何気なく立ち寄った店でずっと探していた絶版の本を見つけたり、電車が遅れたおかげでかえって大事な人に会えたりしたことはありませんか?
勿怪の幸いとは、思いがけず訪れる幸運のことです。
予測していなかった事態が良い結果をもたらしたとき、私たちは驚きとともにこの言葉を口にします。
「勿怪の幸い」の意味
思いがけない幸運、予想もしなかったラッキーな出来事という意味です。
- 勿怪(もっけ):思いがけないこと。不思議なこと。
- 幸い(さいわい):運が良いこと。幸せ。
本来は「不思議なこと」全般を指していた言葉が、肯定的な意味の「幸い」と結びつき、「不思議なくらいの幸運」を表すようになりました。
「勿怪の幸い」の語源・由来
この言葉の鍵となる「勿怪(もっけ)」は、平安時代から使われている古い言葉に由来します。
元々は物の怪(もののけ)が変化した言葉だと言われています。
「もののけ」とは、人に憑りついたり祟ったりする死霊や生霊、妖怪のことですが、転じて「人間の力ではどうにもならない不思議な現象」や「意外なこと」を指す言葉として「もっけ」が使われるようになりました。
古くは「勿怪の沙汰(もっけのさた)」のように、不吉な出来事や重大な異変を指す場合もありましたが、室町時代以降、次第に「意外なこと」という意味が強まり、現代では「勿怪の幸い」という形で、思いがけない幸運というポジティブな意味で定着しています。
漢字の「勿怪」は当て字であり、「勿(な)し・怪(あや)し(=あってはならない不思議なこと)」という意味を含ませたものと考えられています。
「勿怪の幸い」の使い方・例文
日常会話では、「偶然」や「ラッキー」を少し強調したいときや、少し改まった表現をしたいときに使われます。
例文
- 急な雨で雨宿りしたカフェがとても素敵だったのは、まさに勿怪の幸いだった。
- 会議が延期になったのは、準備不足の私にとって勿怪の幸いだ。
- 古本屋で手に入れた初版本が高値で売れるとは、勿怪の幸いと言うほかない。
「勿怪の幸い」と「棚からぼたもち」の違い
似た意味を持つ言葉に「棚からぼたもち」がありますが、ニュアンスに微妙な違いがあります。
- 棚からぼたもち:
「努力せずに」利益を得ることに焦点があります。ぐうたらしていて良いものを得る、という少しコミカルで受動的なイメージです。 - 勿怪の幸い:
「思いがけなさ」「不思議さ」に焦点があります。努力の有無にかかわらず、予測外の出来事がプラスに転じたという驚きの感情が強い表現です。
「勿怪の幸い」の類義語・関連語
予想外の幸運を表す言葉はいくつかあります。
- 怪我の功名(けがのこうみょう):
過失や失敗が、偶然良い結果をもたらすこと。「勿怪の幸い」と似ていますが、こちらは「当初の失敗(怪我)」が前提となります。 - 僥倖(ぎょうこう):
思いがけない幸せ。偶然の幸運。「勿怪の幸い」よりも硬い表現で、文章語として使われることが多いです。 - 渡りに船(わたりにふね):
困っているときに、ちょうどよく助け舟が来ること。タイミングの良さを強調する言葉です。
「勿怪の幸い」の対義語
「思いがけない幸運」の反対として、「思いがけない災難」を表す言葉が対義語となります。
- 青天の霹靂(せいてんのへきれき):
晴れた空に突然雷が鳴るように、突発的に起きる大事件のこと。良いことにも使われますが、現代では「予期せぬ悪い知らせ」として使われることが多いです。 - 好事魔多し(こうじまおおし):
良いことには、とかく邪魔が入りやすいということ。幸運はずっとは続かないという戒めです。
「勿怪の幸い」の英語表現
英語でも「思いがけない幸運」を表す慣用句が存在します。
a stroke of luck
- 意味:「思いがけない幸運」「天の恵み」
- 解説:”Stroke” は「一撃」や「打撃」を意味し、突然やってくる幸運の一撃を表します。
- 例文:
It was a stroke of luck that I found my lost wallet.
(失くした財布が見つかったのは、まさに勿怪の幸いだった。)
godsend
- 意味:「天の恵み」「天与の幸運」
- 解説:神(God)が送ってくれたもの(send)という意味で、困っている状況での予期せぬ助けや幸運を指します。
まとめ
勿怪の幸いとは、人間の予測を超えた不思議な巡り合わせによる幸運のことです。
「もののけ」という言葉が語源であることからも分かるように、昔の人は予期せぬラッキーな出来事に、人知を超えた「何か」の気配を感じていたのかもしれません。
計算通りにいかないのが人生ですが、たまにはそんな不思議な幸運が舞い込むのも、生きていく面白さと言えるでしょう。







コメント