槿花一朝の夢

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ことわざ 四字熟語
槿花一朝の夢
(きんかいっちょうのゆめ)
異形:槿花一朝

11文字の言葉き・ぎ」から始まる言葉

どんなに華やかな賑わいも、祭りの後の静けさを前にすると、どこか虚しさを感じることがあります。
絶頂期にあった企業が時代の波に飲まれて消えていったり、かつて一世を風靡したスターが表舞台から去っていったりする様子は、世の常と言えるかもしれません。
そうした、栄華の短さや人生のはかなさを、
「槿花一朝の夢」(きんかいっちょうのゆめ)と言います。

意味

ムクゲ
ムクゲ木槿、学名: Hibiscus syriacus)

「槿花一朝の夢」とは、人の世の繁栄や富貴は非常にはかなく、長くは続かないことのたとえです。

「槿花(きんか)」とは、夏から秋にかけて咲くムクゲ(木槿)の花を指します。
ムクゲは朝に開花し、夕方にはしぼんでしまう性質があるため、その美しさを一朝(ひとあさ)だけの短い夢に見立てて、栄華の短さを表現しています。

語源・由来

「槿花一朝の夢」の語源は、中国の唐時代の詩人・白居易(はくきょい)が作った『放言五首』という詩の一節にあります。

その詩の中に「槿花一日の栄(きんかいちじつのえい)」という言葉があり、ムクゲの花の命の短さが詠まれました。
それが平安時代の詩文集『和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)』に収録され、日本に伝わりました。
無常観を重んじる日本の文化の中で、一時の夢のような繁栄を象徴する言葉として定着したと考えられます。

なお、江戸時代には『江戸いろはかるた』の読み札として採用されたことで、庶民の間でも広く親しまれるようになりました。

使い方・例文

「槿花一朝の夢」は、かつての栄光が失われたときや、物事の移り変わりの早さを嘆く場面で使われます。
一度は大きな成功を収めたものに対して用いられるのが一般的です。

例文

  • 歴史の教科書でかつての巨大帝国の滅亡を学ぶと、まさに「槿花一朝の夢」を感じずにはいられない。
  • 宝くじで大金を得たものの、派手な生活ですぐに使い果たしてしまった彼の人生は、「槿花一朝の夢」であった。
  • 「今の人気に浮かれるな。芸能界の華やかさなど槿花一朝の夢に過ぎないのだから」と師匠に諭された。
  • かつて銀山で栄えたこの集落も今は数軒が残るのみで、まさに「槿花一朝の夢」を体現している。

文学作品での使用例

この言葉は、日本文学における「無常観」を象徴するフレーズとして、古くから多くの作家に好まれてきました。

『和漢朗詠集』(藤原公任 編)
平安時代の中期、当時の貴族たちが好んで口ずさんだ詩句を集めた詩集です。
白居易の詩を引用した箇所で、その無常さが美しく表現されています。

松樹千年終に是れ朽ちぬ、槿花一朝自から成るを。

(松の木は千年の寿命があるがいずれは朽ちる。それに比べ、ムクゲの花はわずか一朝の命だが、その短い時間に自らの盛りを全うしているのだ。)

類義語・関連語

「槿花一朝の夢」と似た意味を持つ言葉には、人生の短さや栄華の虚しさを説くものが多く存在します。

  • 邯鄲の夢(かんだんのゆめ):
    人の世の繁栄や栄華が、極めてはかないことのたとえ。
  • 一場の春夢(いちじょうのしゅんむ):
    人生の栄枯盛衰は、春の夜に見る夢のように、あっけなく消えてしまうこと。
  • 南柯の夢(なんかのゆめ):
    夢の中の出来事のように、人生の富貴や権力は一時の幻に過ぎないこと。

対義語

「槿花一朝の夢」とは対照的な意味を持つ言葉は、永続性や不変性を強調する言葉になります。

  • 万古不易(ばんこふえき):
    いつまでも変わることなく、永遠にその状態が続くこと。
  • 永久不変(えいきゅうふへん):
    物事の状態がいつまでも変わらないこと。

英語表現

「槿花一朝の夢」を英語で表現する場合、生命や美しさのはかなさを強調する言葉が使われます。

Life is but a fleeting dream

  • 意味:「人生はただのつかの間の夢である」
  • 解説:fleetingは「飛ぶように過ぎ去る」というニュアンスで、日本語の「一朝の夢」に近い感覚を持っています。
  • 例文:
    Seeing the ruins of the castle reminds me that life is but a fleeting dream.
    (城跡を見ていると、人生は槿花一朝の夢だと実感させられる。)

A nine days’ wonder

  • 意味:「数日間の驚き(一時の流行)」
  • 解説:一度大きな話題になるが、すぐに忘れられてしまう「短命な栄華」を指す際に使われる定型表現です。
  • 例文:
    His sudden popularity turned out to be a nine days’ wonder.
    (彼の突然の人気は、結局のところ槿花一朝の夢に過ぎなかった。)

知っておきたい豆知識

ムクゲ(木槿)という花は、その短命さゆえに、日本では古くから愛されてきました。
一見すると「すぐ枯れてしまう悲しい花」のようですが、実はムクゲは夏の間、毎日次から次へと新しい花を咲かせ続けます。

「昨日の花は落ちても、今日また新しい美しさが生まれる」というその性質は、単なる虚しさだけでなく、力強い生命力の象徴でもあります。
「槿花一朝の夢」という言葉が単にネガティブな意味だけでなく、どこか風流な響きを持って受け入れられているのは、そうした自然の摂理に対する日本人の深い敬意があるからかもしれません。

まとめ

一時の成功や繁栄を絶対視せず、それがいつかは終わるものだと心得ておくことは、現代社会を穏やかに生きるための知恵でもあります。
「槿花一朝の夢」という言葉は、私たちに「今この瞬間の輝き」を大切にすることを教えてくれているのかもしれません。

栄華を追い求めるのも一つの人生ですが、時には足元の花のはかなさを愛でるような、心の余裕を持ちたいものですね。
諸行無常の理(ことわり)を胸に刻むことで、日々の風景が少し違って見えることでしょう。

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