優れた能力や高い地位にありながらも、決して威張ることなく、誰に対しても謙虚で穏やかに接する。そのような人物に出会ったとき、心からの尊敬の念を抱くものです。
「恭謙温和(きょうけんおんわ)」は、まさにそうした理想的な人柄を表す四字熟語です。ここでは、その深い意味と正しい使い方を解説します。
「恭謙温和」の意味・教訓
「恭謙温和」(きょうけんおんわ)とは、相手を敬い、自分は謙虚に振る舞い、なおかつ人柄が穏やかで優しいことを意味します。
単に大人しいだけでなく、他者への「敬意」と「謙虚さ(恭謙)」、そして「穏やかさ(温和)」を兼ね備えた、非常に徳の高い人格を称賛する言葉です。
「恭謙温和」の語源
「恭謙温和」は、「恭謙」と「温和」という二つの熟語が組み合わさってできています。
- 恭謙(きょうけん):相手をうやうやしく敬い、自分はへりくだる(謙虚である)こと。
- 温和(おんわ):性格や気候などが、穏やかでなごやかなこと。
この二つが合わさり、他者を立てる謙虚さと、人を包み込むような優しさの両方を持つ、優れた人柄を指すようになりました。
「恭謙温和」の使い方と例文
「恭謙温和」は、その人の人柄を最高級に褒める言葉として使われます。特に、社会的地位が高い人や、卓越した才能を持つ人が、偉ぶらず謙虚で穏やかな態度を保っている場合に使われることが多いです。
例文
- 「新しく就任した理事長は、恭謙温和な人柄で、すぐに職員たちの信頼を得た。」
- 「あれほどの実績がありながら、彼は常に恭謙温和な姿勢を崩さない。」
- 「先生の恭謙温和なお人柄に触れ、多くの学生が感化されている。」
類義語・関連語
「恭謙温和」と似た、人柄の良さを表す言葉です。
- 温厚篤実(おんこうとくじつ):
穏やかで情に厚く、誠実なこと。「温和」の部分は共通しますが、「恭謙」が持つ「謙虚さ」よりも「誠実さ」に焦点が当たっています。 - 謙虚(けんきょ):
控えめで、素直に相手の意見などを受け入れるさま。「恭謙」の部分と非常に近い意味を持ちます。 - 柔和(にゅうわ):
優しく、穏やかなさま。「温和」とほぼ同じ意味で使われます。
対義語
「恭謙温和」とは正反対の、傲慢な態度や荒々しい性格を表す言葉です。
- 傲岸不遜(ごうがんふそん):
おごりたかぶって(傲岸)、相手を見下し謙虚さがない(不遜)こと。「恭謙」の正反対の状態です。 - 傍若無人(ぼうじゃくぶじん):
他人のことなど気にせず、自分勝手に振る舞うこと。他者への敬意(恭)が欠けています。 - 尊大(そんだい):
いかにも自分が偉いかのように振る舞うこと。「謙虚さ」の対極です。
英語での類似表現
「恭謙温和」の「謙虚さ」と「穏やかさ」を英語で表現するには、以下のような組み合わせが考えられます。
Humble and gentle
- 意味:「謙虚で穏やかな」
- 解説:「Humble」(謙虚な)が「恭謙」を、「gentle」(穏やかな、優しい)が「温和」のニュアンスをよく表しています。
- 例文:
He is respected for his humble and gentle personality.
(彼はその謙虚で穏やかな人柄で尊敬されている。)
Modest and mild-mannered
- 意味:「控えめで物腰が柔らかい」
- 解説:「Modest」(控えめな)が「恭謙」に、「mild-mannered」(物腰が柔らかい、温厚な)が「温和」に相当します。
- 例文:
Despite her success, she remained a modest and mild-mannered person.
(彼女は成功したにもかかわらず、控えめで物腰が柔らかい人であり続けた。)
まとめ – 恭謙温和から学ぶ知恵
「恭謙温和」は、他者への敬意と謙虚さ、そして穏やかな優しさを併せ持つ、理想的な人格を表す四字熟語です。
自分を誇示するのではなく、謙虚で穏やかに人と接する態度は、弱さではなく、むしろ内面的な強さと豊かさの表れです。そのような人柄は、周囲の人々に安心感を与え、深い信頼関係を築く基盤となりますね。




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