「自由」とは、他者の干渉や束縛を離れ、自らの意志で選択し行動できる尊い状態を指します。
古来より人々はこの境地を渇望し、爽快な心の解放を謳うものから、一歩間違えれば「勝手」になりかねない危うさを戒めるものまで、多様な言葉を遺してきました。
本記事では、そんな「自由」の多面性を捉えたことわざや四字熟語を、意味のニュアンス別に整理して紹介します。
のびのびとした心の解放
- 自由自在(じゆうじざい):
何ものにも縛られず、思いのままに操ったり動いたりできる状態。
「自在」は仏教で、煩悩の束縛から解き放たれて何事も思うままになしうる力をいい、仏や菩薩にそなわるとされる。 - 自由奔放(じゆうほんぽう):
世間のしきたりに縛られず、心のままに勢いよく振る舞う様子。
「奔放」は勢いよく走るという意味で、そこから常識にとらわれず思うとおりにふるまうことを表す。 - 天馬空を行く(てんばくうをゆく):
着想や行動が何にもとらわれず、天を駆ける馬のように勢いがあるさま。
明の文人劉廷振が、詩人薩都剌の詩集に寄せた序文で、そのすぐれた詩を「天馬の空を行くがごとし」とたたえた言葉から。 - 行雲流水(こううんりゅうすい):
空を行く雲や流れる水のように、物事に執着せず自然のままに任せる態度。
『宋史』の蘇軾伝に、蘇軾が自分の文章の書きぶりを「行雲流水の如し」と語った言葉が出てくる。 - 縦横無尽(じゅうおうむじん):
縦にも横にも限りがないほど、思う存分にのびのびと動き回る様子。
四方への広がりで自由さを強調した表現。 - 自由闊達(じゆうかったつ):
小さなことにこだわらず、心のままにのびのびと振る舞う気風。
「闊達」は度量が大きいさまを表し、企業理念などでもよく使われる。
しがらみからの独立・自律
- 悠々自適(ゆうゆうじてき):
俗世のわずらわしさを離れ、自分の思うままに心静かに暮らす境地。
「悠々」はのんびりした心境を表す。 - 晴耕雨読(せいこううどく):
晴れの日は畑を耕し、雨の日は書物を読んで過ごす暮らしぶり。
俗世を離れて自足する理想の生き方の代名詞となった言葉。 - 独立独歩(どくりつどっぽ):
他人に頼らず、自分の信じる道を自分の力だけで進んでいく姿勢。
組織から離れて独り立ちする覚悟を示す言葉としても使われる。 - 一国一城の主(いっこくいちじょうのあるじ):
誰の支配も受けず、自分の領域を独立して治めている人。
一つの国、または一つの城を領有している人という意味から。
度を超えた自由への戒め
- 傍若無人(ぼうじゃくぶじん):
周りに人がいないかのように、自分勝手に振る舞う図々しさ。
『史記』に描かれた荊軻が酒に酔って騒いだ逸話に由来する。 - 野放図(のほうず):
限度や決まりがなく、しまりのない勝手放題な様子。
「の」は接頭語で、「野」は当て字。 - 跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ):
よからぬ者が思うままにのさばり、辺りを我が物顔で歩き回る様子。
「跳梁」ははねまわること、「跋扈」はおどり出ることを表す。
「わがまま」だった「自由」が近代語に変わるまで
私たちが現在、権利や解放として使う「自由」は、古くは「思いのまま」の意味のほか、先例や道理を無視した「わがまま勝手」の意味で、非難を込めて使われることの多い語でした。
liberty・freedomの訳語に「自由」を当てた例は、幕末の英和辞書にすでに見られます。
福沢諭吉は『西洋事情』で、「自由」の字はわがまま勝手に振る舞って国法を恐れないという意味ではないと断り、こうした訳字では原語の意味を尽くせないとも書き添えています。
その後、中村正直によるJ・S・ミル『On Liberty』の邦訳『自由之理』(1872年)が広く読まれたことで、「自由」という語が近代的な意味で社会に定着していきました。









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