苦労して手にした成功や、人々の注目を集める華やかなブームが、驚くほど短期間で幕を閉じてしまうことがあります。
そんな、絶頂期の短さや物事のはかなさを象徴する言葉が、
「朝顔の花一時」(あさがおのはないっとき)です。
意味・教訓
「朝顔の花一時」とは、物事の繁栄している時間はごく短く、はかないことの例えです。
- 朝顔(あさがお):夏に咲くつる性の植物。
- 花一時(はないっとき):花が咲いているごく短い時間。
どんなに勢いがあり輝いて見えるものであっても、その状態を永遠に維持することは難しく、あっという間に過ぎ去ってしまうという世の無常を教えています。
語源・由来

「朝顔の花一時」の由来は、朝顔という植物が持つ独特の開花習性にあります。
朝顔は早朝に美しい花を咲かせますが、日が昇り気温が上がる昼頃には早々としぼんでしまいます。
この様子を人間の社会や人生に重ね合わせ、幸運や名声、あるいは全盛期の短さを表現するようになりました。
この言葉は、江戸時代に庶民の間で親しまれた『江戸いろはかるた』の「あ」の札に採用されたことで、日本人の生活に深く浸透しました。
かるたが起源ではなく、元々あった比喩表現がかるたに収録されたことで、人口に膾炙(かいしゃ)したというのが正確な経緯です。
なお、古くはムクゲ(木槿)の花も「朝顔」と呼ばれていました。
ムクゲも朝に咲いて夕方には散ることから、同様にはかないものの例えとして使われてきた歴史があります。
使い方・例文
一時的な流行が去ったときや、幸運な時間が長く続かなかった場面などで使われます。
単に悲観するだけでなく、「今この瞬間を大切にすべきだ」という自戒の念を込めて語られることもあります。
例文
- 若者の間で大流行したあのスイーツも、今や「朝顔の花一時」だったようだ。
- 「宝くじが当たった喜びも朝顔の花一時で、すぐに使い切ってしまった」と祖父が笑った。
- 連勝記録を伸ばしていたチームも、主力選手の怪我で「朝顔の花一時」の栄光に終わった。
- 庭に植えた珍しい花が一日で散ってしまい、まさに朝顔の花一時だと感じた。
類義語・関連語
「朝顔の花一時」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 一炊の夢(いっすいのゆめ):
栄華のはかないことの例え。 - 三日天下(みっかてんか):
きわめて短い期間しか権力を握れないこと。 - 槿花一朝の夢(きんかいっちょうのゆめ):
人の世の栄華は、ムクゲの花が朝咲いて夕方には散るように、はかないものであるということ。 - 夢幻泡影(むげんほうよう):
人生や世の中の物事は、実体がなく非常にはかないこと。
対義語
「朝顔の花一時」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 万代不易(ばんだいふえき):
永久に変わらないこと。 - 千秋万歳(せんしゅうばんぜい):
千年万年も続くこと、または長寿を祝う言葉。 - 松柏之操(しょうはくのみさお):
時代が変わっても決して変わることのない、固い志。
英語表現
「朝顔の花一時」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
Short-lived glory
意味:「短命な栄光」
解説:名声や成功が長く続かないことを端的に表す、最も一般的な表現です。
- 例文:Her popularity was a short-lived glory.
(彼女の人気は朝顔の花一時のものだった。)
A nine days’ wonder
意味:「九日間だけの驚き」
解説:一時的に世間を騒がせるが、すぐに忘れ去られてしまう物事を指す慣用句です。
- 例文:The scandal was just a nine days’ wonder.
(そのスキャンダルは、まさに朝顔の花一時のようなものだった。)
トリビア:朝顔開花のタイミング
朝顔がしぼむ早さは「はかなさ」の象徴ですが、実は朝顔が開花の準備を始めるのは「朝」ではなく「前の日の夕方」からです。
朝顔には、日が沈んで暗くなってから約10時間後に花を開くという性質があります。
つまり、夜の長さを正確に計り、最も美しい朝の光の中で咲けるよう、人知れず準備を整えているのです。
あのはかない一瞬の輝きは、決して偶然ではなく、静かな夜の間に蓄えられたエネルギーの結晶と言えるでしょう。
そう考えると、この言葉もただ「短い」と嘆くのではなく、その瞬間に全力を出し切る美しさを称えているようにも感じられます。
まとめ
「朝顔の花一時」という言葉は、物事の移ろいやすさを私たちに教えてくれます。
絶頂期が短く、はかないものであると知ることは、今手にしている幸せや成功をより深く味わうきっかけになるでしょう。
形あるものがいつか変化していくことを受け入れつつ、今この瞬間の輝きを大切に過ごしていきたいものですね。






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