「偕老同穴」は、結婚式や金婚式のお祝いなどで、夫婦の絆の固さを称える際によく使われる四字熟語です。
「生きては共に老い、死しては同じお墓に入る」という言葉通り、生涯を共にし、死後も離れないという夫婦の深い愛情を表しています。
「偕老同穴」の意味
夫婦の仲が非常によく、生きては共に老いるまで連れ添い、死んでからは同じ墓(穴)に入ろうとする固い契りのこと。
この言葉は、4つの漢字それぞれに深い意味が込められています。
- 偕(かい):一緒に、ともに。「偕(とも)に」と読みます。
- 老(ろう):年をとる、老いる。
- 同(どう):同じ。
- 穴(けつ):墓穴(はかあな)。
つまり、「生きている間は一緒に年を重ねていき、死んだ後も同じお墓に入りましょう」という、生と死を超えた夫婦の強い結びつきを表しています。
「偕老同穴」の語源・由来
この言葉の出典は、中国最古の詩集である『詩経(しきょう)』です。
紀元前の中国で、戦地へ赴いた夫を思う妻、あるいは妻を思う夫の心情を詠んだ詩の中に、この言葉が登場します。
「死生契闊(しせいけいかつ)、与子成説(子と説を成す)。執子之手(子の手を執り)、与子偕老(子と偕に老いん)」
(死ぬも生きるも一緒だと、あなたと誓い合った。あなたの手を取って、あなたと共に老いていこう)
さらに別の詩には、「死しては即ち穴を同じくせん(死んだら同じ墓に入ろう)」という一節があり、これらが組み合わさって「偕老同穴」という四字熟語になりました。
不思議な生き物「カイロウドウケツ」
実は、この四字熟語と同じ名前を持つ、実在の深海生物がいます。
カイロウドウケツ(海綿動物門)は、ガラス質の繊維でできた網目状の美しい姿をしており、その美しさから欧米では「ヴィーナスの花籠(はなかご)」とも呼ばれています。
なぜ「偕老同穴」なのか?
このカイロウドウケツの中には、「ドウケツエビ」という小さなエビが、オスとメスの一対(ペア)で住み着く習性があります。
幼生の頃に入り込んだ2匹のエビは、中で成長すると体が大きくなって網目から出られなくなり、一生をその中で共に過ごし、死ぬまで添い遂げます。
「死ぬまで一緒」というこのエビの姿が、まさに「偕老同穴」の意味そのものであるため、この生物は結婚のお祝いとして贈られることもある縁起物となっています。

「偕老同穴」の使い方・例文
主に結婚式のスピーチや祝辞、銀婚式・金婚式など、夫婦の絆を祝うおめでたい場面で使われます。
例文
- お二人が偕老同穴の契りを結び、温かい家庭を築かれることを祈念いたします。
- 喧嘩もするけれど、両親はまさに偕老同穴、理想の夫婦だ。
- 偕老同穴を誓った妻に先立たれ、寂しさは募るばかりだ。
使用上の注意点
- 読み方:「かいろうどうけつ」です。「どうあな」とは読みません。
- 対象:原則として「夫婦」に対してのみ使います。親子や友人、恋人同士には使いません。
- 重み:「死」を意識させる言葉でもあるため、単に「仲が良いですね」という軽いニュアンスよりも、人生を共にする覚悟や、長い年月を連れ添った重みを表現する際に適しています。
「偕老同穴」の類義語
夫婦の仲が良いことを表す言葉は他にもあります。
- 比翼連理(ひよくれんり):
「比翼の鳥」と「連理の枝」。男女の情愛が深く、仲むつまじいことのたとえ。 - 鴛鴦の契り(えんおうのちぎり):
鴛鴦(おしどり)の夫婦のように仲が良いこと。「おしどり夫婦」の語源。 - 琴瑟相和す(きんしつあいわす):
琴(こと)と瑟(おおごと)の音が美しく調和するように、夫婦の仲が良いこと。
「偕老同穴」の対義語
- 破鏡不照(はきょうふしょう):
割れた鏡は二度と姿を映さない。離婚した夫婦は元には戻らないこと。 - 同床異夢(どうしょういむ):
同じ床に寝ていても、見ている夢(考えていること)は全く違うこと。身近にいても心が離れている状態。
「偕老同穴」の英語表現
英語圏の結婚の誓いには、このニュアンスに近い有名なフレーズがあります。
Till death do us part
- 意味:「死が二人を分かつまで」
- 解説:キリスト教式の結婚式で交わされる誓いの言葉(Vow)の一部です。「偕老同穴」と同様、死ぬまで一緒にいるという強い誓いを表します。
Grow old along with me!
- 意味:「私と共に老いていこう!」
- 解説:詩人ロバート・ブラウニングの詩の一節。プロポーズや愛の言葉として使われます。
まとめ – 究極の愛の形
「偕老同穴」は、単なる仲良し夫婦を指す言葉ではありません。それは、若き日の情熱だけでなく、老いていく姿も、病める時も、そして死後の静寂さえも分かち合おうとする、魂の結びつきを意味しています。
「生まれ変わっても一緒になりたい」と思えるパートナーと巡り会えたなら、その関係こそがまさに「偕老同穴」と呼ぶにふさわしい奇跡なのかもしれません。



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