無礼講

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慣用句 三字熟語 故事成語
無礼講
(ぶれいこう)

5文字の言葉ふ・ぶ・ぷ」から始まる言葉
無礼講 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

立場や肩書き、日々のしきたりといった重圧から解き放たれ、一人の人間として対等に向き合う瞬間があります。
張り詰めた緊張を緩め、互いの本音で語り合えるその席の始まりを告げる言葉が、
「無礼講」(ぶれいこう)です。

意味・教訓

「無礼講」とは、身分や地位の上下を気にせず、形式的な作法を抜きにして楽しむ宴会や集まりを意味します。
特に、目上の人が部下や後輩に対して「今日は堅苦しい挨拶や礼儀はなしにしよう」と促す際に使われる言葉です。

この言葉は以下の二つの要素で構成されています。

  • 無礼(ぶれい):礼儀を欠くという意味ではなく、ここでは「形式的な礼法を省く」ことを指します。
  • (こう):もともとは仏教の説法や、共通の目的を持つ人々の集まりを意味します。

単に「何をしても良い」と放縦を勧めるものではなく、本来は形式という壁を取り払い、真の親睦を深めることを目的としています。

語源・由来

「無礼講」の語源は、神事の後に行われる「直会(なおらい)」という宴の形式にあります。
神前での厳格な儀式を終えた後、供え物を共に食して緊張を解く場において、儀礼的な「礼」を簡略化した集まりが「無礼の講」と呼ばれました。

歴史的に有名なのは、鎌倉時代末期の後醍醐天皇(ごだいごてんのう)によるものです。
天皇は鎌倉幕府を倒すための密議を隠すため、身分を伏せて酒を酌み交わす「無礼講」の宴を頻繁に催しました。
身分制度が絶対的だった時代に、あえて法衣や兜を脱ぎ捨てて対等に語り合う場を設けることで、監視の目を欺きながら志を同じくする者たちとの結束を固めたのです。

使い方・例文

「無礼講」は、職場の慰労会、地域のお祭り、サークルの打ち上げなど、立場や年齢が異なる人々が集まる場面で用いられます。
「上下関係を忘れて」という意味で使われますが、あくまで「親睦のための寛容さ」を示す言葉です。

例文

  • 今夜は無礼講ですから、遠慮せずに本音を語り合いましょう。
  • 監督の「今日は無礼講だ」という一言で、チームに笑顔が戻りました。
  • 町内会の慰労会は無礼講となり、世代を超えて盛り上がりました。

『太平記』での使用例

軍記物語の傑作として知られる『太平記』には、後醍醐天皇が密議のために設けた「無礼講」の様子が詳しく描かれています。

『太平記』(作者不詳)

後醍醐天皇を中心とした「無礼講」の席で、身分の上下を捨て、花を飾り、音楽を奏でて酒を酌み交わす情景が描写されています。

衆徒・凡下も其の座に混じり、皆其の礼を捨てて無礼講とぞ号しける。

誤用・注意点

「無礼講」を「何をしても許される場」と解釈し、実際に相手を侮辱するような「無礼」な態度を取ることは、明らかな誤用でありマナー違反です。

この言葉が許容するのは、あくまで「形式的な作法の省略」であって、相手への敬意まで捨てることではありません。
特に、ハラスメントにあたる言動や飲酒の強要などは、たとえ「無礼講」の席であっても決して許されない行為です。
「礼儀を抜きにする」ことと「失礼を働く」ことの境界線をわきまえることが、真の親睦には欠かせません。

類義語・関連語

「無礼講」と似たニュアンスを持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • ざっくばらん
    遠慮がなく、ありのままの気持ちをさらけ出す様子。

対義語

「無礼講」とは対照的な、形式や礼儀を非常に重んじる様子を表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 格式張る(かくしきばる):
    形式や身分、しきたりなどを重んじて、堅苦しい様子。

英語表現

「無礼講」の「形式を抜きにしてリラックスする」というニュアンスを英語で表現する場合、以下の慣用句が適切です。

Let one’s hair down

意味:髪をほどいてリラックスする、くつろいで楽しむ

  • 例文:
    The party is informal, so please let your hair down.
    今日は無礼講ですから、どうぞくつろいでください。

まとめ

「無礼講」は、形式的な壁を取り払い、心と心を通わせるための合図です。
礼儀を重んじることは社会生活の基本ですが、時には肩書きを脱ぎ捨てて語り合うことで、初めて生まれる信頼関係があります。

相手への敬意を根底に持ちながらも、共に笑い合える時間を大切にすること。
それは、硬直しがちな人間関係に柔らかな潤いをもたらし、より豊かなつながりを育んでくれるのではないでしょうか。

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