今にも最悪の事態が降りかかりそうな、ほんの少しの狂いも許されない極限の緊張状態。
このような状況を表すのが、「危機一髪」(ききいっぱつ)です。
意味
「危機一髪」とは、髪の毛一本ほどの、ごくわずかな差で非常に危険な状態に陥りそうな瀬戸際を表します。
今にも最悪の事態が降りかかろうとしている、あるいは辛うじてそれを免れたという、極度の緊張と安堵が入り交じる緊迫した瞬間を指す言葉です。
- 危機(きき):あぶない状態や、差し迫った危険。
- 一髪(いっぱつ):髪の毛一本分の、ごくわずかな隙間。
語源・由来
「危機一髪」は、中国の唐の時代に活躍した文人である韓愈(かんゆ)が記した手紙の文章に由来します。
彼は衰退していく儒教の教えを憂い、その危機的な状況を「一髪、千鈞(せんきん)を引く」と表現して仲間に伝えました。
千鈞とは現代の単位で数トンを優に超えるほどの巨大な重さであり、それを今にも切れそうな一本の髪の毛で吊り下げているという、極限まで張り詰めた描写です。
この重りと髪の毛の比喩が長い年月を経て形を変え、極めて危険な状態を表す四字熟語として定着しました。
使い方・例文
「危機一髪」は、事故や失敗を寸前で回避した時や、勝負の瀬戸際に立たされている場面で使われます。
- トラックが目前まで迫ったが、急ブレーキで危機一髪衝突を免れた。
- 山道で足を滑らせたが、近くの木をつかんで危機一髪転落を避けた。
- 締切の数分前にメールが送信でき、危機一髪で契約に間に合った。
誤用・注意点
「危機一髪」を「危機一発」と書くのは漢字の間違いです。「一発アウト」や「一発逆転」といった言葉の響きに引っ張られやすいですが、語源の通り「髪の毛一本」の危うさを表す言葉であるため「一髪」が正しい表記となります。
類義語・関連語
「危機一髪」と同様に、極めて危険な状況を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 間一髪(かんいっぱつ):
髪の毛一本が入るほどのわずかな隙間や、ギリギリの時間を指す。 - 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):
壊れやすい薄い氷の上を歩くような、非常に危うい状況に臨むこと。 - 九死に一生を得る(きゅうしにいっしょうをえる):
ほとんど助かる見込みのない絶体絶命の危機から、奇跡的に助かること。
「危機一髪」と「間一髪」の違い
どちらも非常に危険な状態を指しますが、焦点の当て方に明確な違いがあります。
「危機一髪」は状況そのものの危険度を強調し、「間一髪」は時間が迫っているギリギリのタイミングを強調します。
対義語
「危機一髪」と反対に、安定していて不安要素のない状態を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 安泰(あんたい):
何事も穏やかで、安全な状態が保たれていること。 - 盤石(ばんじゃく):
どっしりとした大きな岩のように、極めて安定していて揺るぎないこと。 - 順風満帆(じゅんぷうまんぱん):
追い風を帆いっぱいに受けて進む船のように、物事が順調に運ぶこと。
英語表現
by a hair’s breadth
直訳すると「髪の毛の幅で」となり、日本語の「一髪」と全く同じ感覚で使われる表現。
He escaped the accident by a hair’s breadth.
(彼は危機一髪のところで事故を逃れた。)
a close call
事故や不運を間一髪で避けた際や、ヒヤリとした瞬間に日常会話で頻繁に使われるフレーズ。
That was a close call, but everyone is safe.
(危機一髪だったが、全員無事だ。)
髪一本に7.6トン
語源に登場する「千鈞」の「鈞(きん)」とは、古代中国で使われていた重さの単位です。
一鈞は約7.6キログラムに相当し、千鈞となれば7.6トンを超える質量になります。
現代の中型トラックに匹敵するこの重さを、目に見えるかどうかもわからない一本の髪の毛で引っ張るという描写が、言葉の原点です。









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