言葉の中には、本来ネガティブな意味やただの事実を表す表現だったにもかかわらず、時代とともにポジティブな意味へと変化したものがあります。
このような言語変化を「意味向上」と呼びます。
悪い意味へと転じる「意味悪化」に比べると記録されている例が少なく珍しい現象ですが、私たちが普段使っている褒め言葉にも意外な過去が隠されています。
現代で肯定的に使われている言葉の本来の姿を紹介します。
本来は「恐怖やマイナス」だった言葉
- 素晴らしい(すばらしい):
身が縮むほど恐ろしい状態から、極めて優れているという最高の評価へと変化しました。 - 可愛い(かわいい):
哀れで不憫な様子から、愛らしくて大切にしたいという肯定的な意味へと向上しました。 - 健気(けなげ):
羨ましいという意味から、困難に立ち向かう立派な態度を褒める言葉へと変化しました。
本来は「ただの事実や感情」だった言葉
- あっぱれ:
驚きや嘆きによる感嘆詞から、見事な行いを強く褒め称える表現へと変化しました。 - 有り難い(ありがたい):
滅多にないという単なる事実から、神仏への感謝や尊さを表す意味へと向上しました。 - 結構(けっこう):
建築の構造を表す言葉から、欠点がなく申し分ないという肯定的な意味へと定着しました。
現代で「意味向上」が起きている言葉
- ヤバい:
危険を表す隠語から、感動するほど素晴らしいという最高の褒め言葉へと変化しています。 - 下剋上(げこくじょう):
身分を乱す行為から、格下が強敵を打ち破るという肯定的な意味で使われるようになりました。 - オタク:
相手を揶揄する言葉から、深い専門知識を持つ人を指す肯定的な意味へと変化しつつあります。
マイナスの言葉がプラスに転じる経路
意味向上が起きる経路はいくつか知られています。
最も典型的なのは、強い感情を表すために既存の激しい語を転用するうちに肯定的な含意が定着するケースです。
「素晴らしい」のように、強度の大きい否定語が「程度の極み」を表す語として肯定用法に転用された例がこれにあたります。
また、特定の集団に対する社会的評価が上がることで、その集団を指す語が肯定的な意味を帯びる経路もあります。
「オタク」の変化はこの経路に近いと言えます。
いずれの場合も、変化は一世代以上かけて徐々に進むことが多く、同一語が肯定・否定の両方の意味で並立して使われる時期を経るのが一般的です。





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