噂をすれば影が差す

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ことわざ
噂をすれば影が差す
(うわさをすればかげがさす)
短縮形:噂をすれば影
異形:噂を言えば影が差す

12文字の言葉」から始まる言葉

友人と集まって誰かの噂話をしている時、ふと部屋のドアが開き、話題の主本人が入ってきた。
あるいは、上司の愚痴をこぼしていたら、背後にその上司が立っていた。

そんな心臓が止まりそうになる瞬間や、不思議な偶然を、
「噂をすれば影が差す」(うわさをすればかげがさす)と言います。

この言葉は、単なる偶然の驚きを表すだけでなく、「人の言葉には不思議な力が宿る」という昔の人の感覚や、「隠し事はできないものだ」という戒めを今に伝えています。

意味・教訓

「噂をすれば影が差す」とは、人の噂をしていると、ちょうどその当人がその場に現れるものである、という意味です。

  • 驚きの表現
    話題にしていた人が偶然現れた時の、「まさか」という驚きを表す。
  • 処世術としての戒め
    壁に耳あり障子に目あり。「本人がいないからといって、軽々しく噂や悪口を言うべきではない」という教訓が含まれる。

日常会話では、後半を省略して「噂をすれば影」と言うことも一般的です。

「影」と「差す」の正体

現代語の感覚では少し分かりにくい言葉の成り立ちを解説します。

  • (かげ):
    光の影(シルエット)のことではなく、古語で「人の姿・形」や「気配」を意味します。
    「人影(ひとかげ)」という言葉にその名残があります。
  • 差す(さす):
    日が差すように、「姿が現れる」「見えてくる」という意味です。

つまり、「噂をしていると、その人の姿がパッと現れる」という状況を視覚的に描写した言葉です。

語源・由来

「噂をすれば影が差す」に、特定の誰かが作ったという明確な起源や、出典となる古典文学はありません。

この言葉は、江戸時代の日本の生活の中から自然発生的に生まれたと考えられています。

当時の長屋暮らしは壁が薄く、隣近所の距離が非常に近いものでした。
そのため、「こそこそ話をしてもすぐに本人に聞こえてしまう」「噂をしていると、すぐに本人がやってくる」というのは、日常茶飯事の光景でした。

そうした生活実感から、「噂話というものは、まるで磁石のように本人を引き寄せてしまうものだ」という認識が広まり、ことわざとして定着したと言われています。

使い方・例文

日常会話において、「話題にしていた人物が偶然現れた時」に使われます。
「悪口」の場面で使われるイメージが強いですが、待ちわびていた人が来た時や、連絡が来た時など、ポジティブな場面でも問題なく使用できます。

例文

  • 友人・日常
    「彼、遅いねと話していたらちょうど店に入ってきた。噂をすれば影が差すだね」
  • 学校・職場
    「噂をすれば影が差すと言うけれど、厳しいと評判の田中先生の話をしていたら、本当に廊下の向こうから歩いてきた」
  • 連絡・通知
    「母さんの還暦祝いどうしようかと妻と相談していたら、実家から電話がかかってきた。噂をすれば影が差すとはこのことだ」
  • 会話の切り出し
    「おや、噂をすれば影。ちょうど今、君の活躍について話していたところだよ」

類義語・関連語

「噂をすれば影が差す」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 呼ぶより謗れ(よぶよりそしれ):
    人をわざわざ呼ぶよりも、その人の悪口(謗り)を言っているほうが、本人が早くやって来るという意味。「悪口は特に本人を引き寄せやすい」という皮肉が込められています。
  • 噂を言えば影が差す(うわさをいえばかげがさす):
    「すれば」を「言えば」と言い換えた形。意味は同じです。

「人の噂も七十五日」は、「噂は長続きしない」という意味であり、「本人が現れる」という意味はないため、類義語ではありません。

英語表現

「噂をすれば影が差す」を英語で表現する場合、以下のフレーズが定型句として使われます。

Speak of the devil.

  • 直訳:悪魔の話をすると。
  • 意味:「噂をすれば影だね」
  • 解説:元々は “Speak of the devil, and he shall appear.”
    (悪魔の話をせよ、そうすれば彼は現れるだろう)ということわざです。
    かつては「不吉なものを呼び寄せてしまう」という迷信的な意味合いでしたが、現代では単に「噂をしていた人が来た」という軽いジョークとして使われます。
  • 例文:
    Hi Tom! We were just talking about you. Speak of the devil!
    (やあトム! ちょうど君の話をしていたんだ。噂をすれば影だね!)

噂にまつわる豆知識

中国では「英雄」が現れる

「噂をすると本人が来る」という現象は世界共通ですが、現れる対象には文化の違いがあります。
英語圏では「悪魔(devil)」ですが、中国では歴史上の英雄が現れます。

  • 「説曹操,曹操就到」(曹操の話をすると、曹操がやって来る)

『三国志』の英雄、曹操(そうそう)のことです。
彼は情報収集能力に長け、軍の動きも神出鬼没だったため、「うかつに曹操の話をすると、すぐに本人が聞きつけてやって来る」と恐れられました。
そこから転じて、日本と同じように「噂をすれば影」の意味で使われています。

まとめ

「噂をすれば影が差す」は、偶然の面白さを表すと同時に、私たちの言葉遣いに「慎み」を求める先人の知恵でもあります。

誰かの話をする時は、いつその人が現れてもいいように、温かい話題や前向きな言葉を選びたいものです。そうすれば、「影が差した」時にも、笑顔でその人を迎えることができるでしょう。

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