現
人脈・信用・影響力
- 顔が広い(かおがひろい):
知られている「顔」の範囲が広いという発想の言い方で、知り合いが多く、さまざまな分野に交際範囲が及んでいる様子。 - 顔が利く(かおがきく):
顔を見せるだけで融通が利くという意味合いの言い方で、信用や人望があるおかげで特別な扱いを受けられる立場。 - 顔が売れる(かおがうれる):
商品のように「顔」という個人の存在そのものが世に知れ渡っていくイメージの言い方で、広く世間に名前や顔が知られる様子。 - 顔が揃う(かおがそろう):
出席すべきメンバーの顔ぶれが欠けることなく集まる様子を表す言い方で、関係者が全員そろっている状態。 - 顔を貸す(かおをかす):
自分の顔、つまり存在そのものをその場に差し出すイメージの言い方で、頼まれて、あるいは呼び出されてやむを得ずその場に出向く場面。 - 顔を出す(かおをだす):
文字通り会場に顔だけをのぞかせるイメージの言い方で、会合などに短時間だけ立ち寄り参加する様子。 - 顔を合わせる(かおをあわせる):
互いの顔を正面から向き合わせるという素直な言い方で、画面越しではなく実際に会って直接顔を見る場。
名誉・面子
- 顔が立つ(かおがたつ):
「顔」を面目や体面そのものと見立てた言い方で、周囲に対して自分の面目が保たれ、恥をかかずに済んでいる状態。 - 顔に泥を塗る(かおにどろをぬる):
きれいな顔にわざと泥を塗りつける仕草にたとえた言い方で、相手の名誉や面目をひどく傷つけ、恥をかかせる行為。 - 顔を立てる(かおをたてる):
相手の面目という「顔」がつぶれないよう配慮するイメージの言い方で、相手の立場が保たれるよう心を配る気遣い。 - 顔を潰す(かおをつぶす):
「顔を立てる」とは反対に位置する言い方で、故意でなくとも結果的に相手の名誉や面目を損なってしまう行為。 - 面目を失う(めんぼくをうしなう):
「顔を潰される」立場に回った状態を自分側から述べた言い方で、名誉や信用を失い、恥ずかしい思いを味わう状態。 - 合わせる顔がない(あわせるかおがない):
後ろめたさから相手と正面から顔を合わせられない心理を表す言い方で、恥ずかしさや申し訳なさのあまり、その人に会うことができない心境。
表情・態度
- 顔が曇る(かおがくもる):
晴れた空が雲におおわれるように、心配や悲しみで明るかった表情に翳りが差してくる様子を、天気の変化にたとえた言い方。 - 顔から火が出る(かおからひがでる):
強い恥ずかしさで顔が一気にかっと熱く赤らむ感覚を、まるで火が噴き出すかのように誇張してたとえた表現。 - 顔色をうかがう(かおいろをうかがう):
相手が言葉にしない機嫌や本音を、顔つきのわずかな変化から読み取ろうと、そっと様子を探る振る舞い。 - 涼しい顔(すずしいかお):
本来なら動揺してもおかしくない立場にありながら、まるで無関係であるかのように涼やかで平然とした表情を崩さない態度。 - 何食わぬ顔(なにくわぬかお):
何かをしでかしておきながら、まるで何も口にしていないかのように装う、演技じみた平然とした表情。 - 知らん顔(しらんかお):
本当は関わりがあると分かっていながら、あえて目をそらし、まったく気づいていないかのようなふりを押し通す態度。 - 大きな顔をする(おおきなかおをする):
実力以上の権限や手柄があるかのように、顔を大きく見せつけていばった態度をとる様子。
その他
- 顔負け(かおまけ):
自分の顔が見劣りして感じられるほど、相手の実力に圧倒される様子を表す言い方で、本職の人や大人でも舌を巻くほどの腕前。 - (どの)面下げて((どの)つらさげて):
恥じるべき行いをしておきながら、どの顔をぶら下げて現れたのかと問い詰めるようなニュアンスの言い方で、平然と人前に現れることを強く非難する言葉。 - 面と向かって(めんとむかって):
電話や書面など間接的な手段を使わず、相手の顔が見える距離まで歩み寄って直接伝える様子を表す言い方。 - 面食らう(めんくらう):
元は「橡麺棒(とちめんぼう)を食らう」の略とされる言い方で、急いで麺を打つ慌ただしさになぞらえ、突然のことに驚きまごつく様子を表す。 - 面が割れる(めんがわれる):
元は警察や裏社会で使われた隠語とされ、隠れていた正体が割れて表に出るイメージの言い方で、主に犯人などの顔や身元が世間に知られてしまう状態。
「頭・顔」に関する四字熟語
- 頭寒足熱(ずかんそくねつ):
江戸時代の俳諧書『崑山集』に「すそ野あつし 頭寒足熱 ふじの雪」と詠まれるなど古くから親しまれた言葉で、頭を冷やし足を温めると体によいとされる養生の知恵。 - 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):
禅の問答を集めた書物にたとえとして見える言葉とされ、頭は竜のように立派でも尾は蛇のように貧弱という対比で、初めは勢いが盛んでも終わりは振るわないさま。 - 厚顔無恥(こうがんむち):
「厚顔」は面の皮が厚いこと、「無恥」は恥を知らないことを指し、二つを重ねて意味を強めた言い方で、厚かましく恥を知らない態度。 - 眉目秀麗(びもくしゅうれい):
「眉目」は眉と目、つまり顔だちを指し、「秀麗」はひときわ優れて美しいことを表す言葉で、特に男性の顔立ちが整って美しいさま。 - 面目躍如(めんぼくやくじょ):
「面目」は世間からの評価、「躍如」は生き生きとして勢いのある様子を指す言葉で、その人本来の実力にふさわしい活躍がありありと表れている状態。
「頭・顔」に関する故事成語
- 刎頸の交わり(ふんけいのまじわり):
首を刎ねられても悔いがないほどの、親しい友人関係のこと。(中国戦国時代の趙の藺相如と廉頗の故事から) - 首鼠両端(しゅそりょうたん):
優柔不断で態度を決めかねること。(穴の入り口で頭を出したり引っ込めたりする鼠の故事から) - 白髪三千丈(はくはつさんぜんじょう):
心配や悲しみで白髪が非常に長く伸びるという誇張表現。物事を大げさに言うたとえ。(李白の詩「秋浦歌」から)
顔や頭の比喩は英語にも見られる
顔や頭を使った比喩表現は、英語にも数多く見られます。
「顔を立てる」に近い言い回しに”save face”(面目を保つ)があり、「頭を悩ませる」に近い表現として”rack one’s brains”(頭を絞る)があります。
体の部位を借りて心の動きを表す発想は、日本語だけの特徴ではありません。
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