意味
「悲喜交々」とは、悲しみと喜びを代わる代わる味わうこと、またはその二つの感情が入り混じっている状態のことです。
- 悲喜(ひき):悲しみと喜び。
- 交々(こもごも):代わる代わる。次々に。また、錯綜するさま。
単に「良いことと悪いことがあった」という事実だけでなく、それによって心が揺れ動く「情景や心理状態」に焦点を当てた言葉です。
語源・由来
「悲喜交々」は、日本で古くから使われている表現です。
「交々(こもごも)」という言葉は、本来「次々に」「代わる代わる」という意味を持つ副詞です。
語源は「此(これ)も此(これ)も」が重なって変化したという説や、衣服の模様が交差する様子から来たという説などがありますが、いずれにせよ「複数の要素が入れ替わり立ち替わり現れる様子」を指します。
もともと中国の詩文などで「悲喜交集(ひきこうしゅう)」と表現されていた概念を、日本で読み下す際に「悲喜こもごも至る(集まる)」と和語(大和言葉)を当てて読んだことが定着し、現在のような四字熟語として使われるようになりました。
使い方・例文
「悲喜交々」は、人生の節目や、大きなプロジェクトの終わり、複雑な結果が出た際など、「一言では言い表せない複雑な心境」を伝えるのに適しています。
ビジネスシーンだけでなく、子育て、受験、引越しなど、日常のあらゆる場面で使われます。
例文
- 娘の結婚式は、親として悲喜交々の心境だった。
- 開票速報を見守る事務所は、刻一刻と変わる情勢に悲喜交々の空気に包まれた。
- 長年住んだ街を離れることになり、胸中は悲喜交々だ。
誤用・注意点
1. 「複数人」の状況に使うのは本来誤り
本来、「悲喜交々」は「一人の人間」の心の中で、悲しみと喜びが交錯することを指します。
そのため、合格発表などで「合格して喜ぶAさんと、落ちて悲しむBさんが入り乱れている状況」を指して「会場は悲喜交々だった」とするのは、厳密には誤用とされています。
ただし、現代ではこの「喜ぶ人と悲しむ人が入り混じる様子」として使われるケースも非常に多く、許容されつつあるのが現状です。
とはいえ、知識として「本来は個人の感情を指す」と覚えておくと良いでしょう。
2. 読み間違いに注意
「ひきこうこう」と読むのは誤りです。必ず「ひきこもごも」と読みます。
類義語・関連語
「悲喜交々」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 悲喜交集(ひきこうしゅう):
悲しみと喜びが入り混じって起こること。「悲喜交々」の元となった漢語的表現。 - 一喜一憂(いっきいちゆう):
状況の変化に応じて、喜んだり心配したりすること。
※「悲喜交々」が「同時に入り混じる」ニュアンスが強いのに対し、
「一喜一憂」は「時間経過と共にコロコロ変わる」ニュアンスが強い。 - 苦楽(くらく):
苦しみと楽しみ。「苦楽を共にする」の形で、長い時間を共有した経験に対して使われることが多い。 - 哀歓(あいかん):
悲しみと喜び。「人生の哀歓」のように、人生そのものの味わいを指す文脈で使われる。
英語表現
「悲喜交々」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが適しています。
mixed feelings
「複雑な心境」「入り混じった感情」という意味で、最も一般的で使いやすい表現。喜びと悲しみに限らず、相反する感情が混在している時に使える。
I have mixed feelings about leaving my job.
(仕事を辞めることについて、悲喜交々の心境だ。)
bittersweet
「ほろ苦い」「苦しくも楽しい」という意味で、嬉しさの中に少しの寂しさや辛さが混じっている詩的なニュアンスの言葉。卒業や別れの場面によく合う。
Graduation is a bittersweet moment.
(卒業は悲喜交々の瞬間だ。)
「こもごも」の意外な使われ方
「交々(こもごも)」という言葉は、現代では「悲喜交々」以外で耳にすることは少なくなりましたが、実は古い文学作品や法律の条文などでは単独で使われることがあります。
例えば、「嘘と真実がこもごも現れる」といえば、嘘と本当のことが交互に出てくる様子を表します。
「交互に」と言い換えることもできますが、「こもごも」と言うことで、より「次から次へと間断なく」という切迫したニュアンスや、感情の波の激しさを伝えることができます。
日本語のリズムが生んだ、独特の響きを持つ言葉と言えるでしょう。









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