私たちの周りには、小さな虫や昆虫がたくさん生息しています。時に厄介者扱いされることもありますが、その生態や特徴は、古くから人々の暮らしや文化に影響を与え、様々な言葉を生み出してきました。
今回は、日常会話や文章でも使える、「虫・昆虫」に関係する有名なことわざ、慣用句、故事成語を集め、意味とともにご紹介します。

「虫・昆虫」に関することわざ
(主に教訓や風刺、昔からの言い伝えを含む短い句)
- 飛んで火に入る夏の虫(とんでひにいるなつのむし):
明るい光に誘われて虫が火の中に飛び込むように、自ら進んで危険や災難の中に飛び込んでいくことのたとえ。 - 一寸の虫にも五分の魂(いっすんのむしにもごぶのたましい):
どんなに小さく弱い者にも、それ相応の意地や思慮分別があるのだから、侮ってはならないというたとえ。 - 虻蜂取らず(あぶはちとらず):
アブもハチも両方捕まえようと欲張り、結局どちらも捕まえられないことから、二つのものを同時に得ようとして、どちらも失敗することのたとえ。 - 泣きっ面に蜂(なきっつらにはち):
泣いている顔をさらに蜂に刺されるように、困っている状況の上に、さらに不幸や災難が重なることのたとえ。「弱り目に祟り目」。 - 蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき):
苦い蓼を好んで食べる虫がいるように、人の好みは様々で、一概には言えないということのたとえ。 - 蟻の穴から堤も崩れる(ありのあなからつつみもくずれる):
蟻が開けた小さな穴が原因で、頑丈な堤防も崩れることがあるように、ほんの些細な油断や不注意が、大きな失敗や損害を引き起こす原因となることのたとえ。
「虫・昆虫」に関する慣用句
(二語以上の語が結びつき、特定の意味を持つ定型的な言い回し)
- 虫の知らせ(むしのしらせ):
科学的な根拠はないが、なんとなく良くないことが起こりそうな予感がすること。 - 蜂の巣をつついたよう(はちのすをつついたよう):
大勢の人が一斉に騒ぎ出し、収拾がつかなくなる様子のたとえ。 - 虫の息(むしのいき):
虫のように弱々しく、今にも絶えそうな呼吸。瀕死の状態にあること。 - 蝉の殻(せみのから):
人が去った後、何も残っていない場所や、中身がなく空虚であることのたとえ。もぬけの殻。 - 蚊の鳴くような声(かのなくようなこえ):
力がなく、非常に細く小さい声のたとえ。 - 虫がいい(むしがいい):
自分の都合ばかりを考え、身勝手な要求をしたり、他人のことを考えなかったりすること。ずうずうしいさま。 - 蝶よ花よ(ちょうよはなよ):
親が娘を蝶や花のように大切にし、苦労を知らないように美しく育てる様子。 - 虫が好かない(むしがすかない):
はっきりした理由はないが、なんとなく気に入らない、好感が持てないこと。 - 腹の虫がおさまらない(はらのむしがおさまらない):
怒りや不満がこみ上げてきて、どうしても我慢できない様子。非常に腹立たしいさま。 - 蜘蛛の子を散らすよう(くものこをちらすよう):
蜘蛛の子が驚いて一斉に散るように、大勢の人がまとまりなく、ばらばらに逃げていく様子のたとえ。 - 蜻蛉返り(とんぼがえり):
体を空中で回転させること。宙返り。また、目的地に着いてすぐに用事を済ませ、引き返すこと。
「虫・昆虫」に関する故事成語
(中国の古典や歴史的な出来事に由来する言葉)
- 蟷螂の斧(とうろうのおの):
カマキリが前足(斧)を振り上げて大きな車輪に向かっていくように、自分の弱さを顧みず、到底かなわない強敵に立ち向かうことの無謀さのたとえ。 - 獅子身中の虫(しししんちゅうのむし):
獅子の体内に寄生して獅子を死に至らせる虫のように、味方の内部にいながら、組織に害を与える者や、恩を仇で返す者のたとえ。
(仏教説話に由来) - 蛍雪の功(けいせつのこう):
苦しい環境に負けず、蛍の光や窓の雪明りで勉強し、苦労して学問を成し遂げること。その努力の成果。
(中国の故事に由来) - 夏の虫氷を笑う(なつのむしこおりをわらう):
夏にしか生きられない虫が冬の氷の存在を知らずに笑うように、自分の狭い知識や経験にとらわれ、より広い世界や見識を理解できずにいることのたとえ。
(『荘子』より)
まとめ
虫や昆虫にまつわる言葉には、その小さな体や生態から、人間の弱さ、意地、愚かさ、あるいは努力といった様々な側面が映し出されています。
「一寸の虫にも五分の魂」のように励まされる言葉もあれば、「飛んで火に入る夏の虫」のように自らを戒める言葉もあります。
これらの表現を知ることで、日本語の多様な比喩表現に触れることができます。
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