意味
「驕る平家は久しからず(おごるへいけはひさしからず)」とは、権勢を笠に着て思い上がった振る舞いをする者ほど、その栄華は儚く、やがて没落するという戒めです。
この言葉は、以下の要素で成り立っています。
- 驕る(おごる):地位や財産を鼻にかけ、思い上がった振る舞いをする。
- 平家(へいけ):平安時代末期に巨大な権力を握った平氏一門。
- 久しからず(ひさしからず):長くは続かない。
どれほど強大な権力を持っていたとしても、徳を忘れ、傲慢になった者には必ず終わりの時が来るという、強い戒めの教訓が含まれています。
語源・由来
「驕る平家は久しからず」の直接の由来は、鎌倉時代に成立した軍記物語『平家物語』の冒頭の一節にあります。
原文には、「驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」と記されています。
これは「おごり高ぶっている人も長くは続かず、まるで春の夜に見る短い夢のようにはかないものだ」という意味です。
この「驕れる人(おごり高ぶる者)」の代表例として、物語の主役である平家一門の急激な台頭と没落が描かれたため、いつしか「驕れる人」が「驕る平家」へと置き換わり、ひとつの慣用句として定着しました。
使い方・例文
現代では、急成長した企業が不祥事で失速した際や、成功して態度が大きくなった人物への警告として使われます。
例文
- 急成長に慢心したあの企業も、今や倒産寸前でまさに驕る平家は久しからずだ。
- 昇進して横暴になった彼を見ていると、驕る平家は久しからずという言葉が浮かぶ。
- 驕る平家は久しからずという。成功した時こそ、謙虚さを忘れてはならない。
誤用・注意点
この言葉は「驕る」を「怒る」と混同したり、「久しからず」を「久しぶり」の意味で捉えたりしないよう注意が必要です。
また、原文は「驕れる人」ですが、現在では「驕る平家」として使うのが一般的です。
どちらを使っても間違いではありませんが、特定の組織や勢力を指す場合は「平家」を用いる方が、より強いニュアンスが伝わります。
類義語・関連語
「驕る平家は久しからず」と似た意味を持つ言葉には、以下のような定型句があります。
- 盛者必衰(じょうしゃひっすい):
勢いが盛んな者も必ず衰えるという世の理。 - 驕れる者は久しからず(おごれるものはひさしからず):
同じ意味の言い方で、「驕る者久しからず」とも言います。
「驕れる者も久しからず」は、『平家物語』の冒頭の一節を「奢れる者も久しからず」とする伝本に見える句と同じ言い方です(伝本の字は「奢」)。 - 権不十年(けんふじゅうねん):
権力というものは10年も続くものではないというたとえ。 - 驕る平家に二代なし(おごるへいけににだいなし):
おごり高ぶる平家の栄華は二代と続かないという、同じ意味の言い方。
対義語
「驕る平家」とは対照的に、成功しても慎み深い態度であることを示す言葉です。
- 実るほど頭を垂れる稲穂かな(みのるほどこうべをたれるいなほかな):
人格が高まるほど、人に対して謙虚になるということ。 - 恭謙温和(きょうけんおんわ):
うやうやしく謙虚で、おだやかなこと。
英語表現
「驕る平家は久しからず」を英語で表現する場合、以下の表現が定型句として定着しています。
Pride goes before a fall
直訳すると「自惚れは破滅に先立つ」です。
聖書に由来する非常に有名なことわざで、教訓の内容が完全に一致します。
He became too arrogant after winning, but pride goes before a fall.
(彼は勝利して傲慢になったが、驕る平家は久しからずだ。)
清盛の義弟・平時忠、一門以外を「人非人」と呼ぶ
『平家物語』において、平家の「驕り」を象徴する有名なエピソードがあります。
平清盛の義弟である平時忠が放ったとされる、「此一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし」という言葉です。
これは「平家の一門でない者は、人間ではないも同然だ」という意味であり、当時の平家がいかに自分たちの権力を絶対視し、他者を見下していたかを物語っています。
この極端な傲慢さが周囲の反感を買い、結果として平家はわずか20年ほどで滅亡へと突き進むことになりました。
この歴史的事実が、言葉の重みをより確かなものにしています。













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