意味
「空々寂々(くうくうじゃくじゃく)」とは、この世のものは形があってもなくても、すべて空であるという意味です。
もとは仏教の語で、空は、あらゆる物事に固定した実体がないという考え方を指します。
そこから、何物にもとらわれず、無心である様子も表し、さらに転じて、物事に反応を示さず、関心を持たない様子にも使います。
また、辺りがひっそりと静まりかえっている様子を表すこともあります。
語源・由来
この言葉は、仏教の語「空寂(くうじゃく)」の「空」と「寂」を、それぞれ二つずつ重ねて意味を強めた語です。
「空寂」は、すべての物事には実体がなく、その本性は空であるということや、それを悟って煩悩や執着を離れた無心の境地を表します。
使い方・例文
「空々寂々たる」「空々寂々として」の形で、様子を表す語としても使います。
- 住職は、座禅を組んで空々寂々の境地に近づくことを目指していると語った。
- 夜更けの山寺は物音一つなく、空々寂々として静まりかえっていた。
- 父は家のことには空々寂々で、何を相談しても生返事しか返ってこない。
類義語・関連語
何物にもとらわれない心や、すべては空であるという考えを表す語には、次のようなものがあります。
寺田寅彦は、年老いた飼い猫を「空々寂々」と書いた
物理学者で随筆家の寺田寅彦は、随筆『備忘録』(1927年)の「猫の死」の章で、飼い猫の「玉」をこの語で言い表しています。
玉は、子猫のころは家族にかわいがられた雌猫「三毛」の遊び相手でしたが、二匹とも年を取ってからは用のない猫として扱われるようになりました。
そのころの玉の様子が、次のように書かれています。
もちろんそれに不平らしい顔もなく、空々寂々として天命を楽しんでいるかのようにも思われた。
(寺田寅彦『備忘録』1927年)
扱いが変わっても不満を見せず、何物にもとらわれずに暮らす猫の姿を「空々寂々として」と表しています。

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