意味
「累卵の危うき(るいらんのあやうき)」とは、卵を積み重ねたように、ほんの少しの拍子で今にも崩れてしまいそうなほど不安定で、危うい状態にあることです。
「累卵」とは卵を積み重ねること、「危うき」は危ないことを表します。
土台が不安定なまま物事を進めることの脆さと、その裏に潜む大きなリスクへの警告としての教訓を含んでいます。
語源・由来
中国の戦国時代、弁舌家の范雎が、秦の使者に託して秦王に伝えさせた言葉に由来します。
秦の使者・王稽は范雎を秦に連れ帰り、范雎の言葉として、秦の昭王に次のように伝えました。
秦王之國危於累卵、得臣則安
(秦王の国は卵を積み重ねたよりも危うく、私を用いれば安泰になる)
しかし王はすぐには信じず、范雎は粗末な扱いのまま一年余り待たされました。
この比喩が歴史書『史記』に記され、極めて危険な状態を表す故事成語となりました。
使い方・例文
「累卵の危うき」は、組織の存亡や大きな失敗のリスクが迫っているような、非常に緊迫した場面で使われます。
- 文化祭の準備は、もはや累卵の危うきにある。
- 長年続いた実家の工場が、累卵の危うきに直面している。
類義語・関連語
「累卵の危うき」と似た意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
風の前に置かれた灯火のように、いつ消えてもおかしくない危険な状態。 - 危機一髪(ききいっぱつ):
髪の毛一本ほどのわずかな差で危険が迫っている、非常に切迫した状態。 - 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):
割れやすい薄い氷の上を歩くように、非常に危険で不安な状況にあること。 - 一触即発(いっしょくそくはつ):
少し触れただけですぐに爆発しそうな、極めて緊迫した危険な状態。
対義語
「累卵の危うき」と反対の意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 盤石(ばんじゃく):
非常に大きな岩のように、極めて安定していて揺るがないこと。 - 安泰(あんたい):
無事で安らかなこと。何の心配もなく落ち着いている状態。 - 堅固(けんご):
守りや構造が非常にしっかりしていて、容易には崩れないこと。
英語表現
a house of cards
意味:トランプで作った家のように、非常に不安定ですぐに崩れそうな様子を表す定型表現です。
Their entire strategy was built like a house of cards.
(彼らの戦略全体が、トランプの家のように脆いものだった。)
on thin ice
意味:薄氷を踏むのと同じく、危険な状況や立場にいることを示す日常的な表現です。
He is on thin ice with the manager after making that mistake.
(あのミスを犯した後、彼は部長との関係で危険な立場にある。)
「累卵の危うき」は崩れる前の状態を指す
「累卵」という表現は、すでに崩壊が始まっている悲惨な状況には使われません。
卵が高く積み上げられ、グラグラと揺れながらも「かろうじてギリギリのバランスを保っている」という、極限の瞬間を切り取った言葉です。
現代の組織運営やプロジェクトにおいて、「もうダメだ」と投げ出すのではなく、「今は危ういが、まだ手立てはある」という強烈な緊張感を共有する際に選ばれることがあります。
単なる悲観的な表現としてではなく、関係者に危機感を促し、事態の立て直しを図るための「冷静な現状分析」として用いるのが、実践的な使い方です。











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