「今回のプロジェクト、彼には役不足だったね」
「困った時はお互い様、情けは人のためならずだよ」
日常会話やビジネスシーンで何気なく使っているその言葉。実は、本来の意味とは真逆の意味で使っているかもしれません。
言葉は時代とともに変化するものですが、ビジネスや公的な場では「本来の意味」を知らないと、相手に誤解を与えたり、「教養がない」と思われたりして損をしてしまうことも。
この記事では、文化庁の世論調査などでも間違いが多いとされる「誤用されやすい日本語・ことわざ」を厳選して解説します。
正しい意味を知り、自信を持って言葉を使えるようになりましょう。
1. 意味が「真逆」に伝わってしまう危険な言葉
最も注意が必要なのがこのパターンです。褒めたつもりがけなしていたり、励ましたつもりが突き放していたりする可能性があります。
役不足(やくぶそく)
- × よくある誤用:本人の実力が足りず、その役目が務まらないこと。(力不足)
- ○ 本来の意味:本人の実力に対して、与えられた役目が軽すぎること。(実力 > 役目)
- 解説:
「彼には役不足だ」と言うと、「彼はもっと凄い仕事ができる人だ(この仕事では物足りない)」という最大の褒め言葉になります。
相手の能力不足を指摘したい場合は「力不足(ちからぶそく)」を使うのが正解です。
情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
- × よくある誤用:人に情けをかける(親切にする)ことは、その人のためにならない。(甘やかすことになるから良くない)
- ○ 本来の意味:人に情けをかけておけば、巡り巡ってよい報いとなって自分に戻ってくる。
- 解説:
「だから親切にしよう」というポジティブな意味です。「厳しくするのが相手のため」という意味で使うのは誤りです。
確信犯(かくしんはん)
- × よくある誤用:悪いことだとわかっていながら、あえて行う犯罪や行為。
- ○ 本来の意味:自分の行っていることが(道徳的・宗教的・政治的に)正しいことだと信じて行われる犯罪や行為。
- 解説:
現代では誤用(悪いとわかっていてやる)が定着しつつありますが、本来は「信念に基づいた行為」を指します。
悪いとわかっていてやる行為は、法律用語で「故意犯(こいはん)」と呼びます。
煮詰まる(につまる)
- × よくある誤用:議論が行き詰まってしまい、結論が出ない状態。(スランプ)
- ○ 本来の意味:議論や意見が出尽くして、結論が出る段階に近づくこと。
- 解説:
料理でスープが煮詰まって完成に近づく様子が語源です。「会議が煮詰まってきた」は、「あと少しで決まるぞ」という良い状態を指します。
行き詰まっている場合は「行き詰まる」を使いましょう。
2. ビジネスで使うと「失礼」になる言葉
悪気はなくても、目上の人に使うと「マナー知らず」と思われてしまう表現です。
了解しました(りょうかいしました)
- 注意点:「了解」は「意味を理解して承認する」という意味合いが強く、本来は目上の人が目下の人に対して使う言葉です。
- 言い換え:上司や取引先に対しては、「承知いたしました」や「かしこまりました」を使うのが無難でスマートです。
ご苦労様です(ごくろうさまです)
- 注意点:これも本来は、目上が目下をねぎらう言葉です。部下が上司に言うと、上から目線に聞こえることがあります。
- 言い換え:立場に関係なく使える「お疲れ様です」を使いましょう。社外の人に対しては「お世話になっております」などが適切です。
とんでもございません
- 文法的な解説:「とんでもない」という形容詞で一つの単語なので、「ない」の部分だけを「ございません」と丁寧語にするのは、文法的には誤り(「汚(きたな)い」を「汚ございません」と言わないのと同じ)とされてきました。
- 現在の扱い:しかし、あまりに広く使われているため、文化庁の指針でも現在は「許容」とされています。
- より美しい表現:文法を気にする相手には、「とんでもないことです」や「恐れ入ります」と言うと、より知的な印象を与えられます。
3. 読み間違いが多い漢字・熟語
パソコンやスマホの変換に頼っていると、いざ口に出して読む時に間違えてしまう言葉です。
早急
- × そうきゅう
- ○ さっきゅう
- 解説:「至急」の意味。「そうきゅう」でも辞書に載るようになりつつありますが、ニュースや公的な場では「さっきゅう」と読まれます。「さっきゅうに対応いたします」と言えるとプロフェッショナルです。
代替
- × だいがえ
- ○ だいたい
- 解説:「代替案(だいたいあん)」「代替品(だいたいひん)」。「代わり」という意味につられて「がえ」と読みたくなりますが、本来は誤りです。ただし、「大体(だいたい)」と聞き間違えやすいため、あえて「だいがえ」と読む慣習もビジネス現場では存在します。
一段落
- × ひとだんらく
- ○ いちだんらく
- 解説:「一(ひと)安心」「一(ひと)休み」と同じ感覚で読みがちですが、正しくは「いちだんらく」です。「仕事が一段落(いちだんらく)したら」が正解です。
4. 誤用から定着しつつある言葉の扱い方
言葉は生き物です。「誤用」とされてきた使い方が、圧倒的多数になって辞書に載ることもあります。
例えば、「破天荒(はてんこう)」は、本来「誰も成し得なかったことを初めて行うこと」という偉業を指す言葉ですが、今では「豪快で乱暴な様子」という意味で使われることが一般的です。
しかし、ビジネスや改まった場では、「本来の意味を知っている人」が一定数いることを忘れてはいけません。
「どちらの意味でも取れる言葉」は避け、誤解のない表現に言い換えるのが、賢い大人のコミュニケーション術と言えるでしょう。
まとめ – 正しい言葉は「信頼」をつくる
言葉の間違いを指摘することは、野暮なことかもしれません。
しかし、正しい意味を知って使い分けることは、相手への敬意であり、あなた自身の「信頼」に繋がります。
「役不足」を正しく褒め言葉として使い、「情けは人の為ならず」の精神で周囲に貢献する。
そんなふうに、言葉の本来の力を味方につけて、円滑な人間関係を築いていってください。






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