下問を恥じず

ことわざ 故事成語
下問を恥じず(かもんをはじず)

7文字の言葉か・が」から始まる言葉
スポンサーリンク

「知らないことを聞くのは、なんだか恥ずかしい」そう感じた経験はありませんか?
特に、相手が自分より年下だったり、立場が下だったりすると、ためらってしまうこともあるかもしれません。

下問を恥じず(かもんをはじず)」は、まさにそうした状況で思い出したい、謙虚な学習姿勢の大切さを説く言葉です。この言葉は、知識や地位に関わらず、知らないことは誰にでも素直に尋ねるべきであるという教訓を含んでいます。

「下問を恥じず」の意味・教訓

「下問を恥じず」とは、自分より年齢や地位、知識が下の人に物事を尋ねることを、決して恥ずかしいと思ってはいけない、という意味の故事成語です。

  • 下問(かもん):自分より目下の人に問い尋ねること。
  • 恥じず:恥ずかしいと思わないこと。

この言葉の核心にある教訓は、「真の知を求める姿勢に、相手の地位や年齢は関係ない」ということです。自分のプライドや体面を守ることよりも、知らないことを知ろうとする謙虚な向上心こそが尊い、と教えています。

「下問を恥じず」の語源

この言葉の出典は、中国の古典『論語』の「公冶長(こうやちょう)篇」にある、孔子(こうし)とその弟子・子貢(しこう)とのやり取りにあります。

衛(えい)の国の「孔文子(こうぶんし)」という人物が亡くなった際、なぜ彼が「文」という立派な諡(おくりな:死後に贈られる名前)を与えられたのかと子貢が尋ねました。
孔子は「敏(びん)にして学を好み、下問を恥じず。是(これ)を以(もっ)て之(これ)を文と謂(い)うなり(聡明で学問を好み、目下の人に問うことを恥じなかった。だから『文』というのだ)」と答えました。

孔文子が賢いとされ「文」と称えられた理由は、彼が謙虚に誰からでも学ぼうとする姿勢(下問を恥じず)を持っていたからだ、と孔子は説明したのです。

論語 - Wikipedia

「下問を恥じず」の使い方と例文

「下問を恥じず」は、現代でも学習や仕事の場面で、謙虚な姿勢や向上心を称賛したり、促したりする文脈で使われます。
ベテランが新人に操作方法を尋ねたり、上司が部下に現場の意見を求めたりするような、固定観念にとらわれず学ぶ姿勢を示す際にぴったりの言葉です。

例文

  • 「ベテランの彼が、新入社員に最新ツールの使い方を尋ねる姿は、まさに下問を恥じずの精神だ。」
  • 「社長は下問を恥じずを実践し、現場の若いスタッフの意見にも熱心に耳を傾ける。」
  • 「分からないことは、たとえ後輩であっても下問を恥じずの態度で尋ねるべきだ。」

類義語・関連語

「下問を恥じず」と似た、謙虚に学ぶ姿勢を示す言葉を紹介します。

  • 虚心坦懐(きょしんたんかい):
    心に何のわだかまりもなく、さっぱりとして素直な心で物事に取り組む様子。
  • 教えを乞う(おしえをこう):
    自分より優れた人に、指導や教えを求めること。
  • 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
    知らないことを聞くのはその場では恥ずかしいかもしれないが、聞かずに知らないままでいるのは一生の恥となる、ということ。

対義語

「下問を恥じず」とは反対に、自分の知識や能力を過信し、他人の意見を聞かないような態度を示す言葉です。

  • 自画自賛(じがじさん):
    自分で自分のことをほめること。他者から学ぶ姿勢とは対極にある。
  • 独善(どくぜん):
    自分だけが正しいと信じ、他人の意見を受け入れないこと。
  • 唯我独尊(ゆいがどくそん):
    世界で自分だけが優れているとうぬぼれること。
  • 問うに落ちず語るに落ちる(とうにおちずかたるにおちる):
    人に尋ねられても秘密を守るが、自分から得意になって話すうちにうっかり秘密を漏らしてしまうこと。直接的な対義語ではないが、謙虚さの欠如が失敗につながる例。

英語での類似表現

「下問を恥じず」の精神に近い英語表現を紹介します。

Don’t be afraid to ask questions.

  • 意味:「質問することを恐れるな。」
  • 解説:「下問」というニュアンス(目下に聞く)までは含みませんが、知らないことを積極的に尋ねるべきだ、という教訓として広く使われます。
  • 例文:
    Remember, don’t be afraid to ask questions if you don’t understand.
    (分からなかったら、質問することを恐れないでくださいね。)

There is no such thing as a stupid question.

  • 意味:「愚かな質問などというものはない。」
  • 解説:どんな些細な質問や、初歩的に思える質問でも、それを「愚かだ」とか「恥ずかしい」と思う必要はない、という意味の慣用句です。質問をためらう人への励ましとして使われます。
  • 例文:
    Feel free to interrupt me. There is no such thing as a stupid question.
    (遠慮なく(話を)遮ってください。愚かな質問なんてありませんから。)

まとめ – 「下問を恥じず」の精神を日常に

「下問を恥じず」は、2000年以上前の孔子の言葉ですが、その教えは現代社会においても非常に重要です。

情報が溢れ、変化の速い現代では、年齢や経験に関わらず、誰もが常に学び続ける必要があります。ベテランが持つ知恵もあれば、若者が持つ新しい視点や技術もあります。

「こんなことを聞いたら、馬鹿にされるかもしれない」という小さなプライドは、時として私たちの成長を妨げる「恥」となり得ます。

「下問を恥じず」の精神は、自分より目下の人に聞くことだけでなく、自分の「知らない」という事実を素直に認め、知を得るためなら誰に対しても謙虚であることの大切さを教えてくれます。

スポンサーリンク

コメント