四字熟語 故事成語

明哲保身

(めいてつほしん)

聡明で道理に従って物事を処理し、安全に自分の身を保つこと。


7文字の言葉 / 「め」から始まる言葉
明哲保身 ことば
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意味

「明哲保身(めいてつほしん)」とは、道理に従って賢く振る舞い、自分の身を安全に保つことです。

  • 明哲(めいてつ):聡明で、物事の道理をよくわきまえていること。
  • 保身(ほしん):自分の地位や名声、身体の安全を守ること。

もともとは、優れた知恵と判断力によって危険を避け、安泰に生きていくという肯定的な意味(賢明な処世術)を持つ言葉です。
一方で、「保身」の語に引かれて、「自分の身を守るために、あえてリスクを冒さない」といった、保身を優先する態度を皮肉って使われることもあります。

文脈によって褒め言葉にも皮肉にもなるため、解釈には注意が必要です。

語源・由来

「明哲保身」の出典は、中国最古の詩集である『詩経』(しきょう)の大雅(たいが)・烝民(じょうみん)という詩の一節です。

この詩は、周の時代の政治家である仲山甫ちゅうざんぽの徳を称えたもので、その中に次の一節があります。

既明且哲,以保其身。夙夜匪解,以事一人。
(道理に明るく、しかも賢く、そうしてその身を保つ。朝から夜まで怠ることなく、ただ一人の王に仕える。)

仲山甫が道理に明るく聡明で、その身を全うしながら王に仕えていることをたたえた句です。

詩の中の「身を保つ」は、朝から夜まで怠らずに王に仕える姿と並べて詠まれています。
元々は、立派な人物をたたえる言葉でした。

使い方・例文

「明哲保身」は、現代では主にビジネスや組織内での「立ち回り」を表現する際によく使われます。
「リスクを避ける消極的な態度」や「自分さえ良ければいいという姿勢」を批判する文脈でも用いられます。

例文

  • かつて改革派だった彼も、出世後は明哲保身の術を身につけ逆らわなくなった。
  • この不況下では無謀な挑戦より、明哲保身に徹して生活を守るのが先決だ。
  • 面倒なトラブルに関わるとろくなことがないので、ここは明哲保身といこう。
  • 彼女の行動は明哲保身そのもので、リスクのある役回りには決して手を挙げない。

誤用・注意点

この言葉を「他人への褒め言葉」として使う場合は、細心の注意が必要です。

本来の意味(賢明さ)を知っている人に対してなら問題ありませんが、「保身」の語から悪い意味に受け取る人もいます。
そのため、「あなたは明哲保身ですね」と言うと、「保身ばかり考えている人ですね」という皮肉として受け取られ、相手を不快にさせることがあります。
本人や、勇敢に行動している人に対しては使わないほうが無難です。

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類義語・関連語

「明哲保身」と似た意味を持つ言葉には、危険を避ける知恵や、消極的な態度を表すものがいくつかあります。

  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
    教養があり徳のある人は、身を慎んで危険な場所や行為には近づかないということ。
  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
    余計な手出しをしなければ、災いを招くことはないという教え。
  • 事なかれ主義(ことなかれしゅぎ):
    平穏無事であることを第一とし、問題があっても波風を立てないようにする態度。
  • 長いものには巻かれろ(ながいものにはまかれろ):
    勢力のある人や目上の人には、逆らわずに従っているほうが得策であるということ。
  • 知らぬ顔の半兵衛(しらぬがおのはんべえ):
    知っていながら、知らないふりをしてすますこと。

対義語

「明哲保身」とは対照的な意味を持つ言葉は、自分の身を顧みずに目的を遂行する姿勢を表します。

  • 殺身成仁(さっしんせいじん):
    自分の身を犠牲にしてでも、仁(正義や道徳)を成し遂げること。
  • 粉骨砕身(ふんこつさいしん):
    骨を粉にし、身を砕くほどに、力の限り努力すること。
  • 火中の栗を拾う(かちゅうのくりをひろう):
    自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すこと。
  • 捨て身(すてみ):
    自分の命や身の上を投げ出して物事にあたること。

英語表現

「明哲保身」を英語で表現する場合、状況によってポジティブな表現とネガティブな表現を使い分けます。

play it safe

直訳は「安全策をとる」「大事をとる」で、リスクを冒さず確実な道を選ぶというニュアンスの、日常的に最もよく使われる表現。

He decided to play it safe and not invest in the risky stock.
(彼は明哲保身を決め込み、その危険な株には投資しないことにした。)

save one’s own skin

直訳は「自分の身を守る」で、自分だけが助かろうとするという利己的なニュアンスが強く、「保身」の訳として適した表現。

He lied to save his own skin.
(彼は保身のために嘘をついた。)

明哲保身とたたえられた仲山甫は強い者を恐れなかった

『詩経』烝民で「明哲保身」の句をささげられた仲山甫ちゅうざんぽは、同じ詩の中で次のようにも詠まれています。

人亦有言:柔則茹之,剛則吐之。維仲山甫,柔亦不茹,剛亦不吐;不侮矜寡,不畏彊禦。
(世の人は、柔らかければ食べ、硬ければ吐き出すと言う。だが仲山甫は、柔らかくても食べず、硬くても吐き出さない。身寄りのない弱い者を侮らず、強く横暴な者を恐れない。)

詩の終わりでは、王の命を受けて東方に城を築くため、斉の地へ出向く仲山甫の姿も詠まれています。
「身を保つ」とたたえられた人物は、相手の強弱で態度を変えず、遠方の務めも引き受ける人として描かれています。

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