以心伝心

四字熟語 仏教用語
以心伝心(いしんでんしん)

7文字の言葉」から始まる言葉
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言葉に出して「あれが欲しい」と言わなくても、相手がそっと差し出してくれる。
「今、きっと同じことを考えている」と、目と目が合った瞬間に確信する。

家族や親しい友人、長年連れ添ったパートナーとの間で、そんな不思議な心のつながりを感じたことはありませんか。

以心伝心(いしんでんしん)」は、まさにそのような、言葉を超えた深い理解と共感を指す四字熟語です。

「以心伝心」の意味・教訓

「以心伝心」とは、言葉や文字を使わなくても、心から心へと、互いの気持ちや考えが通じ合うことを意味します。

「以て心を伝う心(もってこころをつたうこころ)」と読み下すことができます。
声に出したり、文字に書いたりしなくても、相手の考えていることや感じていることが、自分の心に直接伝わってくるような、深い相互理解の状態を示します。

「以心伝心」の語源

「以心伝心」は、もともと禅宗(ぜんしゅう)の仏教用語に由来します。

禅宗では、悟りの境地や仏教の真髄(しんずい)は、経典(きょうてん)などの言葉や文字(=教え)を通して伝えられるものではなく、師匠の心から弟子の心へと、直接体験的に伝えられるものだと考えました。

この「言葉では表しきれない大切なこと(悟り)を、心から心へ直接伝える」という禅宗の教えのあり方(特に釈迦が弟子の摩訶迦葉(まかかしょう)に悟りを伝えたとされる故事)を、「以心伝心」と表現したのです。

この宗教的な意味が、時代とともにより一般的に使われるようになり、「言葉にしなくても気持ちが通じ合うこと」という意味で広く定着しました。

使用される場面と例文

日常生活において、言葉を交わさなくても相手の意図が分かったり、偶然にも同じ行動をとったりした時など、共感や深い理解が成立した場面で使われます。

例文

  • 「私がコーヒーを飲みたいと思った瞬間に、妻が淹れてくれた。まさに「以心伝心」だ。」
  • 「あの二人は本当に仲が良く、「以心伝心」で互いの考えが分かるようだ。」
  • 「長年の付き合いで、僕たちは「以心伝心」の仲だ。細かい説明は要らない。」
  • 「アイコンタクトだけで作戦が成功したのは、チームの「以心伝心」の勝利だ。」

類義語・言い換え表現

「以心伝心」と似た、言葉を超えた理解を示す言葉を紹介します。

  • 阿吽の呼吸(あうんのこきゅう):
    二人以上が一緒に物事を行う時、言葉を交わさなくても互いの気持ちやタイミングがぴったりと合うこと。「以心伝心」が「気持ちが通じること(状態)」を指すのに対し、「阿吽の呼吸」は「行動やタイミングが合うこと(動作)」を指すニュアンスが強いです。
  • 暗黙の了解(あんもくのりょうかい):
    言葉には出さないが、関係者の間ですでに理解・合意されている事柄。
  • ツーカーの仲(つうかあのなか):
    「つう」と言えば「かあ」と答えるように、少しの言葉で互いの意図がすぐに通じ合う、非常に気心の知れた間柄。

対義語

心が通じ合わない、言葉にしないと伝わらない、という意味の言葉です。

  • 言わなければ分からない(いわなければわからない):
    言葉にして伝えなければ、相手に気持ちや考えは伝わらないということ。
  • すれ違い
    互いの気持ちや意図がうまく伝わらず、理解し合えない状態。
  • 同床異夢(どうしょういむ):
    同じ寝床(環境)にいながら、それぞれ違う夢(考え)を持っていること。仲間や夫婦であっても、考えや目的が異なること。

英語での類似表現

「以心伝心」の「言葉なしで通じ合う」というニュアンスに近い英語表現です。

Telepathy

  • 意味:「テレパシー」。
  • 言葉や身振りを使わずに、心から心へ直接、意思を伝達すること。
  • 例文:
    We seem to communicate through telepathy.
    (私たちはまるでテレパシーで通じ合っているようだ。)

(Be) on the same wavelength

  • 意味:「同じ波長(はちょう)に乗っている」。
  • 考え方や感じ方が(言葉にしなくても)よく合う、馬が合う、という意味の慣用句です。
  • 例文:
    My best friend and I are always on the same wavelength.
    (私と親友は、いつもお互いに気持ちが通じ合っている。)

まとめ – 言葉を超えた絆の証

「以心伝心」は、言葉や文字を介さずに、心から心へと直接気持ちが伝わる、深く不思議な心のつながりを表す言葉です。

元々は禅宗の奥深い教えに由来しますが、現代では家族や友人、仲間との間にある「言わなくても分かる」という強い信頼関係や絆の証として使われています。

互いを深く理解し合おうとする日々の積み重ねが、このような素晴らしい関係を築くのかもしれませんね。

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