「あの二人を見ていると、まさに鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)だね」なんて言葉を耳にしたことはありませんか?
結婚式のスピーチなどで使われることもあり、なんとなく「仲の良い夫婦」を指すのだろうと想像はつくかもしれません。
今回は、「鴛鴦の契り」という言葉の正確な意味から、その美しい響きの裏にある語源、さらには現代での使い方や類義語まで、深く掘り下げて解説していきます。
「鴛鴦の契り」の意味・教訓
鴛鴦(えんおう)とはオシドリのこと。
「鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)」とは、夫婦の仲が非常によく、愛情が深いことのたとえです。
いつも寄り添い、仲睦まじい夫婦の様子を、美しい鳥である「鴛鴦(おしどり)」の姿に重ねて表現した言葉です。互いに深く愛し合い、固い絆で結ばれている理想的な夫婦関係を指します。
「鴛鴦の契り」の語源
この言葉の由来は、鳥の「鴛鴦(おしどり)」の生態にあります。
オシドリは、いつも雄と雌がペアで行動し、片時も離れないように見えることから、古くから中国では「夫婦仲の象徴」とされてきました。その姿から、人間においても深く愛し合う夫婦の絆を「鴛鴦の契り」と呼ぶようになったのです。
※ただし、実際のオシドリは毎年冬の繁殖期に新しいパートナーを見つけることが鳥類学の研究で知られています。
使用される場面と例文
主に、夫婦の仲の良さを褒め称える肯定的な文脈で使われます。結婚祝いのスピーチや、長年連れ添った夫婦への賛辞として用いるのが一般的です。
例文
- 「金婚式を迎えた祖父母は、まさに鴛鴦の契りを交わした理想の夫婦です。」
- 「ご結婚おめでとうございます。お二人が末長く、鴛鴦の契りを結ばれることを心よりお祈り申し上げます。」
- 「あのご夫婦は、いつもお互いを思いやっていて、その姿は鴛鴦の契りという言葉がぴったりだ。」
類義語・言い換え表現
「鴛鴦の契り」と同じように、深い夫婦愛や男女の絆を表す言葉は多く存在します。
- 比翼連理(ひよくれんり):男女の情愛が深く、仲睦まじいことのたとえ。
- 偕老同穴(かいろうどうけつ):夫婦がともに老い、死後も同じ墓に葬られるほどの深い絆を表す言葉。
- 琴瑟相和す(きんしつあいわす):夫婦仲が非常に睦まじいことのたとえ。「琴」と「瑟」という二つの楽器の音がよく調和する様子から。
- 相思相愛(そうしそうあい):互いに思い合い、愛し合っていること。
対義語
夫婦間の仲が良くない状態を表す言葉が対義語として挙げられます。
- 犬猿の仲(けんえんのなか):非常に仲が悪いことのたとえ。夫婦関係に限らず用いる。
- 反目嫉視(はんもくしっし):互いににらみ合い、嫉妬し合うこと。冷え切った関係性を指す。
- 氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず):氷と炭のように性質が正反対で、どうしても調和しないこと。
英語での類似表現
「鴛鴦の契り」のニュアンスを完全に一致させる単一の表現はありませんが、似た意味を持つフレーズはいくつかあります。
a match made in heaven
直訳すると「天国で作られた組み合わせ」となり、神様が引き合わせたかのような、まさに理想的なカップルや夫婦を指します。
- Seeing them together, you can tell they’re a match made in heaven.
(一緒にいる二人を見れば、彼らが理想のカップルだと分かります。)
a loving couple / a devoted couple
よりシンプルに、愛情深い夫婦、献身的な夫婦であることを表現する言葉です。
- They have been a devoted couple for over 50 years.
(彼らは50年以上にわたって献身的な夫婦です。)
「鴛鴦の契り」に関する豆知識
語源のセクションでも触れましたが、「鴛鴦の契り」の由来となったオシドリの生態には、ことわざのイメージとは少し異なる一面があります。
実際のオシドリのつがいは、繁殖期である冬の間は仲睦まじく過ごしますが、その関係は基本的に一年で解消され、次の年にはまた別の相手とペアになることがほとんどです。
このことから、時に「おしどり夫婦」という言葉が、実際の内情はともかく「世間的には仲良く見える夫婦」という少し皮肉な意味で使われることも稀にあります。とはいえ、「鴛鴦の契り」という言葉自体は、純粋に理想的な夫婦の絆を願う、美しい表現として定着しています。
まとめ – 「鴛鴦の契り」から学ぶ現代の知恵
「鴛鴦の契り」は、仲睦まじく深い愛情で結ばれた夫婦の姿を、美しいオシドリにたとえた言葉です。その語源となった鳥の実際の生態は少し異なりますが、この言葉には、人々が夫婦関係に寄せる「いつまでも寄り添い、愛し合っていたい」という普遍的な願いが込められています。
現代においても、互いを尊重し、支え合うパートナーシップの理想像として、この言葉の持つ温かみは色褪せることがありません。






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