話し合いの場で一度言い出したら絶対に意見を曲げない人や、明らかに間違っていても自分の非を認めない人。
そのような状況を、「頑固・強情」(がんこ・ごうじょう)と言います。
時には「意志が強い」と評価されることもありますが、度が過ぎれば周囲との摩擦を生む原因にもなります。
そんな「頑固・強情」な様子を表す言葉を、
「動かない」「聞かない」「認めない」「ひねくれている」
という4つのタイプに分類して紹介します。
「頑固」と「強情」の意味
「頑固」とは、かたくなで、自分の態度や考えを改めようとしないこと。
また、取り付いて容易には取れないこと(頑固な汚れなど)も指します。
「強情」とは、意地を張って、自分の考えを変えないこと。
共通して「他人の意見を受け入れず、自分の考えに固執する」という意味を持ちます。
【意見を曲げない・動かない】頑固さ
どんなに説得されても拒否する、あるいは一度決めたことを貫き通すタイプの言葉です。
文脈によっては「信念が固い」という肯定的な意味でも使われます。
テコでも動かない
てこの原理を使っても動かせないほど、頑として動かないさま。
どんなに周囲が説得しても、決して意見や態度を変えない様子を表す、最も一般的な表現です。
首を縦に振らない(くびをたてにふらない)
頑として承知しないこと。
同意しないこと。
「うん」と頷く動作(首を縦に振る)をしないことから、どれだけ頼んでも頑固に拒否する様子を表します。
頑固一徹(がんこいってつ)
一度決めたことを、非常にかたくなに、最後まで貫き通すこと。
「一徹」は、一つのことを思い込んだら強引に押し通すこと。
職人肌の人など、信念を曲げない姿勢を「ブレない人」として肯定的に評する場合にも使われます。
墨守(ぼくしゅ)
自説や習慣を固く守って変えないこと。
中国の戦国時代、思想家の墨子が、宋の城を楚の攻撃から九度にわたって守り抜いたという『墨子』公輸篇の故事に由来します。
尾生の信(びせいのしん)
融通が利かないこと、馬鹿正直なことのたとえ。
中国の尾生(びせい)という男が、女性と橋の下で会う約束をし、大雨で増水しても約束を守ってその場を動かず、溺れてしまったという故事から。
約束を守る固い意志を示す一方、状況に応じた判断ができない頑固さを揶揄する言葉です。
【人の話を聞かない・独りよがり】な頑固さ
他人のアドバイスを遮断したり、自分の利益ばかりを主張して周りを困らせるタイプの言葉です。
聞く耳を持たない(きくみみをもたない)
相手が言うことを全く聞こうとしないこと。
最初から相手の意見を遮断している、取り付く島もない頑固な態度に対して使われます。
分からず屋(わからずや)
いくら理屈を諭してもわかろうとしない人。
道理が通じない頑固な相手に対する、不満を込めた呼び方です。
剛愎自用(ごうふくじよう)
頑固で、自分の力や知識を頼んで人の意見を聞き入れないこと。
「剛愎」は頑固で人に従わないこと。
「自用」は自分勝手なこと。
独善的なリーダーなどを批判する言葉です。
強情我慢(ごうじょうがまん)
意地っ張りで、我意を張り通すこと。
「我慢」は忍耐のことではなく、仏教用語で「自分を高く見て、他人を軽んじる心(慢心)」を意味します。
我田引水(がでんいんすい)
他人のことは考えず、自分の都合のいいように振る舞うこと。
自分の田んぼにだけ水を引く行為から。
自分の利益のために頑固に主張を曲げない、自己中心的な態度を表します。
【間違いを認めない・へ理屈を言う】頑固さ
プライドが高く、明らかに自分が間違っていても負け惜しみを言って謝らないタイプの言葉です。
漱石枕流(そうせきちんりゅう)
自分の失敗や誤りを認めず、へ理屈を並べて頑固に言い逃れをすること。
負け惜しみが強いこと。
由来は、中国の孫楚(そんそ)という人物が、「石を枕にして流れで口をすすぐ(枕石漱流=隠居生活のこと)」と言うべきところを、うっかり間違えて「石で口をすすぎ、流れを枕にする(漱石枕流)」と言ってしまったことから。
友人に「川なんか枕にできるか」と突っ込まれると、素直に間違いを認めず「川を枕にするのは耳を洗うため、石で口をすすぐのは歯を磨くためだ!」と頑固に言い張ったという逸話です。
(※文豪・夏目漱石のペンネームの由来でもあります)
意地を張る(いじをはる)
自分の考えを無理に押し通そうとすること。
素直になればよい場面でも、負けたくない一心で頑固な態度をとることを指します。
無理が通れば道理引っ込む(むりがとおればどうりひっこむ)
道理に反することが世の中で横行するようになると、正義や正論が行われなくなること。
頑固で話の通じない相手が無理やり我を押し通し、まともな話し合いができなくなってしまう状況を表します。
【へそ曲がり・融通がきかない】頑固さ
性格がねじけていたり、視野が狭くて扱いづらいタイプの言葉です。
へそを曲げる(へそをまげる)
