意味
「早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく)」とは、朝早く起きれば、健康に良い影響があったり、仕事がはかどったりして、何かと良いことがあるという意味です。
「三文」とは一文銭三枚の値のことで、ごくわずかな金額を指します。
つまり、「たとえわずかな利益であっても、寝ているよりはましだ」という、控えめながらも確実なメリットを説いた教訓です。
なお、一般的に「徳」と書かれますが、利益を意味する「得」が使われることもあります。
語源・由来
「早起きは三文の徳」の由来については、次の奈良の鹿の話のほか、中国・南宋の詩の一句がもとだとする説も知られています。
奈良の「鹿」にまつわる伝承
奈良を舞台にした落語で伝えられる話です。
神の使いとされる奈良の鹿を殺すと極刑になるため、朝、家の前で鹿が死んでいると、まだ眠っている隣の家の前へこっそり移しました。
隣の者も同じようにその隣へ移すので、奈良の人はみな早起きになったといいます。
ただし、ことわざ研究家からは、鹿を殺した科料が三文では安すぎるなど、この話には矛盾があるとの指摘もあります。
使い方・例文
朝の時間を有効に活用できたときや、早朝から活動して幸運に巡り合った際に使われます。
例文
- 始発電車に乗って座って通勤できたのは、まさに早起きは三文の徳だ。
- 誰もいない静かなオフィスで仕事が捗る。早起きは三文の徳だ。
- 早起きは三文の徳というから、庭の草むしりを朝飯前に済ませた。
誤用・注意点
この言葉は、早起きのメリットを伝えるものですが、「三文」という言葉が「ごくわずか」という意味であることを忘れてはいけません。
「早起きすれば大きな富を築ける」といった誇大なニュアンスではなく、あくまで「ささやかだけれど、やらないよりはずっと良い」という謙虚な成功体験に対して使うのが本来の形です。
類義語・関連語
「早起きは三文の徳」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 朝起きは七つの徳(あさおきはななつのとく):
早起きには多くの利益があるということ。 - 朝起き千両、夜起き百両(あさおきせんりょう、よおきひゃくりょう):
朝早く起きて働くほうが、夜遅くまで起きて働くよりはるかに得だという教え。 - 朝の一時は晩の二時に当たる(あさのひとときはばんのふたときにあたる):
朝は仕事がはかどり、朝の一時(約二時間)の働きは晩の二時(約四時間)に相当するということ。
対義語
「早起きは三文の徳」とは対照的な、遅寝や寝坊のデメリットを説く言葉です。
- 朝寝八石の損(あさねはちこくのそん):
朝寝坊をすると健康を損ない、仕事の能率も下がって、大きな損を招くという戒め。
英語表現
「早起きは三文の徳」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。
The early bird catches the worm
「早起きの鳥は虫を捕らえる」という有名なことわざです。
「人より早く行動すればチャンスを掴める」というニュアンスで、ビジネスシーンでも頻繁に登場します。
If you want to get the best tickets, you should go now. The early bird catches the worm.
(一番いいチケットが欲しいなら今行くべきだ。早起きは三文の徳と言うだろう。)
Early to bed and early to rise makes a man healthy, wealthy, and wise
「早寝早起きは人を健康に、裕福に、そして賢くする」という言葉が、ベンジャミン・フランクリンの『貧しいリチャードの暦』1735年版に載っています。
ただしフランクリンが作った言葉ではありません。
この形で確認できる早い例は1639年のジョン・クラーク『Paroemiologia』で、早起きを説く同趣旨のことわざはさらに古く、1496年の英語文献ではすでに「古いことわざ」として扱われています。
フランクリンはそれを暦に載せて世に広めた側です。
南宋の詩に「早起き三日で一日分」の句
早起きの得を説く言い回しは、中国の詩にも見られます。
南宋の役人で詩人の楼鑰(1137〜1213年)は、詩文集『攻媿集』に収めた「午睡戯作」を、次の句で始めています。
早起三朝當一工
(三日早起きすれば、一日分の働きになる)
ただし詩の続きで楼鑰は、年を取ってからは眠るのが好きになり、たまに夜明け前に起きても、また寝直して昼まで眠ってしまうと詠んでいます。
「早起きは三文の徳」はこの句がもとになったとする説もありますが、「三朝」がどうして「三文」になったのかははっきりしません。
三日で一日分という数え方と、三文というわずかなお金とでは、早起きの得の見積もり方がずいぶん違います。















コメント