目の前にある困難を一気に解決してくれるような強力な手段は、同時に、扱いを一歩間違えれば自分自身を深く傷つけてしまう危うさを秘めているものです。
大きな恩恵と引き換えに、それ相応の覚悟や注意を求められるような状況を、
「諸刃の剣」(もろはのつるぎ)と言います。
意味
「諸刃の剣」とは、一方では非常に大きな利益をもたらすが、他方では自分自身が深刻な損害を被る危険性も同時にはらんでいるという、二面性を持った物事のたとえです。
メリットとデメリット、あるいは恩恵とリスクが表裏一体であることを指します。
語源・由来

「諸刃の剣」の語源は、刀身の両側に鋭い刃がついている剣の構造そのものにあります。
片側にしか刃がない一般的な刀と異なり、両側に刃がある「諸刃(両刃)」の剣は、相手を突く力が非常に強力です。
しかし、その鋭さゆえに、扱い方を一つ間違えれば自分の方を向いている刃で自らを傷つけてしまう恐れがあります。
この「非常に強力な武器でありながら、使用者にとっても相応の危険が伴う」という物理的な特性が転じて、現代のような比喩表現として定着しました。
使い方・例文
「諸刃の剣」は、大きな力を発揮する手段や、画期的な技術、人の特殊な才能など、その危うさを指摘する文脈で使われます。
「便利さ」の裏に潜む「リスク」を警告する際に適した言葉です。
例文
- インターネットは、使い方次第で諸刃の剣となる。
- 強力な新薬の使用は、まさに諸刃の剣だ。
- 彼の突出した才能は、時に諸刃の剣となり得る。
- 自由すぎる校風は、生徒にとって諸刃の剣だ。
誤用・注意点
「諸刃の剣」を「単に悪いことが重なること」や「二つの悪い選択肢があること」という意味で使うのは誤りです。
あくまで「非常に役に立つ(メリットがある)」ことが大前提であり、その強すぎる力ゆえに「自分を傷つける恐れ(デメリット)がある」という対比構造で使用します。
また、読み方について「もろはのけん」と読むことも間違いではありませんが、一般的には「もろはのつるぎ」と読まれることが定着しています。
類義語・関連語
「諸刃の剣」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 功罪相半ばする(こうざいあいなかばする):
良い面と悪い面が、どちらも同じくらい存在していること。 - 毒にも薬にもなる(どくにもくすりにもなる):
扱い方によって、非常に有益なものにもなれば、有害なものにもなること。 - 劇薬(げきやく):
効果が極めて高いが、使い方を誤ると命に関わる危険があること。転じて、大きな変革をもたらすがリスクも高い手段。
対義語
「諸刃の剣」とは対照的な意味を持つ言葉は、リスクの低さや無害さを表すものになります。
- 安全策(あんぜんさく):
危険なことを避け、確実で安全な方法をとること。 - 毒にも薬にもならない(どくにもくすりにもならない):
あってもなくても大した影響がなく、害もなければ利益もないこと。
英語表現
「諸刃の剣」を英語で表現する場合、日本語と全く同じ発想の定型句が存在します。
a double-edged sword
「両刃の剣」
日本語の「諸刃の剣」の直訳であり、メリットとデメリットの二面性を表す最も一般的な表現です。
- 例文:
New technology can be a double-edged sword.
(新しいテクノロジーは諸刃の剣になり得る。)
cut both ways
「両方に切れる」
議論や状況が、有利にも不利にも働くというニュアンスで使われるイディオムです。
- 例文:
This rule might cut both ways.
(この規則は諸刃の剣(有利にも不利にも働く可能性)だ。)
まとめ
「諸刃の剣」は、物事が持つ強大な力とその裏側にある危うさを、鋭利な武器の姿を借りて鮮やかに描き出した言葉です。
私たちはつい、便利な道具や目覚ましい成果といった「光」の側面ばかりに目を奪われがちです。
しかし、その力が大きければ大きいほど、自分自身を傷つける「影」のリスクもまた深くなることを、この言葉は教えてくれています。
大きな決断を下すときや、強力な手段を手にするとき、一度立ち止まって「刃」が自分の方を向いていないかを確認する。
そんな慎重な視点を持つことで、この言葉の持つ教訓を日常に活かすことができることでしょう。









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