自分の意見を曲げない強い意志を持つこと、あるいは他人の意見に耳を貸さない様子を「頑固」や「強情」と表現します。
このような性質を表す日本語の表現は数多く存在し、時には意志の強さとして評価される一方で、融通が利かないことへの戒めとしても用いられます。
もくじ
「頑固・強情」に関連する言葉
「頑固」や「強情」というテーマに関連する、主なことわざや慣用句、四字熟語などを紹介します。
「頑固・強情」に関連することわざ
- 意地を通せば仏もそっぽを向く(いじをとおせばほとけもそっぽをむく):
あまりに意地を張り通そうとすると、慈悲深い仏様さえも愛想をつかして顔を背けてしまうという意味。
どんなに正しいと思っていても、頑固に固執しすぎれば周囲の支持を失うという戒めを含んでいます。 - テコでも動かぬ(てこでもうごかぬ):
てこの原理を使っても動かせないほど、頑として動かないさま。
どんな手段や説得を用いても、決して態度や考えを変えないことのたとえ。 - 柳に雪折れなし(やなぎにゆきおれなし):
しなやかな柳の枝は雪の重みでも折れないという意から、柔軟性を持つことの大切さを説くことわざ。
頑固さの対極にある美徳を示す表現として、対比的に覚えておくとよいでしょう。
「頑固・強情」に関連する慣用句
- 意地を張る(いじをはる):
自分の考えや立場を押し通そうとして、頑固になること。
多くの場合、感情的になって譲らない様子を指します。 - 意地を通す(いじをとおす):
頑固に自分の考えや主張を最後まで押し通すこと。
「意地を張る」よりも、より強固に貫く姿勢を表します。 - 我が強い(ががつよい):
自分の意見や考えに固執し、他人の意見を容易に受け入れない性質であること。
自己主張が強く、協調性に欠ける様子を表します。 - 片意地(かたいじ):
頑なに意地を張ること。また、そのさま。
「片」は「偏った」という意味を含み、一方的に自分の考えを押し通そうとする頑固さを指します。 - 石頭(いしあたま):
石のように硬い頭、つまり頑固で融通がきかないこと。
また、そのような人を指す言葉。考えが柔軟でない様子を批判的に表現します。 - へそを曲げる(へそをまげる):
機嫌を損ねて意固地になること。素直に従わず、ひねくれた態度をとること。
身体の中心にあるへそが曲がっているという比喩から、頑固に意地を張る様子を表します。 - つむじを曲げる(つむじをまげる):
機嫌を損ねて、わざと意地悪をしたり、素直に言うことを聞かず逆らったりすること。
つむじ(頭頂部の髪の渦)が曲がっているという比喩から、ひねくれた態度を表します。
「へそを曲げる」と似た意味ですが、どちらかというと目下の者が不機嫌になる場合に使われることが多い表現です。 - 木仏金仏石仏(きぶつかなぶついしぼとけ):
木や金属、石で作られた仏像のように、人情や風流を解さず、感情の動きが見られない人のたとえ。
転じて、頑固で融通がきかない人を指すこともあります。 - 頑として(がんとして):
態度や意志が非常に固く、何があっても変えない様子。
「頑として受け入れない」「頑として譲らない」などの形で使われます。
「頑固・強情」に関連する四字熟語
- 頑固一徹(がんこいってつ):
一度決めたことを、かたくなに最後まで貫こうとする性質や態度。
自分の意見や方針を決して変えようとしないこと。
場合によっては意志の強さとして肯定的に評価されることもあります。 - 強情我慢(ごうじょうがまん):
意地を張って我慢すること。また、頑固でわがままなこと。
自分の主張を通すために無理を重ねる様子を指します。 - 剛愎自用(ごうふくじよう):
頑固で人の意見を聞き入れず、自分の考えだけで物事を行うこと。
「愎(ふく)」は道理に背くという意味を持ち、独善的な態度を批判する言葉です。 - 因循姑息(いんじゅんこそく):
古い習慣や方法に固執し、その場しのぎの対応に終始して、改革や改善を行おうとしないこと。
保守的で決断力に欠ける態度を批判する言葉です。 - 狷介孤高(けんかいここう):
