意味
「下問を恥じず(かもんをはじず)」とは、自分より年齢や地位が下の人に対して、分からないことを質問したり教えを請うたりするのを恥とは思わないという意味です。
見栄を捨てて、誰からでも素直に学ぼうとする姿勢をほめる言葉です。
語源・由来
中国・春秋時代の思想家である孔子の言行録『論語』公冶長篇に記された言葉です。
孔子が、衛の国の家臣であった孔圉(死後の名は孔文子)の学ぶ姿勢を評した言葉に由来します。
使い方・例文
「下問を恥じず」は、経験豊富な人物が後輩や初心者に率直に意見を求める状況や、立場にとらわれない素直な学び方を勧めたりほめたりする場面で使われます。
- 社長は下問を恥じず、売り場の様子を入社したての店員に細かく尋ねて回った。
- 熟練の職人が、最新のデジタル技術について新入社員に下問を恥じず教えを請うた。
- 部長は下問を恥じず、分からない操作があると新人にもすぐ聞く。
類義語・関連語
「下問を恥じず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 不恥下問(ふちかもん):
「下問を恥じず」の元になった『論語』の原文の四字。 - 虚心坦懐(きょしんたんかい):
心にわだかまりを持たず、素直でさっぱりとした心境。
「下問を恥じず」と「虚心坦懐」の違い
| 比較項目 | 「下問を恥じず」 | 「虚心坦懐」 |
|---|---|---|
| ニュアンス | 「質問する・学ぶ」という具体的行動 | 「受け入れる」という内面的な状態 |
| 使う場面 | 他者から知識を得ようとする時 | 偏見なく意見を聞き入れる時 |
対義語
「下問を恥じず」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 知ったかぶり(しったかぶり):
本当は知らないのに、いかにも知っているかのように振る舞う態度。 - 唯我独尊(ゆいがどくそん):
この世で自分だけが優れていると思い上がる状態。
英語表現
not ashamed to ask and learn of his inferiors
『論語』のジェームズ・レッグによる英訳で、「不恥下問」に当てられた表現。
He was of an active nature and yet fond of learning, and he was not ashamed to ask and learn of his inferiors!
(利発でありながら学問を好み、目下の者に問い学ぶことを恥じなかった。)
孔子が素行の悪い家臣にも認めた「下問を恥じず」
「下問を恥じず」は、弟子の子貢が、孔圉がなぜ「文」という諡(死後に贈られる名)で呼ばれるのかを尋ねたときの、孔子の答えの中にあります。
子貢問曰:「孔文子,何以謂之文也?」子曰:「敏而好學,不恥下問,是以謂之文也。」
(子貢が「孔文子はなぜ文と呼ばれるのですか」と尋ねると、孔子は「利発で学問を好み、目下の者に問うことを恥じなかった。だから文と呼ぶのだ」と答えた。)
子貢がわざわざ尋ねたのには訳があります。
『春秋左氏伝』などによれば、孔圉は、衛の大夫の太叔疾に妻を離縁させて自分の娘を嫁がせ、疾が前の妻の妹と通じると怒って攻めようとした人物でした。
このとき相談を受けた孔子は答えず、馬車を用意させて立ち去っています。
南宋の儒学者・朱熹の『論語集注』は、そんな人物が立派な「文」の名を得たので子貢は疑って尋ねたのだ、という読みを引いています。
孔子は孔圉の人柄には触れず、学問を好み、目下の者にも問うたという点だけを挙げて答えました。
朱熹は、頭の回る人は学問を好まないことが多く、地位の高い人は目下に問うのを恥じることが多いので、それができるのは得がたいことだと説明しています。













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