老馬の智

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故事成語
老馬の智
(ろうばのち)

5文字の言葉」から始まる言葉
老馬の智 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

最新の技術やデータ分析がどれほど進化しても、長年その道一筋に歩んできた人の「勘」や「経験則」には敵わないことがあります。
未知のトラブルに直面した時、ベテランの何気ない一言が解決の糸口になることは珍しくありません。

「老馬の智」(ろうばのち)とは、そのような経験豊かな人が持つ、物事を正しく見通す優れた知恵を称える言葉です。

意味・教訓

「老馬の智」とは、長い経験を積んだ人が備えている、物事を的確に判断する優れた知恵のことです。

単に年を取っているだけでなく、数々の修羅場や経験を経て培われた「生きた知恵」を指します。「老馬」という言葉自体が、経験を積んだ有能な人物の比喩として使われます。

語源・由来

「老馬の智」の語源は、中国の古典『韓非子』説林上(せつりんじょう)に記された、春秋時代の史実に基づきます。

斉(せい)の君主である桓公(かんこう)が、名宰相の管仲(かんちゅう)らを従えて、遠方の「孤竹国」へ遠征した時のことです。
春に出発した軍勢が帰路につく頃には冬になっており、景色の一変した山中で道を見失ってしまいました。

軍が混乱し立ち往生する中、管仲は「老いた馬の知恵を利用すべきだ(老馬之智可用也)」と提案します。
彼が軍の中から老馬を解き放ち、その後をついて行かせたところ、馬は迷うことなく進み、一行は無事に道を見つけることができたといいます。

この故事から、経験豊富な者の知恵は尊重すべきであり、迷った時のよき指針になるという教訓が生まれました。

使い方・例文

「老馬の智」は、ベテランの意見に助けられた時や、年長者の生活の知恵に感銘を受けた時に使われます。

ビジネスシーンで上司を敬う際にも使われますが、日常生活において祖父母や地域の年長者の知恵を称賛する際にも適しています。

例文

  • ネットで調べても分からなかった染み抜きの手順を、母は一瞬で解決してくれた。まさに「老馬の智」だ。
  • 新規プロジェクトが行き詰まった時、定年目前の社員のアドバイスで突破口が開けた。「老馬の智」侮るべからずである。
  • 登山ルートの判断に迷ったが、ガイド歴30年の彼の「老馬の智」に従ったおかげで、無事に嵐を回避できた。

誤用・注意点

基本的には敬意を表す言葉ですが、使用する相手や文脈には配慮が必要です。

  • 「老」の字の印象
    「老馬」という言葉の響きから、相手によっては「年寄り扱いされた」「もう現役ではないと言われた」と否定的に受け取られる可能性があります。
    気心の知れた相手や、明らかに目上の人を立てる文脈以外では注意が必要です。
  • 自画自賛の禁止
    「私には老馬の智があります」と自分で言うのは、傲慢で滑稽な印象を与えます。
    あくまで他者を称賛する言葉です。

類義語・関連語

「老馬の智」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 亀の甲より年の功(かめのこうよりとしのこう):
    年長者の経験や知恵は尊いものであり、尊重すべきだということ。最も一般的で日常的に使われる表現。
  • 一日の長(いちじつのちょう):
    経験や技能などが、他人よりも少し優れていること。
  • 昔取った杵柄(むかしとったきねづか):
    若い頃に身につけた腕前が、年をとってからも衰えていないこと。

違いのポイント

「亀の甲より年の功」が年齢による知恵全般を指すのに対し、「老馬の智」は「困難な状況や迷った時に、解決へと導く判断力」というニュアンスを強く含みます。

英語表現

「老馬の智」を英語で表現する場合、由来に基づいた直訳的な表現が存在します。

An old horse knows the way.

  • 意味:「老いた馬は道を知っている」
  • 解説:中国の故事と同様の意味で使われる、英語圏のことわざです。

Experience counts.

  • 意味:「経験がものを言う」
  • 解説:”counts” は「重要である」「価値がある」という意味。「やはり経験が大切だ」という文脈で使われるシンプルな表現です。
  • 例文:
    In a crisis, experience counts.
    (危機の時こそ、経験がものを言う。)

逸話の豆知識

「老馬の智」の故事には、対になる有名な続きのエピソードがあります。

道に迷った軍隊を「老馬」が救った後、今度は水不足に陥りました。
その時、もう一人の重臣である湿朋(しっぽう)が、「蟻(あり)は冬になると山の南側に巣を作る。
その土の下には水脈があるはずだ」と言って地面を掘らせ、見事に水源を見つけました。

このことから、古くは「老馬の智、蟻の意(ありのこころ)」とセットで呼ばれ、賢人たちが身近な動物からさえも謙虚に学ぶ姿勢や、経験に基づいた知恵の深さを称えていました。

まとめ

「老馬の智」は、長い年月をかけて培われた経験と、そこから生まれる確かな判断力を表す言葉です。

新しい知識が重視されがちな現代ですが、困難に直面した時こそ、先達が積み重ねてきた「老馬の智」が道を切り拓く鍵になることがあります。自身の経験を積むとともに、周りの声に耳を傾ける謙虚さを持つことで、より良い選択ができることでしょう。

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コメント

  1. 稲垣卓哉 より:

    大変ためになりました。
    ところで、上段にある行軍のイラストを年賀状に使わせていただいてもよろしいでしょうか?

    • Fuji3 より:

      管理人です。
      ご連絡ありがとうございます。
      画像の使用についてですが、WEB用に解像度を落としてありますが、それでも良ければ自由にご使用ください。
      年賀状の風習良いですよね。途切れることなくずっと続いて欲しいです。