少しでも自分を良く見せようとしたり、その場を取り繕おうとして発した言葉が、かえって自分の首を絞める結果になることがあります。そんなふうに、自らの言動によって自分自身を不利な状況に追い込んでしまうことを、「墓穴を掘る」(ぼけつをほる)と言います。
意味・教訓
「墓穴を掘る」とは、自分の言動が原因となって、自分自身が不利な状況や破滅を招くという意味です。
誰かに陥れられたわけではなく、良かれと思った行動や、うっかり口にした一言が裏目に出て、結果的に自分の立場を危うくしてしまう自滅的な状況を指します。
語源・由来
「墓穴を掘る」には、特定の歴史的な出典や物語はありません。
自らを葬るための穴を自分自身で掘ってしまうという行為を、自ら身を滅ぼす行動に例えた言葉です。
なお、英語にも「dig one’s own grave(自分の墓を掘る)」という全く同じ発想の慣用句が存在しますが、日本語の「墓穴を掘る」がこの英語を起源(翻訳借用)としているという明確な文献的根拠はありません。
洋の東西を問わず、人間の普遍的な想像力から自然発生的に生まれた比喩表現と考えられています。
使い方・例文
「墓穴を掘る」は、嘘やごまかしが露呈した時や、余計な一言で事態を悪化させてしまった場面で使われます。
- 嘘を隠そうと饒舌になり、かえって墓穴を掘る結果となった。
- 相手を論破しようとした一言で墓穴を掘ることになった。
- 知ったかぶりをして墓穴を掘るくらいなら黙っていた方がいい。
類義語・関連語
「墓穴を掘る」と似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 自業自得(じごうじとく)
自分の悪行の報いを自分自身が受けること。 - 身から出た錆(みからでたさび)
自分の悪い行いが原因で、自ら苦しむこと。 - 自縄自縛(じじょうじばく)
自分の言動によって自分自身が動きをとれなくなること。 - 自分の首を絞める(じぶんのくびをしめる)
自分の言動が原因で、自分自身を苦しい立場に追い詰めること。
「自業自得」や「身から出た錆」は明確な悪行に対する報いというニュアンスが強いですが、「墓穴を掘る」は悪意のない失言や、その場しのぎの行動が裏目に出た場合にも広く使われます。
英語表現
「墓穴を掘る」を英語で表現する場合、以下のフレーズが適しています。
dig one’s own grave
直訳:自分の墓を掘る。
意味:日本語の「墓穴を掘る」と全く同じ発想で、自滅的な行為や発言を指します。
If you keep lying, you’re just digging your own grave.
(嘘をつき続けるなら、自分で墓穴を掘るだけだ。)
shoot oneself in the foot
直訳:自分の足を撃つ。
意味:自分の愚かな言動によって、自らの計画や立場を台無しにしてしまうこと。
He shot himself in the foot by complaining to the boss.
(彼は上司に不満を言って墓穴を掘った。)
「陰陽師の呪い」説は俗説、確かな出典はない
墓穴を掘るの由来としては、陰陽師が人を呪うときの戒めの言葉「人を呪わば穴二つ」に結びつける説が広く語られています。
しかしこの説には確かな裏付けがなく、墓穴を掘るという句自体が陰陽師の呪術と直接結びつく記録は見つかっていません。
俗説の域を出ないというのが実情です。
言葉自体の成り立ちは単純で、自分の死後に入る墓穴を自分で掘ってしまう、という状況をそのまま比喩にしたものです。
将来の自分を追い詰める行為をするという意味は、この字面だけで十分に説明できます。
確実な出典を持たない言葉であっても、比喩の構造がわかりやすいために、古くから広く使われてきました。









コメント