意味
「読書亡羊(どくしょぼうよう)」とは、目の前の務めを忘れて別のことに夢中になり、守るべきものを失ってしまうという意味です。
夢中になっていたのが読書のような良いことであっても、務めを怠った点では遊びに気を取られたのと変わらない、という含みがあります。
「亡羊」は、逃げて見失った羊のことです。
語源・由来
この言葉は、中国の古典『荘子』の駢拇篇にある話から生まれました。
臧と穀という二人の召使いが一緒に羊の番をしていて、二人とも羊を逃がしてしまいます。
何をしていたのかと聞くと、臧は書物を抱えて読書をしており、穀は博打をして遊んでいました。
その場面を語る、次の一節が由来です。
臧與穀,二人相與牧羊,而俱亡其羊。問臧奚事,則挾筴讀書;問穀奚事,則博塞以遊。二人者,事業不同,其於亡羊,均也。
(臧と穀の二人が一緒に羊を飼っていたが、二人ともその羊を逃がした。臧に何をしていたのかと問うと、書物を抱えて読んでいたという。穀に何をしていたのかと問うと、博打をして遊んでいたという。二人の仕事は違っても、羊を逃がした点では同じである。)

使い方・例文
- 店番をしながら参考書を読んでいて、客が来たのに気づかなかった。読書亡羊である。
- 資格の勉強に熱中して本業の締め切りを落とすのは、読書亡羊というものだ。
- 趣味の研究も悪くないが、読書亡羊にならないよう頼まれた用事は先に済ませる。
関連語
「亡羊」を含む四字熟語には、別の故事から生まれたものもあります。
- 多岐亡羊(たきぼうよう):
道が幾筋にも分かれていて、どれを選べばよいか迷うたとえ。『列子』にある別の話が由来で、逃げた羊を分かれ道で見失う場面から。 - 亡羊補牢(ぼうようほろう):
羊に逃げられてから囲いを直すこと。『戦国策』の故事から。
荘子、伯夷と大盗賊を「同じ」と見る
『荘子』では、羊の話のすぐ後に、もう一組の二人が並べられます。
名誉のために首陽山のふもとで死んだ伯夷と、財貨のために死んだ大盗賊の盗跖です。
世間は伯夷を立派な人、盗跖をつまらない人と呼び分けますが、荘子は、命を損なった点では二人とも同じだと述べています。
読書と博打を同じに扱った羊の話は、立派な目的でも、それに身を捧げて自分を損なえば悪人と変わらない、という主張の前置きとして置かれています。



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