悔しい思いをした後に、相手がいない場所でこっそりと悪口や不満を言いたくなる。そんな経験は誰にでもあるものです。
面と向かって言い返す勇気はないけれど、陰で強がってストレスを発散する。そんな少し情けない、しかし人間臭い姿を指す言葉が「負け犬の遠吠え」(まけいぬのとおぼえ)です。
意味
「負け犬の遠吠え」とは、弱い者が、相手のいない場所で陰口を叩いたり、虚勢を張ったりすることのたとえです。
臆病な人が、直接対決を避けて陰で強がっている様子をあざけって言う場合に使われます。
単に「文句を言う」だけでなく、「本人の前では何も言えないくせに」という軽蔑のニュアンスが強く含まれています。
語源・由来
「負け犬の遠吠え」の由来は、言葉通り、犬同士が喧嘩をした際の習性にあります。
犬は、喧嘩に負けると尻尾を巻いて逃げ出しますが、相手から十分に距離が離れて安全な場所まで来ると、そこから大きな声で吠え立てることがあります。
この「悔しいけれど怖いから近づけない、でも何か言いたい」という犬の様子を、人間の行動に重ね合わせたのがこの言葉です。
特定の古典や物語に由来するものではなく、古くから日常的な比喩として定着した表現です。
使い方・例文
「負け犬の遠吠え」は、他人の情けない行動を批判する場合や、自分自身の愚痴を自虐的に言う場合に使われます。
ビジネスシーンだけでなく、スポーツの試合後や学校生活など、勝負や上下関係があるあらゆる場面で使用されます。
例文
- 試合に完敗した後に審判の文句を言うのは、「負け犬の遠吠え」でしかない。
- 上司の前では愛想笑いをしているくせに、居酒屋でだけ威勢がいいなんて、まさに「負け犬の遠吠え」だ。
- ここであれこれ言っても「負け犬の遠吠え」になるから、次のテストで結果を出して見返そう。
誤用・注意点
この言葉は、基本的に相手を「臆病者」「卑怯者」と罵る強い言葉です。
冗談が通じる親しい間柄や、自分自身を戒めるために使う場合は問題ありませんが、他人に対して使うと喧嘩の原因になりかねません。
「今の発言は負け犬の遠吠えですね」などと面と向かって指摘するのは、相手を深く傷つけるため注意が必要です。
類義語・関連語
「負け犬の遠吠え」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 陰弁慶(かげべんけい):
家の中などの安心できる場所では威張り散らすが、外に出ると意気地がない人のこと。「内弁慶」とも言います。 - 弱い犬ほどよく吠える(よわいいぬほどよくほえる):
実力のない臆病な者ほど、虚勢を張って騒ぎ立てるという意味。
「負け犬の遠吠え」とほぼ同じ意味合いで使われます。 - 捨て台詞(すてぜりふ):
立ち去り際に言い放つ、脅しや負け惜しみの言葉のこと。
対義語
「負け犬の遠吠え」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
弱い者でも、追い詰められて必死になれば、強い者に反撃して打ち負かすことがあるというたとえ。
逃げて吠えるだけの「負け犬」とは対照的な行動です。 - 能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす):
本当に実力がある者は、普段はそれを誇示したり騒ぎ立てたりはしないということ。
英語表現
「負け犬の遠吠え」を英語で表現する場合、犬を使った似たようなことわざが存在します。
Barking dogs seldom bite.
- 意味:「よく吠える犬はめったに噛まない」
- 解説:日本の「弱い犬ほどよく吠える」に近く、口先だけで行動が伴わない人や、見かけ倒しの人を指して使われます。
- 例文:
Don’t worry about his threats. Barking dogs seldom bite.
(彼の脅しなんて気にするな。負け犬の遠吠えだよ。)
言葉の背景
ちなみに、この言葉にある「負け犬」というフレーズは、2000年代初頭に書籍のタイトル(酒井順子著『負け犬の遠吠え』)として大流行しました。
当時は「30代以上・未婚・子なし」の女性を自虐的に、あるいは開き直って「負け犬」と定義し、社会現象となりました。
しかし、ことわざとしての本来の意味は、性別や未既婚に関係なく、単に「勝負に負けて陰でこそこそ言うこと」を指します。
世代によっては「負け犬」と聞くと当時の流行語を連想する場合があるため、文脈の違いを理解しておくと会話がスムーズになるでしょう。
まとめ
悔しさのあまり陰口を言いたくなるのは人の常ですが、それは周囲から見れば「遠吠え」と映ってしまうことが多いものです。
「負け犬の遠吠え」は、そんな自分の弱さを自覚するための戒めとしても機能します。
陰で不満を言うエネルギーを、次は実力を磨くための努力に変えていけると素敵ですね。







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