意味
「遅きに失する(おそきにしっする)」とは、物事に取りかかるのが遅れすぎてしまい、もはや手を打っても意味がなくなってしまうという意味です。
「失する」には「度を越す」「〜すぎる」というニュアンスがあり、単に遅れたという事実だけでなく、「遅すぎたせいで本来の目的や意味が失われてしまった」という取り返しのつかなさを含んでいます。
語源・由来
「〜に失する」という言い回しは、「過大に失する」のように、ある状態が適切な範囲を超えてしまっていることを表す際に用いられる表現です。
「遅き」という状態が度を越した結果、取り返しのつかない事態に陥ることを端的に言い表したのが、この言葉の成り立ちです。
使い方・例文
「遅きに失する」は、手遅れになった事態を嘆くときや、早急な対応を促す際の戒めとして使われます。
- 期限後に完璧な資料を出しても遅きに失する。
- 試合終盤での戦術変更は遅きに失する。
- 雨が降り出してから傘を買っても遅きに失する。
誤用・注意点
「遅きに失する」を「遅きに逸する」と書くのは誤りです。
「失する」と音の似た「逸する」を取り違えやすいので注意が必要です。
「〜に失する」でひとつの文型として機能しているため、「遅きを失する」と助詞の「を」を使うのも誤りです。
また、「タイミングが遅きに失する」と言うと「タイミングが遅すぎる」という重複した表現になるため、「対応が遅きに失する」などとするのが自然です。
類義語・関連語
「遅きに失する」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 後の祭り(あとのまつり):
時期を逃してしまい、後悔しても取り返しがつかないこと。 - 時すでに遅し(ときすでにおそし):
行動を起こすタイミングが遅すぎたこと。 - 泥縄(どろなわ):
事が起こってから慌てて準備をすること。「泥棒を捕らえて縄を綯う」の略。 - 六日の菖蒲、十日の菊(むいかのあやめ、とおかのきく):
時期を逃して役に立たないものの例え。
対義語
「遅きに失する」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 機先を制する(きせんをせいする):
相手より先に行動を起こし、有利な立場に立つこと。 - 先手必勝(せんてひっしょう):
戦いなどで、相手より先に攻撃を仕掛ければ必ず勝てるということ。 - 善は急げ(ぜんはいそげ):
良いと思ったことは、ためらわずにすぐ実行すべきだということ。
英語表現
「遅きに失する」を英語で表現する場合、以下の慣用句が使われます。
too little, too late
意味:遅すぎるし、不十分である
手遅れな上に、対策としても不十分であることを表す決まり文句です。
The response was too little, too late.
(対応は遅きに失した。)
miss the boat
意味:好機を逃す、手遅れになる
船に乗り遅れるという直訳から、絶好のチャンスを逃してしまう状況を表します。
If you don’t act now, you will miss the boat.
(今行動しないと遅きに失する。)
「遅きに失する」は「早きに過ぐる」と対で使われた
1909年(明治42年)の軍事の問答集『是でもわからぬか』は、予備の部隊を戦いに注ぎ込む時機をこう論じています。
「予備隊の使用は早きに過ぐるも遅きに失するも共に弊害あり」(予備隊を使うのは、早すぎても遅すぎても害がある)。
そのうえで、早すぎるほうがまだましだとし、遅すぎるのは「財貨を抱きて棺に入るに似たれば」(財産を抱えたまま棺に入るようなものだから)と理由を挙げています。
1917年(大正6年)に長崎県農事試験場が出した栽培書も、玉ねぎの種まきについて同じように書いています。
種まきが遅きに失すると球が育ちきらないうちに収穫期が来てしまい、早きに失すると植えた後に薹が立ちやすい、という説明です。
どちらの本でも「遅きに失する」は、「早きに過ぐる」「早きに失する」と並べて、時機の外し方の一方として使われています。









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