何かを知りたくて仕方がない時。心配でじっとしていられない時。あるいは、嬉しくて飛び上がりそうな時。
そんな、どうしても抑えきれない強い気持ちになった経験はありませんか?
「矢も盾もたまらず」の意味・教訓
「矢も盾もたまらず」とは、ある強い感情や欲求、衝動などが抑えきれなくなり、じっとしていられないさまを表す慣用句です。
何かに心を奪われたり、強い刺激を受けたりして、我慢できなくなる状態を指します。
多くの場合、「~したくて矢も盾もたまらず」「~という気持ちに矢も盾もたまらず」のように、具体的な行動や感情を伴って使われます。
「たまらず」は「堪らない(たまらない)」、つまり我慢できない、抑えられないという意味です。
特に教訓を含む言葉ではありませんが、抑えがたい人間の強い衝動を描写する表現です。
「矢も盾もたまらず」の語源
「矢も盾もたまらず」の語源には諸説ありますが、はっきりとは分かっていません。
有力な説の一つは、戦場で敵の攻撃が激しく、矢を防ぐ盾さえも構っていられない、あるいは武器である矢や盾を放り出してでも行動せずにはいられないほど切迫した状況から転じた、とするものです。
命の危険が迫る中で、防御(盾)や攻撃(矢)といった本来すべきことすら構っていられないほどの、差し迫った状態を表したと考えられます。
別の説では、「矢」も「盾」も具体的な武具ではなく、「あれもこれも」「何もかも」といった物事を広く指す言葉として使われ、「あれこれ構っていられない」「何もかも放り出したいほど」という強調表現だとも言われます。
いずれにしても、何かを我慢したり、じっとしていたりすることができない、切羽詰まった状況や強い衝動を表す言葉として定着しました。
「矢も盾もたまらず」が使われる場面と例文
強い好奇心、心配、不安、喜び、興奮といった感情や、笑いやくしゃみなどの生理的な衝動を抑えきれない時に使われます。
「いても立ってもいられない」気持ちになり、何か行動を起こさずにはいられない状況で用いられることが多いです。
例文
- 「発表会での息子の出番が近づき、「矢も盾もたまらず」会場の後ろで見守っていた。」(心配・そわそわ)
- 「友人からの面白い話の続きが気になって、「矢も盾もたまらず」電話をかけてしまった。」(好奇心)
- 「合格通知を受け取った彼は、「矢も盾もたまらず」家族に報告するために家へ飛んで帰った。」(喜び・興奮)
- 「彼の冗談があまりにもおかしくて、「矢も盾もたまらず」吹き出してしまった。」(笑いの衝動)
「矢も盾もたまらず」の類義語・言い換え表現
「矢も盾もたまらず」と似たような、抑えきれない気持ちや状態を表す言葉はいくつかあります。
- 居ても立っても居られない:心配や興奮などで、じっとしていられないさま。行動を促す気持ち。
- ~(し)たくてたまらない:ある行動への強い欲求を抑えられないさま。
- ~(せ)ずにはいられない:ある行動を抑えることができず、自然としてしまうさま。
- 我慢できない/抑えきれない:感情や欲求、生理現象などをこらえることができないさま。
- うずうずする:何かをしたくて、じっとしていられない気持ち。
これらの表現は、「矢も盾もたまらず」と同様に強い衝動を示しますが、「矢も盾もたまらず」はやや古風で、切迫感の度合いが強いニュアンスを持つことがあります。
「矢も盾もたまらず」の対義語
「矢も盾もたまらず」が抑えきれない衝動を表すのに対し、感情や行動をコントロールし、落ち着いている状態を示す言葉が対義語として考えられます。
- 自制する:自分の感情や欲望などを抑えること。
※衝動に駆られる「矢も盾もたまらず」とは逆の、理性的なコントロールが働いている状態。 - 冷静沈着(れいせいちんちゃく):感情に動かされず、落ち着いているさま。
※感情に突き動かされる「矢も盾もたまらず」とは対照的な態度。 - 平然としている:何事もないかのように落ち着き払っているさま。
※動揺や興奮が見られない点で対照的。 - 我慢する/こらえる:苦しさや衝動などを耐え忍ぶこと。
※「たまらない(我慢できない)」状態とは逆。
「矢も盾もたまらず」の英語での類似表現
英語で「矢も盾もたまらず」に近いニュアンスを表現するには、以下のような言い方があります。
- can’t help (doing something) / cannot help but (do something)
意味:~せずにはいられない、思わず~してしまう。
※抑えきれない衝動や行動を表す一般的な表現です。 - be dying to (do something)
意味:~したくてたまらない、~したくて死にそうだ(比喩的)。
※強い欲求を表す口語的な表現です。 - be unable to contain oneself
意味:(興奮・笑い・怒りなどで)我慢できない、自分を抑えられない。 - be itching to (do something)
意味:~したくてうずうずしている。
これらの表現は、文脈に応じて「矢も盾もたまらず」が示す抑えきれない感情や衝動を伝えることができます。
まとめ – 抑えきれない衝動を表す言葉
「矢も盾もたまらず」は、強い感情や欲求、衝動に駆られて、どうしてもじっとしていられない、我慢できない状態を表す慣用句です。
語源は戦場の切迫した状況など諸説ありますが、いずれも抑えがたい強い気持ちを示唆しています。
類義語には「いても立ってもいられない」、対義語には「自制する」「冷静沈着」などがあります。
英語では “can’t help doing” などが近い表現です。
この言葉は、人間の抑えきれない強いエネルギーや感情の動きを生き生きと伝える、日本語ならではの表現と言えるでしょう。
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