意味
「有口無行(ゆうこうむこう)」とは、言葉では立派なことを語っても、それに見合う行動がまったく伴わないことです。
言葉だけは一人前であっても、実際の行動が全く追いついていない人物や態度を批判的に表現する際に使われます。
- 有口(ゆうこう):口があること。転じて、言葉を巧みに操ること。
- 無行(むこう):行いがないこと。実行が伴わないこと。
「言うだけなら誰でもできる」という戒めのニュアンスが含まれており、信頼を損なう代表的な振る舞いとして語られます。
語源・由来
「有口無行」の出典は、中国の歴史書『後漢書』の史弼伝にあります。
後漢の史弼が、桓帝の弟である渤海王劉悝の取り巻きを、口先ばかりで行いが伴わない者たちと評した言葉です。
使い方・例文
「有口無行」は、個人の性格を評する場合や、具体的な行動を促す際の警告として用いられます。
単に「嘘つき」と言うよりも、その人の「責任感の欠如」や「口の巧さ」に焦点を当てた、少し硬い表現になります。
例文
- 彼はいつも壮大な夢を語るが、結局何も始めない有口無行な男だ。
- 有口無行と言われないよう、まずは身近な目標から確実に実行していく。
- 「宿題をやる」と言いながらゲームばかりしているのは、まさに有口無行だ。
- リーダーたる者が有口無行では、誰一人としてついてきてはくれない。
誤用・注意点
「有口無行」は基本的にネガティブな評価として使われる言葉です。
そのため、本人に直接使うのは極めて失礼にあたります。
また、この言葉はあくまで「口では立派なことを言っている」ことが前提です。
最初から何も言わずに何もしない人や、単に能力が足りなくて失敗した人に対して使うのは、本来の意味から外れます。
類義語・関連語
「有口無行」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 巧言令色(こうげんれいしょく):
言葉を飾り、顔色を和らげて人にへつらうこと。 - 舌先三寸(したさきさんずん):
言葉巧みに人をだましたり、表面だけ取り繕ったりすること。 - 花言巧語(かげんこうご):
うわべを飾り立てた、中身のない言葉。 - 口自慢の仕事下手(くちじまんのしごとべた):
しゃべるのは得意だが、実際の仕事の手際は悪いこと。
対義語
「有口無行」とは対照的な意味を持つ言葉は、誠実さを象徴するものばかりです。
- 言行一致(げんこういっち):
口で言ったことと、実際の行動が矛盾なく合っていること。 - 有言実行(ゆうげんじっこう):
口に出したことを、責任を持って必ず実行に移すこと。 - 不言実行(ふげんじっこう):
あれこれ口に出さず、黙ってなすべきことを実行すること。
英語表現
「有口無行」を英語で表現する場合、行動と言葉の対比を用いた慣用句がよく使われます。
All talk and no action
「口先だけで実行が伴わない」という意味を表す、最も一般的で「有口無行」のニュアンスに非常に近い口語表現。
He is all talk and no action when it comes to chores.
(家事のこととなると、彼は有口無行だ。)
Great talkers are little doers
「口の達者な者は、実行が伴わないものである」という意味を表す英語圏のことわざで、おしゃべりな人は実際の行動力が乏しいということを表す。
As the saying goes, great talkers are little doers.
(ことわざにある通り、口の達者な者は実行が伴わないものだ。)
有口無行は渤海王の取り巻きを評した言葉
「有口無行」は、『後漢書』史弼伝に載る、史弼が桓帝に差し出した意見書の中の言葉です。
桓帝の弟の渤海王劉悝は日頃から行いが悪く、おごって法を守らないことが多かったため、史弼は反乱を恐れ、劉悝の身辺を次のように書きました。
外聚剽輕不逞之徒,內荒酒樂,出入無常,所與羣居,皆有口無行
(外では荒々しく不満を抱く者たちを集め、内では酒と音楽にふけり、出入りも定まらない。ともに群れ集う者は、みな口先ばかりで行いが伴わない。)
桓帝は弟であることを理由に、この訴えを取り上げませんでした。
のちに劉悝は謀反の罪に問われ、癭陶王に格下げされています。











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