羊が逃げてしまった後でも、囲いを直せば同じ過ちを防げる、そんな失敗からの立て直しの姿勢を表すのが、「亡羊補牢」(ぼうようほろう)です。
意味
亡羊補牢とは、一度失敗をしても、その時点ですぐに対策を講じれば、それ以上の損害を防げるという意味です。
手遅れだと諦めず、今からでも行動する大切さを説いた言葉です。
- 亡羊(ぼうよう):羊が逃げてしまうこと。
- 補牢(ほろう):家畜小屋の壊れた部分を直すこと。
語源・由来
「亡羊補牢」は、中国の『戦国策』楚策に記された故事に由来します。
楚の襄王に仕えた荘辛は、王が寵臣に溺れて国政を顧みない様子を諫めましたが聞き入れられず、趙の国へ去りました。
その後、秦の侵攻を受けた襄王は荘辛を呼び戻し、立て直しの策を求めます。
荘辛はそこで、「兎を見てから猟犬を放っても遅くはなく、羊が逃げてから囲いを直しても遅くはない」(見兎而顧犬未為晩也、亡羊而補牢未為遅也)と説き、この一節が今からでも手を打てば間に合うという教えとして後世に伝わりました。
使い方・例文
亡羊補牢は、失敗の直後にすぐ対策を講じる場面で使われます。
- 一度目のミスを教訓に体制を見直すのは、亡羊補牢の考え方に沿っている。
- 遅すぎたと嘆く前に、亡羊補牢の精神で次の一手を打つべきだ。
- 失った信用も、亡羊補牢の姿勢で少しずつ取り戻していった。
対義語
反対に、対策を講じる機会をすでに失ってしまった状況を表す言葉には、次のようなものがあります。
- 後の祭り(あとのまつり):
時機を逃し、今さら何をしても効果がないこと。
英語表現
- It’s never too late to mend:
改善するのに遅すぎるということはない。 - Better late than never:
やらないよりは遅くてもやったほうがよい。
「牢」の字が語る、羊と檻の関係
現代の日本語で「牢」といえば囚人を閉じ込める「牢屋」を連想しますが、もともとの意味は家畜を囲う柵や小屋のことでした。
「亡羊補牢」の「牢」も、羊を逃がさないための囲いを指しています。
時代が下るにつれて、家畜を閉じ込める場所から人を閉じ込める場所へと、字の意味の重心が移っていったと考えられます。
一つの漢字の意味の変化をたどるだけでも、社会の中で何が「囲うべきもの」とされてきたかが見えてきます。









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