機嫌を損ねて意固地になること。
正当な理由があるというよりは、感情的になってすねている、ひねくれているというニュアンスで使われます。
類語に「つむじを曲げる」があります。
偏屈(へんくつ)
性質が素直でなく、ねじけていること。
単に頑固なだけでなく、ひねくれているというニュアンスが強くなります。
意固地(いこじ)
つまらないことに意地を張り、頑固なこと。
「依怙地」とも書きます。
自分の殻に閉じこもり、かたくなな態度をとる様子を指します。
石頭(いしあたま)
融通がきかず、考え方がかたくなであること。
また、そういう人。
「頑固者」を指して呼ぶ際によく使われます。
文字どおり石のように硬い頭のこともいいます。
石部金吉(いしべきんきち)
極めて生真面目で、融通の利かない人物のたとえ。
「石」と「金」という硬いものを並べて人名のようにした言葉で、江戸時代から使われています。
特に、男女の色恋や遊びに全く関心を示さない堅物をからかう際によく使われます。
頑迷固陋(がんめいころう)
頑固で物の道理に通じておらず、見識が狭いこと。
「頑迷」はかたくなで正しい判断ができないこと。
「固陋」は古い習慣に固執して新しいものを認めないこと。
単に頑固なだけでなく、柔軟な思考ができない愚かさを批判する際に使われるネガティブな言葉です。
狷介孤高(けんかいここう)
自分の意志を固く守り、他人と協調しないこと。
「狷介」は自分の信条を固く守ること。
「孤高」はひとり超然としていること。
俗世から離れて品格を高く保つ態度をいいますが、「狷介」には他人と協調しない頑なさも含まれます。
因循姑息(いんじゅんこそく)
古い習慣にこだわり、その場しのぎの対応に終始すること。
積極的な改革を拒み、現状維持を頑固に続ける消極的な態度を指します。
対義語・柔軟さを表す言葉
「頑固」とは対照的な、柔軟な態度を表す言葉を紹介します。
柳に雪折れなし(やなぎにゆきおれなし)
柔らかくしなやかな柳の枝は、雪が積もってもその重みを上手に受け流すため折れることがない。
堅い木はかえって折れやすいことから、頑固であるよりも、柔軟な心を持っているほうが強靭であり、世の中をうまく渡っていけるという教えです。
融通無碍(ゆうずうむげ)
考え方や行動が何ものにもとらわれず、自由でのびのびとしていること。
どんな事態にも柔軟に対応できるさま。
「融通」は滞りなく通ずること。
「無碍」は妨げがないこと。
臨機応変(りんきおうへん)
その時々の状況の変化に応じて、適切な処置をとること。
あらかじめ決めたルールに固執せず、柔軟に動くこと。
君子は豹変す(くんしはひょうへんす)
徳のある立派な人物(君子)は、過ちに気づけばすぐに態度や考えを改め、良い方向へときっぱり変化するということ。
「豹変」は今日では、節操なく態度を変えることの意味で使われることが多くなっていますが、本来は過ちを改めて善い方向へはっきり変わることをいいます。
『易経』革卦では「小人は面を革む」(小人は顔つきを改めるだけ)と対になっています。
英語表現
「頑固・強情」を英語で表現する場合、以下のような言葉があります。
as stubborn as a mule
- 直訳:ラバのように頑固
- 意味:「非常に頑固な」「テコでも動かない」
- 解説:ラバ(ロバと馬の交雑種)は、一度立ち止まると動かなくなる習性があることから、頑固者の象徴とされます。
- 例文:
He is as stubborn as a mule.
(彼は本当に頑固で、テコでも動かない。)
stick to one’s guns
- 直訳:自分の大砲(銃)に固執する
- 意味:「自分の意見や信念を曲げない」「主張を譲らない」
- 解説:戦闘中に敵に攻め込まれても、持ち場(銃座)を死守したことから。
非難されても自説を曲げない、ポジティブな意味での頑固さや信念の強さを表すことが多い表現です。 - 例文:
She stuck to her guns despite the criticism.
(批判にもかかわらず、彼女は自分の意見を曲げなかった。)
まとめ
「頑固・強情」に関する言葉を紹介しました。
「頑固一徹」のように信念の強さを表す言葉もありますが、「頑迷固陋」や「へそを曲げる」のように、柔軟性の欠如を戒める言葉のほうが圧倒的に多いのが特徴です。
また、間違いを認めない「漱石枕流」のエピソードは、意地を張りそうになった時の自戒として知っておくと面白いでしょう。
自分の芯を持つことは大切ですが、それが単なる「強情」や「偏屈」になっていないか、時折振り返ってみることも必要です。
「柳に雪折れなし」の言葉通り、しなやかさを持つことで、より強く、折れない心を保つことができるでしょう。









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