自分の意志や信念を固く守り、世俗と妥協せず、周囲と交わろうとしないこと。
頑固で孤立した様子を表しますが、同時に高潔さや志の高さという肯定的な側面も含みます。 - 我田引水(がでんいんすい):
自分の田んぼにだけ水を引くという意から、物事を自分の都合の良いようにばかり考えること。
自己中心的で頑固な態度の一面を表します。
「頑固・強情」に関連する二字熟語・その他の言葉
- 偏屈(へんくつ):
性質がかたよっていて、素直でないこと。頑固で、ひねくれている様子。
人付き合いが難しい性格を指すことが多い言葉です。 - 一徹(いってつ):
一つのことを貫き通そうとする、頑固な性質。
「○○一徹」という形で、その人の頑固な性格や信念を表現することがあります。 - 強情(ごうじょう):
意地っ張りで、人の言うことを聞かないこと。また、そのさま。
柔軟性を欠き、自分の考えに固執する性質を表します。 - 意地っ張り(いじっぱり):
意地を張る性質。また、そのような人。
負けず嫌いで、簡単には折れない性格を指します。 - 偏狭(へんきょう):
考え方がかたよっていて狭いこと。
視野が狭く、多様な意見を受け入れられない様子を表します。 - 独善(どくぜん):
自分だけが正しいと考え、他人の意見や価値観を認めないこと。
独りよがりで排他的な態度を批判する言葉です。 - 意固地(いこじ):
かたくなに意地を張ること。頑固なさま。「依怙地」とも書きます。
理屈に合わなくても自分の考えに固執する様子を表します。 - 石部金吉(いしべきんきち):
非常に堅苦しく融通の利かない人物のたとえ。「石」と「金」という硬いものを並べて人名のようにもじった言葉で、江戸時代から使われてきた表現です。
生真面目で頑固な人、特に男女の情愛に疎い人を指すことが多く、からかいの意味を込めて使われることもあります。
「頑固・強情」に関連する故事成語
- 墨守(ぼくしゅ):
中国戦国時代の思想家である墨子が、楚の国による宋の国への攻撃を、優れた防御理論で退けたという故事に由来します。
転じて、自説や古い習慣、やり方を頑固に守って変えようとしないことを意味するようになりました。
本来は守り抜く堅固さを示す言葉でしたが、現代では融通の利かなさを批判する文脈で使われることが多くなっています。 - 尾生の信(びせいのしん):
中国春秋時代、魯の国の尾生という男が、女性と橋の下で会う約束をしたところ、大雨で川が増水しても約束の場所を離れず、橋の柱にしがみついたまま溺れ死んだという故事に由来します。
約束を守ることの大切さを示す一方で、状況判断ができず融通が利かないことのたとえとしても使われます。
「頑固・強情」に関連する仏教用語
- 我執(がしゅう):
仏教用語で、自分自身や自分の考え方に固執し、とらわれること。
「我」(自我)への執着を意味し、煩悩の根源とされます。
柔軟な心を妨げ、苦しみを生む原因とされています。
まとめ – 「頑固・強情」に関連する言葉を学ぶ
「頑固」や「強情」に関連することわざ、慣用句、四字熟語などを紹介しました。
これらの言葉には、「意地」「強情」「一徹」「剛」「石」「固」など、かたくなで動じない様子を表す漢字が多く使われています。
中には「頑固一徹」や「狷介孤高」のように、意志の強さや信念を貫く姿勢を肯定的に捉える場合もありますが、多くは「意地を張る」ことへの戒めや、「融通がきかない」ことへの批判的なニュアンスを含んでいます。
「意地を通せば仏もそっぽを向く」ということわざが示すように、頑固さは人間関係や社会生活において障害となることも少なくありません。
一方で「柳に雪折れなし」ということわざが教えるように、柔軟性を持つことで困難を乗り越えられることもあるのです。
自分の信念を持ち、それを貫くことは確かに大切です。
しかし、時には立ち止まって他人の意見に耳を傾ける柔軟さも必要です。
状況に応じて「頑固さ」と「柔軟性」のバランスを取ることが、より良い人間関係と豊かな人生につながるのではないでしょうか。







コメント