慣用句

借りてきた猫

(かりてきたねこ)

普段は活発な人が、慣れない場所や改まった席で緊張し、別人のようにおとなしくなることのたとえ。


7文字の言葉 / 「か・が」から始まる言葉
借りてきた猫 ことば
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意味

「借りてきた猫(かりてきたねこ)」とは、ふだんは元気で口数も多い人が、初めての場所や畏まった席に出ると急におとなしくなってしまうことのたとえです。
単に無口な人を指すのではなく、緊張や遠慮から本来の自分が出せず、縮こまっている状態を表します。

語源・由来

ネズミ捕りに長けた猫は昔から重宝され、猫を飼っていない家では、ネズミ退治のためによその家から猫を借りてくることもあったといわれます。

ところが猫は環境の変化に敏感な動物です。
自分の縄張りでは堂々としていても、見知らぬ家に連れてこられると警戒して物陰に隠れ、肝心のネズミにも見向きもしなくなってしまいます。
この、期待に反してすっかり縮こまってしまう猫の姿を、人間の緊張した様子に重ねた言い回しです。

使い方・例文

「借りてきた猫」は、その人の内気な一面や緊張している様子を、親しみを込めて表現する際によく使われます。

  • 普段はやんちゃな息子も、初めての授業参観では借りてきた猫のようだった。
  • いつもはクラスの盛り上げ役だが、憧れの先輩の前では借りてきた猫だ。

誤用・注意点

「借りてきた猫」と混同しやすい言葉に、猫を被るがあります。
「借りてきた猫」は緊張などの環境変化で意図せずおとなしくなってしまう状態ですが、「猫を被る」は本性を隠して計算でおとなしく見せることを指します。

面接などの失敗談で「猫を被っていました」と言うと、騙そうとしていたと誤解されるため使い分けには注意が必要です。

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類義語・関連語

「借りてきた猫」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 内弁慶の外地蔵(うちべんけいのそとじぞう):
    家の中では威張り散らすが、外に出るとおとなしくなること。

対義語

「借りてきた猫」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 傍若無人(ぼうじゃくぶじん):
    周囲に人がいないかのように、勝手気ままに振る舞うこと。
  • 我が物顔(わがものがお):
    まるで自分の物であるかのように、他人に遠慮なく振る舞うこと。

英語表現

「借りてきた猫」を英語で表現する場合、ネズミを使った表現があります。

as quiet as a mouse

意味:とても静か、物音ひとつ立てない
ネズミのようにおとなしく、静かにしている様子を表す表現。

She was as quiet as a mouse in the meeting.
(彼女は会議中、借りてきた猫のようにおとなしかった。)

葛西善蔵は1924年に「借りられて来た猫」と書いた

大正13年(1924年)に『中央公論』に載った葛西善蔵かさいぜんぞうの小説『蠢く者うごめくもの』に、この言い回しの早い例があります。
不機嫌な語り手「俺」の部屋の隅に、二十五歳の女おせいが「借りられて来た猫かのやうに」座っている場面です。

おせいは座布団も敷かず、火鉢もあてがわれず、背を丸くして、ときどき臆病そうに「俺」の顔色をうかがっています。
ここでは今の「借りてきた猫」と違い、「借りられて来た」という受け身の形が使われています。
よその家に連れて来られて身を縮める猫の姿が、居場所のない部屋で小さくなっている人の様子にそのまま重ねられています。

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