意味
「案山子(かかし)」とは、田畑を鳥獣から守るために、人の形に似せて立てる人形のことです。
蓑や笠を着せて田に立て、作物を荒らす鳥や獣をおどす道具で、俳句では秋の季語としても使われます。
転じて、地位や見た目は立派でも、それに見合った実力が伴わない人を指す場合もあります。
語源・由来
「案山子」は、もともと田畑を鳥や獣から守るための道具そのものを指す言葉でした。
獣の肉や毛髪などを焼いて串に刺したりぶら下げたりし、その悪臭で鳥や獣を遠ざけたことから、においを「嗅がせるもの」という意味で「嗅がし」と呼ばれ、これが変化して「かかし」という読みが広まったとされます。
人の姿に似せた人形を田畑に立てて鳥や獣をおどす、今のような案山子になったのは中世の頃からと考えられています。
当初は「かがし」という濁った読みが多かったと考えられ、関東で使われていた「かかし」が、江戸時代後半に広まっていったとみられています。
一方、「案山子」という漢字の表記は、読みの由来とは別の道をたどっています。
「案山子」はもとは中国の禅僧が用いた言葉で、山中の低地を意味する「案山」の田畑に、鳥獣を防ぐために立てた人形を指したとされ、これを日本語の「かかし」に当てはめて使うようになったといわれています。
使い方・例文
比喩の意味で使うときは、皮肉や批判を込めて言う場合がほとんどです。
- 稲穂の実った田んぼに、蓑と笠をつけた案山子が立っていた。
- 肩書きばかりで実権のない彼を、陰で案山子社長と呼ぶ人もいた。
類義語・関連語
この言葉と同様に、見た目は立派でも実力が伴わないことを表す言葉には、次のようなものがあります。
「案山子」と類義語の違い
3つとも外見と中身の不一致を表しますが、何を主な対象にし、どこを強調するかが異なります。
| 語句 | 主な対象 | 強調するポイント |
|---|---|---|
| 案山子 (かかし) | 地位や肩書きのある人 | 見た目や役職の割に実力が伴わないこと |
| 見掛け倒し (みかけだおし) | 人・物事全般 | 外見と中身の差そのもの |
| 張り子の虎 (はりこのとら) | 人 | 見かけの強さに反した実際の弱さ・脆さ |
対義語
この言葉とは反対に、外見は地味でも実力が伴っていることを表す言葉に、次のようなものがあります。
- 山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい):
体は小さくても、才能や気性が鋭くて侮れないこと。
英語表現
scarecrow
田畑に立てる人形そのものを指す、案山子の最も基本的な訳語。
He set up a scarecrow in his vegetable garden.
(彼は家庭菜園に案山子を立てた。)
figurehead
地位や肩書きはあっても実権を持たない人を指す際に使われる表現。
The new chairman is just a figurehead with no real power.
(新しい会長は実権のないただの案山子だ。)
古事記の物知りの神・久延毘古は、山田の案山子
古事記には、大国主神が出雲の美保の岬にいたとき、名も知れぬ小さな神が海の向こうからやって来たという話があります。
だれもその名を知らない中、ヒキガエルの多邇具久が「久延毘古ならきっと知っているだろう」と教え、尋ねてみると、正体は神産巣日神の子である少名毘古那神だと分かりました。
この物知りの神・久延毘古は、今でいう山田の曾富騰、つまり田に立つ案山子そのものとされています。
歩くことはできませんが、天下のことを何でも知っている神だと古事記には記されています。

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